カスハラとクレームの違いは?2026年法改正で義務化!定義と初期対応を解説|カスハラ対策講義【前編】

※このコラムは、オンラインセミナー『2026年法改正、待ったなし「カスハラ対策で社員を守る」=義務に!企業はどう対応すべきか』の内容をもとに作成しています。

はじめに:カスハラ対策、現場任せにしていませんか?

顧客対応の現場で広がる“カスハラ”問題

近年、パワハラやセクハラに加え、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が大きな社会課題として認識されるようになってきました。店舗や窓口、コールセンターなど、顧客対応の現場では、暴言や威圧的な態度、過剰な要求に日常的にさらされているケースも少なくありません。

現場でよく聞かれるのは、次のような声です。

  • どこまでが正当なクレームで、どこからがカスハラなのか分からない
  • 「毅然と対応していい」と言われても、判断基準がない
  • 初期対応を誤り、対応がこじれてしまう

こうした状況のなかで、対応を一手に引き受けているのが現場の担当者です。
しかしながら、カスハラに関するガイドラインの整備や研修を行っている企業はまだ少ないのが現状です。

こうした背景を受け、国はカスハラ対策を「企業の責任」として位置づける法整備を進めています。
2026年までに施行が予定されている法改正では、企業に対して、「従業員をカスハラから守るための体制整備」が求められることになります。

 

本セミナーの概要

セミナー概要

  • テーマ:2026年法改正、待ったなし「カスハラ対策で社員を守る」=義務に!企業はどう対応すべきか
  • 開催日: 2025年12月11日(火)(オンライン開催)
  • 登壇者:小菅 昌秀氏
    サミット人材開発株式会社 代表取締役|一般社団法人日本説得交渉学会 会員

本セミナーでは、クレーム・カスハラ対応の研修やガイドライン作成支援を数多く手がけてきた専門家であり、これまで全国の400以上の官公庁・県庁・自治体、600以上の企業で研修を行ってきた小菅昌秀氏に登壇いただき、カスハラが起こる背景や対応方法、従業員が安心して働くためのガイドライン策定の重要性など、企業が取るべき対策について解説いただきました。

本記事の内容が、貴社の従業員を守り、組織をさらに成長させるためのカスハラ対策の一助となれば幸いです。

【2026年法改正対応】カスハラ対策は企業の「義務」へ!社員を守る具体的な対応策とは

2026年に予定されている法改正により、カスハラ対策は「企業が取り組むべき義務」として扱われるようになります。これは、単に法令を守るかどうかの話ではなく、企業が従業員をどのように守るのかという姿勢そのものが問われることとなります。

カスハラが発生した際、明確な方針や判断基準がないと、対応は現場任せになってしまいます。
現場任せの対応は、担当者の精神的負担を増やすだけでなく、対応のばらつきやトラブルの長期化を招きかねません。
さらに、1人あたりの採用コストが約200万円に達するとも言われている今、カスハラを理由に従業員が離職すれば、企業は人材面でもコスト面でも大きなダメージを受けます。

だからこそ、法改正を「対応しなければならない義務」として捉えるだけでなく、従業員が安心して働ける環境を整えるための機会として、真剣に取り組むことが必要です。
そのためには、カスハラの実態を正しく把握し、どの程度のリスクが自社にあるのかを知る必要があります。

データで見るカスタマーハラスメント(カスハラ)の現状

大規模調査で明らかになった被害率

カスハラの議論をするとき、「本当にそこまで深刻なのか」「一部の業種だけの問題ではないか」といった疑問が出てくることがあるかもしれません。
そこで参考になるのが、流通業やサービス業の労働組合が実施した大規模調査です。

調査によると、7割を超える人が顧客からの迷惑行為を経験していると報告されており、9割が迷惑行為にストレスを感じていると回答しています。ここでいう迷惑行為には、暴言や威圧的な態度、長時間にわたる執拗な要求など、いわゆるカスハラに該当するものが含まれます。

出典:UAゼンゼン「第1回悪質クレーム調査結果(2017年実施)」

 

一方で、企業側の備えはどうでしょうか。

  • カスハラ等に対してマニュアルやガイドラインを整備していない企業が約70%
  • 不当要求やカスハラ対応の研修を実施している企業は 9.1%

つまり、被害の発生頻度と、企業の備えとの間に大きなギャップがあるのが現状です。

カスハラ対策は、特定の業種だけが取り組めばよいテーマではありません。
どの業界においても、社員を守ることが企業の義務であり、経営課題であるという認識に立つ必要があります。

知っておくべきカスハラの定義とクレームとの違い

カスハラ対策を考えるうえで欠かせないのが、「通常のクレーム」と「カスハラ」の線引きです。
ここが曖昧なままだと、現場は対応のたびに迷うことになり、結果として疲弊が蓄積していきます。

通常のクレームとカスハラの違い

まず、通常のクレームやご意見は、商品やサービスの改善につながる重要な情報です。
たとえば、ある食品メーカーでは、消費者から寄せられたクレームによって商品の課題に気づき、それを基に新たな商品を開発した結果、クレームが減少しただけでなく、新たなヒット商品が生まれたというエピソードもあります。

このように、正当なクレームや意見は「宝の山」であり、真摯に受け止めることで、品質向上や新商品の開発につながる可能性を持っています。

一方で、カスハラとは、商品やサービスに対する不満を超えて、従業員個人に対する不当な要求や攻撃的な言動が含まれるものです。
厚生労働省の定義でも、「顧客や取引先による、社会通念上相当な範囲を超えた言動」がカスハラに該当するとされています。

深刻化するカスハラ

たとえば、次のようなケースが挙げられます。

  • 大声で怒鳴る、従業員の人格を否定するような暴言
  • 明らかに過剰な金銭や物品の提供を執拗に求める
  • 土下座の強要や、店舗での居座り
  • 暴力団との関係や危害をほのめかして脅す

こうした行為は、もはやサービス改善のためのフィードバックではありません。従業員の安全や尊厳を脅かすものであり、企業として線を引かなければならない領域です。

通常のクレームとカスハラを、きちんと分けて考える。
前者には真摯に耳を傾け、後者には毅然と対応する。
これを個人の判断に委ねるのではなく、組織全体で共通認識を持つことが重要です。

カスハラの本質:「怒りのメカニズム」を理解する

クレーム対応がこじれる原因の多くは、初期対応の段階で「感情面への配慮」が不足していることにあります。多くのクレームやカスハラは、「事実」よりも「感情」が先に立った状態で発生しているからです。

怒りの発生メカニズム

人は、自分の期待が裏切られたと感じたとき、まず「悲しい」「つらい」といった一次感情を抱きます。
この一次感情が十分に受け止められないまま放置されると、「なぜ自分がこんな目に遭うのか」という二次感情、すなわち“怒り”へと変化します。
クレームやカスハラとして表出しているのは、この二次感情が噴き出した結果なのです。

怒りのメカニズム

初期対応のコツ

ここで重要なのは、相手が口にしている言葉の多くが、必ずしも本音そのものではないという点です。「説明しろ」「責任者を出せ」といった要求の裏側には、「自分の気持ち(辛さや悲しさ)をわかってほしい」「軽く扱われたくない」という感情が隠れています。

この構造を理解せず、事実確認や解決策の提示から入ってしまうと、相手はさらに感情を強め、結果として対応が長期化し、当初は通常のクレームであったものがカスハラへとエスカレートしていくケースもめずらしくありません。

冷静な話し合いをするためには、まず相手の怒りを鎮め、感情的な問題点を片付けることが大切です。
そのために必要なのは、「正しいことを言う」ことではなく、相手が冷静になれる状態をつくることです。

怒りが生まれる構造を理解し、どこに手を打てば状況が落ち着くのかを知ること。
その視点を持つことが、対応の出発点になります。

カスハラ対応の全体像:感情と事実の切り分け

クレームやカスハラ対応では、「感情の問題」「事実の問題」を切り分けて考える必要があります。
この順序を誤ると、対応は一気に難しくなります。

まずは「感情的な問題」から扱う

多くの現場では、問題が発生するとすぐに「何が起きたのか」「どこに不備があったのか」といった事実確認に意識が向かいがちですが、相手が感情的になっている段階では、事実の説明をしてもほとんど届きません。

クレーム対応の流れ

対応の流れとして重要なのは、まず「感情的な問題」を扱うことです。
相手の言葉に耳を傾け、「不快な思いをさせてしまった」「納得できない気持ちがある」という点を受け止める。ここで初めて相手は「話を聞いてもらえた」と感じ、冷静さを取り戻し始めます。

感情が落ち着いた段階で、ようやく「事実の確認」に進むことができます。
状況を整理し、何ができるのか、何ができないのかを伝え、現実的な解決策を提示する。このプロセスを経て、合意形成が可能になります。

 

カスハラ対応は、勝ち負けを決めるものではありません。どちらが正しいかを争う場でもありません。現実的な落としどころを見つけ、現場と従業員を守ることが大切なのです。
そのためには、「感情」と「事実」を切り分け、順序立てて対応するという全体像を、組織として共有しておく必要があります。

 

後編では、カスハラ対応に役立つ法律知識や対応のコツ、ガイドライン作成の重要性について解説しています。

ハラスメント対策サービス「CHeck」無料トライアル/資料ダウンロードのご案内

  • 自社のカスハラリスクを、感覚ではなくデータで把握したい
  • 現場任せになっている対応を、ガイドラインとして整理したい
  • 法改正を見据えて、早めに備えを進めておきたい

こうしたニーズをお持ちの企業様に向けて、「CHeck」では、無料トライアルや資料のダウンロードをご用意しています。
「何から着手すればよいか分からない」という段階でも、まずは現状を正しく把握するところから始め、具体的な対策まで一緒に進めていくことが可能です。

 

また、今回ご登壇いただいた小菅氏のカスハラ対策研修を受けられるほか、ガイドライン策定のご相談も承ることができます。
貴社の実践的なカスハラ対策を前に進めるために、ぜひ「CHeck」をご検討ください。

 

監修者プロフィール

小菅 昌秀 氏|サミット人材開発株式会社 代表取締役

多様な事例に基づく豊富な知見や法律知識を用いて、難クレーム対応に悩む多くの企業や自治体を支援してきたスペシャリスト。苦情対応の国際標準規格であるISO10002の意見書発行数トップクラス。この分野の研修の国内第一人者である柴田純男氏に長年師事し、ノウハウを承継。一番弟子・後継者として認定されている。
弁護士や暴力追放センターの講師と連携して研修を毎年行っているほか、近年は全国の自治体・企業に招かれて研修を行うケースが多い。独立後9年間で 顧客数は500を超え、依頼が後を絶たない。コンサルティング・ 講師経験は17年。マネージャー・顧問経験17年。
クレーム・カスハラ対応においては、30年間従事しており、現在も不動産管理会社の重篤なトラブルやクレーム対応に従事している。

【研修講師・コンサルタント実績】
講師・コンサルタントとして全国の400以上の官公庁・県庁・自治体、大手企業を中心とした600以上の企業で6,000回以上の研修を実施。

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク マーケティング・CSチーム運営

Humap(ヒューマップ)編集局は、従業員1万人規模の独自調査や、CS活動を通じて寄せられる「現場のリアルな悩み」に基づき、ハラスメント・エンゲージメント・働き方改革といった組織課題解決のための知見を発信する専門組織です。
単なる用語の解説に留まらず「改善につなげる具体的な手法」や「取り組みのコツ」など明日から自社で活用できる、実践的なコンテンツを企画・制作しています。

【活動の実績】
ハラスメント・エンゲージメント・働き方改革に関する知見発信において、自社登壇セミナー開催数は累計320回、申込者数は23,000人を突破。関連資料の利用者は17,000人以上。(※2026年現在)

【受賞歴・社会活動】
・SUCCESS STORY AWARD 2025 アワード受賞(座席管理ツール「せきなび」) 受賞詳細:https://digi-mado.jp/success-story-award-2025/sekinavi/

【学術・教育支援】
大学等の教育機関へ1万人規模の実証データを提供し、PBL(課題解決型学習)教育の支援も行っています。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000018991.html

監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)
株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー

リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。従業員満足度調査「ASQ」のサービス立ち上げに参画し、業界比較分析も起案。人材コンサル会社と協力し「やりっぱなしで終わらせず、改善できるES調査」の開発を主導。

本記事の監修にあたって: 自身の豊富な実務経験に基づき、公開情報の正確性と、読者の皆様のビジネスに即した実用性を厳格に審査しています。

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