多くの社会人の方ならば「ハラスメント」という言葉は、何度か聞いたことがあるでしょう。 ハラスメント(Harassment)とは「相手の意に反する言動によって不安・不快な感情を抱かせること」です。端的にいえば「職場における嫌がらせや迷惑行為」のことです。 企業においてハラスメントが原因のトラブルは増加傾向にあります。ハラスメントにはどのようなものがあり、それをおこさないためにはどうすればよいのかを考えてみたいと思います。
ハラスメントは細かく分類すると40種類程度はあり、さらに新たなものが次々と増えているようですが、特に以下の3つについては定義も含めて掌握しておきましょう。 ここでの「職場」というのは、いわゆる事業所(オフィス・工場など就業している場所)だけではなく、業務を遂行している場所(取引先・出張先・商談のための会食・派遣先など)も含まれます。
発言者・行為者の意図とは関係なく、職場にて行われた性的発言・行動によって、仕事をする上で一定の不利益を与えたり、職場環境を悪化させたりすることです。 かつては、「男性から女性への性的な言動によるいやがらせ」のことを主に指していましたが、女性から男性あるいは同性間など性別に関係なく、すべてのケースがあてはまります。
職場における精神的あるいは身体的な暴力のことです。 パワハラの詳細な定義についてはこちらを参照ください。 パワハラというと、上司から部下に対して職務上の権限を利用して精神的・身体的な圧力をかける行為のことのみを指すと認識されがちですが、それだけではありません。同僚間、部下から上司、正社員から非正規雇用者といったようにあらゆる関係で発生するものをさしています。 ただし、業務上の適切な指導はパワハラとは言えません。相手から「これはパワハラだ」と言われても内容や状況によっては、パワハラに該当しないケースもあります。
妊娠、出産、子育てなどをきっかけとして、解雇や雇い止めをされ不利益を被る、あるいは、職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けることです。 出産・育児休業後に復職して勤務する女性は増えています。そのために必要な環境や制度を整えて職場に復帰しやすくすることが、企業として求められている一方、権利だけを声高に主張することによる職場環境の悪化も避けるべきことでしょう。
ハラスメントの無い社会を実現させることを目的に、2019年に労働政策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)が改正され、2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されました。 これによって、職場におけるパワハラ防止のために必要な措置を講じることが義務となりました。 また、セクハラやマタハラについては男女雇用機会均等法および育児介護休業法にて、以前から事業主に防止措置が義務づけられていましたが、2020年6月に男女雇用機会均等法および育児介護休業法が改正され、防止対策の強化が図られました。 これをふまえて企業としてどのようなことを行えばよいでしょうか? 4つあげたいと思います。
ハラスメント対策を講じていることを就業規則の条文を修正・追加する、あるいは別規程を設けることです。 具体的には、ハラスメントの定義、行為の禁止、懲戒、相談及び苦情への対応などについて記載します。 作成した就業規則などは社員に周知することも忘れてはいけません。
ハラスメントに特化した集合研修を・E-ラーニング研修を実施する、あるいは、既存研修のアジェンダの一つに盛り込むなど手法は複数考えられます。 ハラスメントに対する知識や放置することのリスクなどをコンテンツとしてまとめ、全社員に啓蒙を行うことです。
実際にハラスメントの被害にあってしまった社員あるいは、ハラスメントや道義に反する言動などの場面を目にした社員が相談できる窓口を用意することです。 ハラスメントが発生した際、当事者のプライバシーを保護することが重要です。 また、ハラスメントを報告・相談することによって不利益な扱いを受けることがないように、管理者などが適切な対応する必要があります。 場合によっては、外部サービスや法律専門家に相談窓口を依頼することも考えられます。
社員アンケートや、ハラスメントに特化した調査を使用して、現状を掌握することです。 それによって、問題がどこにあり何をすべきなのかが明確になります。また、定期的に職場環境のモニタリングすることが、ハラスメントを未然に防ぐことにもつながります。
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ハラスメントが放置されると健全な職場環境が維持できなくなり、人材が流出(退職)する、新たに入った社員が定着しないといったことにつながります。 また、ハラスメントが横行している企業であると社内外から認識されると、企業のブランドイメージダウンにつながり、それが事業そのものにもネガティブな影響を与えます。 企業におけるハラスメント防止は、リスク管理の観点からも必須の対応といえます。
代表取締役 永見 昌彦
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