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多くの企業でパワハラやセクハラなどのハラスメント対策が進む一方、近年、職場の「臭い」や「音」に関する問題も注目されています。
汗や体臭などの「スメハラ(スメルハラスメント)」や、キーボードの強い打鍵音、ため息、独り言などの「音ハラ(音ハラスメント)」。こうした問題は極めてデリケートで、周囲が指摘できずに我慢を重ねてしまいがちです。 一方、臭いによって集中力が削がれたり、吐き気や頭痛などの体調不良を感じたりする人もおり、業務への影響も無視できません。
「これくらいで…」と後回しにしていると、職場の人間関係やコミュニケーションにも影響し、思わぬトラブルへと発展する可能性もあります。しかし、臭いや音を発している本人には悪気や自覚がほとんどないため、「どう伝えれば相手を傷つけずに改善できるのか」と頭を悩ませる人事担当者も多いのではないでしょうか。
本セミナーでは、一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会 代表理事の金井絵理氏をお迎えし、独自調査のデータをもとに感覚ハラの実態を紐解くとともに、スメハラ・音ハラが起きる背景やリスク、「個人を悪者にしない」ための具体的な対応方法について解説しました。

テーマ:
職場を不快にするスメハラ・音ハラの実態~人事が取るべき解決のステップ~
開催日:
2026年7月14日(火)(オンライン開催)
登壇者:
一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会 代表理事 金井 絵理 氏
「感覚」とは、目や耳、鼻、皮膚などの感覚器官を通して、外部からの刺激を受け取る働きのことです。
今回取り上げる「スメハラ」は嗅覚、「音ハラ」は聴覚への刺激に関するものです。このほか、エアコンの温度設定をめぐる「エアハラ」は触覚(皮膚・温度)、他人の激しい貧乏ゆすりや、散らかったデスクが目に入ることによる不快感は視覚に関わる問題といえます。

こうした「感覚へのハラスメント」には、次の2つの特徴があります。
パワハラやセクハラなどの職場のハラスメントは、人間関係やコミュニケーションに起因するケースもあるため、関係性の構築や、「受け止め方を変える」といったアプローチで解決できる場合があります。一方、感覚へのハラスメントは、脳や身体が刺激を直接受けることによる生理的なストレスです。
「気にしないようにしよう」と考えても、臭いや音などに対する生理的な反応を、受け止め方だけで解消することは困難です。この点が、感覚に関わる問題への対応を難しくする要因の一つです。
不快に感じる臭いや音を発している本人は、意図的に行っているわけではなく、「普段通りに生活し、仕事をしているだけ」というケースがほとんどです。そのため、本人には悪気や自覚がほとんどありません。
一方、受け手となる周囲の従業員は、「指摘すると人間関係が悪くなるのではないか」「相手を傷つけてしまうのではないか」と考え、伝えることができずに我慢してしまいがちです。
この「本人は気づいていない」「周囲は言えない」という構造によって、問題が表面化しないまま長期化する可能性があるのです。
続いて、一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会が実施した「職場における臭い(におい)に関する調査」の結果から、スメハラが職場環境に与える影響を見ていきます。
調査は、全国の22歳~59歳の男女を対象に、2026年6月1日~3日に実施され、有効回答数は550サンプルでした。

「自分の臭いが周囲に不快感を与えていないか不安に感じたことがあるか」という問いに対し、49.3%が「よく当てはまる・まあ当てはまる」と回答しました。
一方で、自分の臭い(におい)に対して不安を感じていない人も、約半数にのぼります。
自分自身では気づきにくい臭いの問題だからこそ、本人の自覚だけに任せるのではなく、職場全体で対策を考えることが重要といえます。
「他人の臭い(におい)によって集中力が削がれたことがあるか」という問いでは、53.6%が「よく当てはまる・まあ当てはまる」と回答しました。
参考までに、厚生労働省の調査では、「過去3年間にパワハラを受けたことがある」と回答した人は31%でした。設問や調査条件が異なるため単純に比較することはできませんが、半数を超える人が他人の臭いによって集中力への影響を感じているという結果から、「におい」が業務に与える影響の大きさがうかがえます。
さらに、36.5%が「他人の臭い(におい)によって吐き気や頭痛などの体調不良を感じたことがある」と回答しています。
体調不良が起きれば、休憩や業務の中断が必要になったり、通常どおりのパフォーマンスを発揮することが難しくなったりする可能性があります。そのため、臭いの問題は職場の生産性にも影響し得る課題として考える必要があります。
調査では、43.1%が「他人の臭い(におい)によって、その相手との接触を避けるようになった」と回答しました。
特定の相手を避けるようになれば、日常的なコミュニケーションの機会が減り、業務に必要な報告・連絡・相談(報連相)にも影響する可能性があります。
臭いの問題は、不快感や集中力の低下にとどまらず、職場の人間関係や業務上のコミュニケーションにも関わる問題といえます。
他人の臭いを不快に感じても、65.3%が「我慢する」と回答しています。
我慢する理由として多かったのは、次の3つです。

スメハラでは、相手に対する敵対心があるとは限りません。むしろ、「相手を傷つけたくない」「関係を悪くしたくない」と考えるからこそ、指摘できずに我慢してしまうケースがあります。
本人に悪気がなく、周囲も相手に配慮して言い出しにくいという構造が、問題を長引かせる一因となっています。
「最も不快に感じる臭い」として最も多かったのは「体臭(頭、脇、足など)」、次いで「口臭(タバコやアルコールの臭い含む)」でした。
これら上位の臭いは指摘が非常にデリケートですが、3位以下に挙がった「タバコ」や「香水・柔軟剤」などは、個人の性質ではなく嗜好品や使用量の問題であるため、社内のルール周知やマナー啓発によって対処しやすいともいえます。

キーボードの強い打鍵音、ノック式ペンの音、ドアや引き出しの開閉音、独り言なども、周囲にとっては気になる音であっても、本人には自覚がないことがあります。
こうした音に本人が気づきにくい背景には、脳の働きも関係していると考えられます。
人の脳には、周囲にある多くの音の中から、必要な情報に注意を向ける働きがあります。
たとえば、騒がしい場所でも自分の名前を呼ばれると気づきやすい現象は「カクテルパーティー効果」と呼ばれます。
一方、自分自身が発している音や、あらかじめ予測できる音については、注意が向きにくくなることがあります。そのため、本人にとっては普段から繰り返しているキーボード音やペンの音などを、周囲ほど強く認識していない可能性があります。

独り言は、本人が意識せずに出ていることがあります。思考や作業に集中し、脳のリソースを多く使っているときには、思考を整理する過程で言葉が無意識に口から漏れ出ることもあるといいます。
本人は真剣に仕事に取り組んでいるため、自分が独り言を発していることに気づきにくい場合があります。一方、周囲から見ると「一生懸命仕事をしている人」に見えるからこそ、音が気になっても指摘しづらいという状況も生まれます。
デリケートな問題だからと、スメハラや音ハラを放置していると、単なる「個人の不快感」にとどまらず、職場の人間関係やコミュニケーションにも影響が広がる可能性があります。
臭いや音が不快な相手との接触を避ける人が増えると、その当事者が職場で孤立してしまう可能性があります。
本人も、周囲との会話が減ったり、自分だけ会話に入りづらくなったりすることで、「避けられている」と感じるようになるかもしれません。
さらに、本人がいないところで「今日は特にきついね」「いい加減気づいてほしい」といった陰口や悪口へ発展していく可能性もあります。
臭いや音に対するストレスを我慢し続けることで、当事者に対するネガティブな感情が蓄積していく場合があります。
その状態で当事者が業務上のミスをすると、本来のミスとは関係のない感情まで上乗せされ、必要以上に強い口調で注意・指導してしまうことも考えられます。
臭いや音そのものとは別のところで、パワハラなどの職場トラブルに発展することがないよう、周囲の我慢が限界に達する前に対応することが大切です。
臭いや音の問題を、何でも「スメハラ」「音ハラ」として扱うことにも注意が必要です。
当事者は、誰かを不快にさせようとしているわけではなく、普段通りに生活し、仕事をしているだけというケースがほとんどです。一方で、その人を避けたり、陰口や悪口を言ったりするようになれば、「誰が加害者なのか」という問題にもなってきます。
また、安易に「加害者」と「被害者」という構図をつくることで、職場に無用な敵対関係や対立を生んでしまう可能性もあります。どちらが悪いのかを決めることに終始するのではなく、まずはマナーやエチケット、職場環境の問題として解決できないかを考えることが重要です。
臭いや音の問題は、本人に直接注意する以外にも、備品の変更やルールづくりなどによって改善できる場合があります。
ここでは、個人を責めるのではなく、仕組みや職場環境を工夫して対応した事例を紹介します。
課題:
介護付き有料老人ホームにて、中途で入社した20代女性スタッフの体臭が強く、狭い事務所内で周囲が気になっていました。しかし、入社して間もなく関係性も浅いうえ、本人は真面目で一生懸命仕事に取り組んでいたため、誰も直接注意できない状況でした。
対応:
上司から「私たちはサービス業。入居者様やご家族様に不快な思いをさせないよう、仕事の開始前や休憩時間には汗のエチケットを徹底しましょう」と職場全体に呼びかけました。
さらに、会社の経費でデオドラントシートやスプレーを設置し、特定の人だけではなく、全員が臭いに気を配るルールとしました。
ポイント:
特定の個人を名指しせず、職場全体のエチケットとして取り組むことで、本人を責めることなく対応した事例です。
課題:
経理部門の50代の課長が、キーボードやマウス、電卓を使う際に大きな音を立てていました。耐えかねた部下が直接注意したところ、言い合いになってしまいました。
対応:
人事が介入して本人と話し、キーボードやマウス、電卓を静音・消音タイプのものへ変更しました。
ポイント:
タイピングなど本人の癖そのものを変えようとするのではなく、音の発生源となる備品を変更することで、問題の緩和を図った事例です。
課題:
顧客対応を行う金融関係の職場で、身だしなみやマナーを徹底していました。髪型や服装は鏡を見たり、従業員同士で確認したりできますが、「口臭」はお互いに確認しづらいという課題がありました。
対応:
職場に口臭チェッカーを導入し、始業前や昼休憩後にチェックする仕組みを設けました。
ポイント:
人が「臭う」「臭わない」と直接指摘するのではなく、機器を使って臭いの強さを確認できるようにすることで、セルフチェックができる仕組みにした事例です。
課題:
「事務所が静かすぎて業務に集中できない」という声が、複数の社員から上がっていました。
対応:
職場に「サウンドマスキング」を導入しました。サウンドマスキングとは、周囲に一定の背景音を流すことで、気になる音を目立ちにくくする仕組みです。
ポイント:
静かすぎる環境では、ちょっとした物音が気になりやすくなる場合があります。音を発する個人だけに改善を求めるのではなく、オフィス環境そのものを調整した方法です。
課題:
飲食店の厨房で働く従業員の体臭が強く、顧客の前に出ることはないものの、周囲のスタッフから「体臭と食べ物の臭いが混ざって気になる」という相談が本部に寄せられました。
対応:
事前に産業医へ相談したうえで、職場巡視の機会に本人との面談を設定。「健康状態の確認」という形で話をし、必要に応じて内科や皮膚科などの専門医につなぐこととしました。
ポイント:
体臭には健康状態が関係している可能性もあります。上司や人事が直接臭いを指摘するのではなく、産業医と連携し、健康面への配慮を入り口として対応した事例です。
これらの事例に共通しているのは、本人を責めるのではなく、備品や仕組み、ルールなどを工夫して対応している点です。 臭いや音の問題は、個人に改善を求めるだけでなく、職場環境や運用の見直しによって解決できるケースもあります。不必要に本人を傷つけないよう、配慮しながら進めることが重要です。
スメハラや音ハラの問題は、具体的な訴えが出てから対応しようとすると、個別対応が必要になり、本人や周囲への配慮もより難しくなります。
できるだけ問題が深刻化する前に、職場の状況を把握し、全体のルールや対応方法を整えておくことが大切です。自社で対策を進める際は、次の4つのステップが参考になります。

まずは、職場でどのような不快感が生じているのか、その実態を把握します。
臭いや音に対する感じ方には、相手との関係性や個人の好き嫌いが影響することもあります。そのため、単に「不快だ」という訴えだけで判断するのではなく、実際に業務へどの程度影響しているのかを含めて確認することが重要です。
単なる個人の好き嫌いか、業務に支障が出るレベルかを見極めるためにも、感情を除いて現状を把握する必要があります。
また、事案が発生してから調査を行うと、対象者が特定される可能性が高くなります。そのため、「スメハラ」「音ハラ」に限定した調査として実施するのではなく、従業員満足度調査やストレスチェックの実施時に、職場環境に関する設問をあわせて設けます。
たとえば、
といった質問を設け、職場全体の傾向を把握します。設問は、そのまま使用するのではなく、自社の事情に合わせて調整することが前提です。
なお、現在ストレスチェックが義務づけられているのは労働者数50人以上の事業場ですが、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも実施が義務化されます。
状況を把握したら、特定の個人を狙い撃ちにするのではなく、職場全体のルールやマナーとして対策を進めます。
たとえば、「快適な職場環境のための感覚マナーガイドライン」を策定し、
など、自社で必要な項目を盛り込む方法があります。
このように全社共通のルールとして示しておけば、現場の上司が注意する際にも、個人の主観ではなく「会社のルール」を根拠に伝えやすくなります。
重要なのは、「スメハラをなくそう」「音ハラをなくそう」と加害者を作るような見せ方ではなく、従業員一人ひとりが快適に働くための共通のマナーとして周知することです。
すでに具体的な訴えがあり、職場環境に影響が出ている場合には、本人へ直接伝える必要が生じることもあります。
その際の目的は、不必要に本人を傷つけることではなく、状況を自覚してもらい、改善につなげることです。必要に応じて、産業医など専門家の協力も得ながら進めます。
たとえば体臭に関する相談であれば、
といった対応フローをあらかじめ考えておく方法があります。
上司から本人に話す場合も、いきなり「体臭が気になる」と指摘するのではなく、体調面への配慮を入り口にして産業医面談につなげると、本人の尊厳が守られやすく、話を聞き入れてもらいやすくなる可能性が高まります。産業医には事前に状況を共有し、職場巡視などの機会を活用して本人の健康状態を確認してもらう流れです。
個別に対応した後も、それで終わりではありません。
本人がその後どのような様子で働いているかを、日常の雑談などを通じてさりげなく確認します。また、全体周知で定めたルールが職場に定着しているかどうかも継続して見ていく必要があります。
個別対応を受けた本人への心理的なケアと、職場全体のルールの定着という両面からフォローすることが、再発防止につながります。
株式会社アスマークでは、従業員アンケートを通じて、職場のハラスメント被害実態やリスク、対策の効果などを数値で可視化する「CHeckリサーチ」を提供しています。
スメハラや音ハラのように、問題が表面化してからでは対応が難しいテーマでは、事態が深刻化する前に職場の小さな違和感を拾い上げることが重要です。
①組織のハラスメントリスクを数値で可視化
ハラスメントの発生状況だけでなく、職場にどのようなリスクが潜んでいるのかをアンケートによって把握できます。
②回答すること自体が「教育・啓発」の機会に
アンケートへの回答を通じて、従業員がハラスメントに関する知識を学び、自身の無自覚な行動に気づくきっかけにもなります。
③自社の課題に応じて設問をカスタマイズ
基本プランでは、パワハラやセクハラ、コンプライアンスなどの主要項目を扱っています。さらにオプションで、スメハラや音ハラなど、自社の課題に応じた設問を追加することも可能です。
職場の現状把握と従業員への啓発をあわせて進めることで、問題が深刻化する前の対策につなげることができます。
スメハラや音ハラは、これまで「取るに足らない問題」として見過ごされてきた面もあります。しかし、臭いや音によって集中力が削がれたり、体調不良を感じたり、相手との接触を避けたりする人がいることからも、職場への影響を軽視することはできません。
一方で、臭いや音を発している本人を「加害者」として扱うことにも注意が必要です。本人には悪気や自覚がないケースも多く、個人を悪者にすることで、かえって職場内の対立を生んでしまう可能性があります。
重要なのは、問題を放置しないこと、個人を悪者にしないこと、そして事前に対応しておくことです。従業員への調査や、マナー・ルールづくりなどを通じて、問題が深刻化する前に対応できる環境を整えておくことが大切です。
臭いや音をめぐる問題は、個人への注意だけでなく、備品や職場環境の見直し、共通ルールの整備など、「仕組み」で改善できるケースもあります。誰かを加害者にするのではなく、職場全体で快適に働くための課題として捉え、早めに対策を進めていきましょう。
ハラスメント予防・
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株式会社アスマーク マーケティング・CSチーム運営
【活動の実績】
ハラスメント・エンゲージメント・働き方改革に関する知見発信において、自社登壇セミナー開催数は累計320回、申込者数は23,000人を突破。関連資料の利用者は17,000人以上。(※2026年現在)
【受賞歴・社会活動】
・SUCCESS STORY AWARD 2025 アワード受賞(座席管理ツール「せきなび」) 受賞詳細:https://digi-mado.jp/success-story-award-2025/sekinavi/
【学術・教育支援】
大学等の教育機関へ1万人規模の実証データを提供し、PBL(課題解決型学習)教育の支援も行っています。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000018991.html
監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)
株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー
リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。従業員満足度調査「ASQ」のサービス立ち上げに参画し、業界比較分析も起案。人材コンサル会社と協力し「やりっぱなしで終わらせず、改善できるES調査」の開発を主導。
本記事の監修にあたって: 自身の豊富な実務経験に基づき、公開情報の正確性と、読者の皆様のビジネスに即した実用性を厳格に審査しています。

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