「女性活躍推進法」2022年4月改正!背景と取り組み内容を解説

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」は、一般的には「女性活躍推進法」と呼ばれる20158月に成立した10年間の時限立法です。出産や育児を理由に離職する女性の労働環境を改善し、仕事で活躍したいと希望する女性が能力発揮できる環境をつくることを目的としています。

具体的には、事業主に対して「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出」および「女性活躍推進に関する情報公表」を義務付けています。300人以下の事業主では努力義務とされましたが、202241日から「常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主」も義務の対象となりました。今回は、対象企業が何に取り組むべきなのかを考えてみたいと思います。

女性活躍推進法が整備される背景

女性活躍推進法が成立した背景としては、企業の女性の活躍に向けた課題は依然として存在しており、1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから30年近く経過していたとはいえ、十分に機能していなかったことがあげられるでしょう。具体的には以下のような課題があげられます。

  • 女性雇用者全体に占める非正規雇用(契約社員・パート・派遣社員など)の割合が多い
  • 出産前後などのライフステージ変化に伴って就業継続が困難となっている
  • 管理職に登用されている女性の割合が低い

また、女性に限らず労働の主力となる生産年齢人口(15歳~64歳)が減少しており、今後より減少していくことが予想されています。そのため、女性が働きやすく活躍できる社会をつくることが、労働生産性を高めるためには欠かせないことであると言えます。

 

企業が具体的にすべきこと

女性活躍推進法で事業主が求められている「対応すべきこと」について説明していきます。

1. 女性の活躍に関する状況把握、課題分析

自社の女性活躍に関する状況把握は、基礎項目と選択項目に分けられています。基礎項目は必ず把握すべき項目です。

・基礎項目

  • 採用者に占める女性比率(男性が優位になっていないか)
  • 勤続年数の男女差(勤続年数に女性比率が反比例していないか)
  • 労働時間の状況(必要以上に長時間労働が行われていないか)
  • 管理職に占める女性比率(女性管理職が圧倒的に少なくなっていないか)

出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」P4参照

 

さらに詳しく女性活躍の状況を把握するため、上記の基礎項目以外にも各社の実情に応じて把握することが効果的と考えられる選択項目もあります。例えば「男女別の採用における競争倍率」「セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況」「男女の賃金の差異」などがあげられます。(詳細は、同資料P5を参照)

 

2. 行動計画の策定、社内周知、公表

1」の分析と調査結果をふまえて、事業主は女性の活躍を推進するための「一般事業主行動計画」とよばれるものを策定します。この行動計画には、「計画期間」「数値目標」「取組内容」「取組の実施期間」を含める必要があります。数値目標を定義した上で定量的に管理することで、達成すべき目標と期間を明確にします。また、女性の活躍状況が改善されているかどうかを社内や外部(例:厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の「女性の活躍推進企業データベース」)に公表を行います。

 

3. 行動計画を策定した旨の届出

行動計画を策定した旨を都道府県労働局に電子申請・郵送・持参のいずれかの方法で届け出ます。

 

4. 実施

行動計画に記載した取り組みを実施していきます。

 

5. 女性活躍に関する情報公表

情報公表は、「2.」の行動計画と同様に自社のWebサイトや厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の「女性の活躍推進企業データベース」などで行います。「①⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供」「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」の各区分から、事業主にとって適切なものを1項目以上選択して公表することになっています。(ただし、常時雇用する労働者数300人以下の事業主については、①と②の全項目から1項目以上を選択して公表する。詳細は、こちらの資料P19を参照)

えるぼし認定の取得

女性活躍推進に関する状況や取り組みなどが優良な事業主が、都道府県労働局の申請することで厚生労働大臣から認定が得られる「えるぼし認定」制度があります。認定の段階には3段階あり、それぞれ認定されるには一定要件をクリアする必要があります。具体的には「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5項目において一定基準を上回っていなければいけません。さらに、「えるぼし認定」よりも水準の高い「プラチナえるぼし認定」も創設されました。

えるぼし認定マーク

認定マークは商品や広告に掲載することができるだけではなく、厚生労働省のホームページにも掲載されることから、企業イメージアップにつながります。また、国が実施する公共調達において加点評価されるため、公共調達を有利に進めることが可能となります。

まとめ

「女性活躍」という言うだけではなく、実際に推進していなければ意味がありません。また、短期的に成果が出るものではなく、経営層が積極的にかかわることが求められます。性別問わず働きやすい職場づくりができているかどうかを「CHeck」などのツールを使用して、成果が出ていることを確認することも検討してはいかがでしょうか?

執筆者

アルドーニ株式会社

代表取締役 永見 昌彦

外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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