「人的資本経営」のために、現状を把握するES調査のポイント

この記事を読む方の中には

「人的資本経営に着手したいが、現状を把握できていない」とお悩みの総務や人事の方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、人的資本経営のための従業員満足度調査(ES調査)についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

的資本経営とは?

人的資本経営とは、人材を人的資本(Human Capital)ととらえ、その価値を最大限に引き出すことで中長期的に企業価値向上につなげる経営のあり方です。すなわち、人材は企業の競争力の源泉=資産であるという考え方に立ち、従業員への投資を積極的に行おうという人材戦略を取り入れた経営です。従来の、従業員は人的資源(Human Resource)でありコストである、という考え方とは異なる考え方です。

経済産業省が公表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」では、3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素(Factors)に着目した人材戦略を策定・実行し、企業価値向上につなげること(3P・5F モデル)を経営者に提案しており、近年トピックな話題となっています。

3つの視点

3つの視点とは、次の3つです。

①経営戦略と人材戦略の連動

②As is‐To be ギャップ(現状と理想のギャップ)の定量把握

③人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着

ポイントは、②のAs is‐To be ギャップが、①経営戦略と人材戦略の連動の程度を表す指標となるということです。つまり、経営戦略のあるべき姿と現状のギャップが縮小していくのであれば、それは経営戦略と人材戦略が連動しており、人的資本経営がうまくいっていることを示唆していると考えられます。そして、このギャップを埋めていくプロセスが企業文化を醸成していくのです。

5つの共通要素

5つの共通要素とは、次の5つです。

①動的な人材ポートフォリオ(目指す経営戦略に向けて、多様な人材ポートフォリオが構築できているか)

②知・経験のダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材の能力が生かせる環境にあるか)

③リスキル・学び直し(従業員の理想の姿と現状のギャップを埋められる環境にあるか)

④従業員エンゲージメント(従業員が主体的・意欲的に仕事に励んでいるか)

⑤時間や場所にとらわれない働き方

 

これら5つの要素は相互に絡み合って、人的資本を形成していくと考えられます。

企業は、3つの視点を持ちながら、5つの共通要素を踏まえた人材戦略を策定し、人的資本経営を志向するとよいでしょう。

出典:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~ (令和4年5月経済産業省)

的資本経営が注目される背景と必要性

人的資本経営が注目されるのは、主に3つの社会的背景があります。

サステナブル投資の浸透によるステークホルダーの意識変化

サステナブル投資とは、環境・社会・コーポレートガバナンスを重視し、長期的な持続可能性を重視する企業に投資を行おうという考え方です。サステナブル課題への企業の取り組みは、将来の企業業績に影響を与えると考えられています。

こうした投資家の意識の変化を受けて、2020年8月には、アメリカ証券取引委員会(SEC)が、上場企業の人的資本情報の開示を義務付けました。日本においても、2023年3月期決算以降、有価証券報告書において人的資本情報の開示が義務付けられる見込みです。

また、内閣官房「非財務情報可視化研究会」第4回配布資料によると、企業価値に⼤きな影響を与えると考えるサステナビリティ関連課題として「⼈的資本の開発・活⽤」を挙げるCFO(最高財務責任者)が77%と最も⾼く、経営者層の間でも人的資本経営はますます注目度が増しているといえるでしょう。

VUCA時代を生き抜く人材戦略の必要性

VUCA(ブーカ)とは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性)」「Ambiguity:曖昧性)」の頭文字を並べたもので、未来の予測が困難な状況を意味する造語です。現代の社会あるいはビジネス環境は、VUCA時代にあると言われています。

従来、人材は労働力というコストとして考えられ、少ないほど良いと捉えられていました。しかし、VUCA時代における企業の競争力の源泉は、目に見える有形資産ではなく、人的資本などの目に見えない無形資産にあると考えられるようになっています。

そこで、VUCA時代を生き抜くための経営戦略として、人的資本経営が注目されているのです。

企業によるダイバーシティ&インクルージョンの推進

ダイバーシティ&インクルージョンとは、人材の多様性を受け入れ、その能力を引き出そうという考え方です。現代では、従業員の国籍、雇用形態、仕事に対する考え方など多様化しています。

そのため、人材の能力や個性を尊重して生産性向上やイノベーション創出につなげるためにも、人材を「人財」と捉える人的資本経営は注目されているのです。

的資本経営に取り組む上での課題

現在、人材育成や人材の多様化にともなうマネジメント術などに注目する企業は多いのではないでしょうか。ですが、従業員個人のスキルや職務経験などの特性、研修や従業員の自己研鑽等のリスキリング・学び直し後の個人の特性変化といった従業員データを一元管理していないと、人材戦略に生かすことは難しいでしょう。

そこで、人的資本経営に取り組む上で、最初に着手すべき課題は、人材ポートフォリオの把握としての「従業員情報の把握」です。人事データ・個人情報などを一元管理し、データを活用できれば、どの従業員をどのように生かすのかという人材戦略の策定が検討しやすくなります。

 

的資本経営、課題解決のカギはES調査?

人的経営資本に取り組む上での課題「従業員情報の把握」は、ES調査を導入することで解決する可能性があります。

ES調査とは?

ES調査とは、従業員満足度調査のことです。具体的には、会社の方針・福利厚生・人事制度・上司などに対する満足度を調査します。従業員の満足度を調査する中で、一人一人が重視する項目や思考といったダイバーシティを把握するのにも効果的です。

課題解決のための現状把握

人的資本経営を行う上で最初の課題は人材ポートフォリオとしての「従業員情報の把握」です。ES調査では、従業員が重視する項目や思考についての設問があります。そのため、調査結果をもとに、従業員の現状把握が可能になります。

ES調査の結果と人事データを結び付けていけば、経年比較や研修・教育の成果なども比較できます。まさに、従業員データの一元管理が可能となるのです。

 

定量的なデータが施策の検討・立案の材料に

人的資本経営の一環として、人事施策を検討・実行する企業は多いことでしょう。しかし最初は、どのような施策を実施したら企業にとって効果的なのか、判断に迷うのではないでしょうか。

ES調査は、企業の状況を定量的にデータ化します。そこで、ES調査の結果をもとに、潜在的な人材戦略上の課題を探り、課題に沿った施策を実施することで、人的資本経営の目的である企業価値向上に効果を発揮します。

的資本経営実現のために押さえておきたいES調査のポイント

人的資本経営の目的は「企業価値の向上」です。企業価値を向上させるために、ES調査を活用しましょう。ES調査を行う上でのポイントは3点です。

  • 人的資本情報の開示を目的化しない
  • 人材戦略と経営戦略を有機的に結びつける
  • 自社のありたい姿としての経営戦略を明らかにする

人的資本経営の目的は、あくまでも人材戦略と経営戦略を結びつけることによって企業価値を向上させることです。ステークホルダーの意識変化に伴う人的資本情報の開示に意識を向けるのではなく、企業価値を向上させることに着目したES調査を行いましょう。

また、経営者は、初めに自社の理想像をイメージした上で経営戦略を立てましょう。その上で、従業員の可能性や強味を引き出すべく人材戦略を立てるのです。そうすることで人材戦略と経営戦略が有機的に機能した人的資本経営に近づけるでしょう。

スマークのES調査「ASQ」

アスマークのES調査「ASQ」は、適切な人材戦略を策定・実行し、経営戦略へと結びつけて企業価値の向上を狙う人的資本経営の実現にも効果的です。主な特徴は3つあります。

組織・リーダー・社員を4タイプに分類

「ASQ」の診断では、組織・リーダー・社員をそれぞれ独自のロジックに基づき、4つのタイプ分類します。満足度や離職意向を多面的に分析することで、見えない本質・特徴や改善重視点の把握に効果を発揮します。分析結果をもとに、組織・リーダー・社員それぞれの目標設定や人事戦略に役立てられます。

プロの人事コンサルタントから受けられる施策提言

「ASQ」の調査結果は、数値化・グラフ化され、ひと目で分かりやすいレポートになり出力されます。レポートは、プロの人事コンサルタントからの簡易施策提言付きです。

レポートに記載されているグラフやデータから自社の課題を洗い出すことも可能ですが、プロの提言があることで、優先的に着手すべき課題が明らかになります。

自社の課題に合わせたオーダーメイド対応

既に着手すべき課題が見えている企業の場合、設問すべてに対応するのは煩雑と感じることでしょう。「ASQ」では、そのような場合に備えてオーダーメイド対応も実施しています。課題にクローズアップした設問やレポートなど、必要な部分だけの利用が可能です。

アスマークの提供する「ASQ」などのES調査を活用し、人材戦略と経営戦略がうまく連動した人的資本経営に役立てましょう。ES調査は現状把握に有効であるため、特に「As is‐To be ギャップ」の把握に効果的です。

 

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G

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