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近年、「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉が広がり、表面的には在籍・出社しているものの、心理的には仕事から距離を取っている社員像が語られるようになりました。さらに最近では、“忙しそうに見えるのに、成果が伴わない”状態を指す概念として、「クロックボッチング(Clock watching)」が海外メディアを起点に取り上げられています。
この記事をご覧の人事担当者や管理職の方の中には、次のような違和感や悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、クロックボッチングの概念を整理しつつ、「静かな退職」との違い、放置した場合のリスク、人事として取るべき対応、そして早期に察知するためのポイントまでを、実務目線でまとめます。
クロックボッチングは、海外では「物理的には職場にいるものの、心理的には離脱している」「忙しそうに“見える”が、意味のある成果につながりにくい」状態として説明されることが多い概念です。
たとえば、会議や細かな作業でスケジュールは埋まっているのに、重要なタスクが進まない、判断が遅い、改善提案が出てこない、といった形で現れます。
クロックボッチングが厄介なのは、遅刻・欠勤のような“分かりやすい不調サイン”として表れにくい点です。見かけ上は「きちんと稼働している」ため、問題が先送りされやすく、次のような構造で成果が出にくくなります。
重要なのは、本人が怠けているというより、設計や運用の歪みが「そう振る舞う方が損をしない」状態を作ってしまっているケースが多い点です。これは、多くの現場で共通して見られる実務上の実感でもあります。
クロックボッチングは、「サボっている人が増えた」という単純な話ではありません。むしろ現場では、頑張ろうとしていた人が、ある時点から「力を入れないほうが安全だ」と学習してしまうことで起きやすくなります。背景には、個人のコンディション要因と、職場・制度の要因が重なっているケースが少なくありません。
起点になりやすい要因は、次のように整理できます。
ポイントは、これらが単独で起きるのではなく、
「過負荷 → 疲弊 → 成果が落ちる → 評価に不満 → 不信 → さらに力を抜く」
という連鎖で強化されることです。だからこそ、早い段階で原因を切り分ける必要があります。
静かな退職とクロックボッチングは、どちらも「心理的な距離が生まれている」という点では似ています。ただし、実務上は、“本人が引いているライン”と、“職場から見える症状”が異なります。静かな退職は「やらないことが明確」になりやすいのに対し、クロックボッチングは「やっているように見えるのに、前に進まない」という形で現れやすい点が特徴です。
人事が現場と対話する際は、ラベルで決めつけるのではなく、意図→行動→影響の順に分けて観察すると、打ち手を誤りにくくなります。
| 観点 | 静かな退職 | クロックボッチング |
|---|---|---|
| 本人の意図 | 「職務範囲を守る」「過剰な期待に応えない」になりやすい | 「力が入らない」「踏み込みたくない」が結果として表に出やすい |
| 行動の特徴 | 追加タスク・自己犠牲・時間外対応を避け、境界線が明確 | 会議・報告・調整は増えるが、重要タスクが進みにくく、先送りが増える |
| 周囲への影響 | 役割分担が明確であれば共存可能だが、期待調整がないと摩擦が生じやすい | 「忙しいのに成果が薄い」という印象が蓄積し、不公平感・不信・負荷偏りを招きやすい |
| 人事が見るべき点 | 期待役割が過大ではないか・職務設計と評価が一致しているか | 仕事の摩擦(承認待ち・会議過多・裁量不足)と心身の疲弊がないか |
静かな退職は、「ここまではやる/ここからはやらない」と本人が線を引く行動として説明されることが多い一方で、クロックボッチングは、本人も周囲も「何が原因で進まないのか」を言語化できないまま、問題が長期化しやすいところが難点です。
クロックボッチングのような概念は、文脈を整理しないまま語られると、「働かない」「やる気がない」といった、個人の姿勢や価値観の問題として扱われやすくなります。
その一例として、SNSでは近年、「〇〇キャンセル界隈」という言い回しが広がり、その延長で「残業キャンセル界隈」も話題になっています。これは「残業をしたくない」という価値観を共有する合言葉として説明されています。
ただし、この文脈を職場対応に持ち込む際は、次の点を分けて考える必要があります。
さらに日本の労務管理において重要なのは、残業(時間外労働)には法的な枠組みがあることです。時間外労働や休日労働を行わせるには、労使でいわゆる36協定を結び、上限規制を含めたルールを守る必要があります。
つまり、「残業をする/させる」のも、「残業をしない」のも、感情論だけで判断できる話ではありません。人事としては、言葉の流行に引きずられるのではなく、業務の成立条件(時間・要員・プロセス)と、法令順守(36協定・上限規制)を前提に、現実的な設計へと落とし込むことが重要です。
クロックボッチングを放置すると、短期的には「一部の成果が出ない」という限定的な問題に見えるかもしれません。ところが、中期的には、組織の前提である信頼や公平性、協働の土台が崩れていくため、影響は連鎖的に広がります。エンゲージメントが低い状態は生産性にも影響し得ることが、グローバル調査でも繰り返し示されています。
典型的には、次のような順で悪化が進みます。
ここで押さえておきたいのは、クロックボッチングが「本人の問題」として捉えている組織ほど、手を打ちにくくなる点です。実際には、業務設計やマネジメントの歪みが、同じ状態を繰り返し生み出しているケースが少なくありません。
対応の要諦は、本人を追い込むことではありません。原因を切り分け、仕事と環境の摩擦を下げ、評価と運用を揃えることです。クロックボッチングを「姿勢の問題」として扱うと、現場は防衛的になり、必要な情報が上がってこなくなります。まずは、再現性のある手順で手当てをしていくことが重要です。
制度・運用で効きやすい対策は、次の通りです。
これらは、本人の意欲に依存せず、組織側で再現性高く改善できるポイントです。
現場のマネジメント機能が低下すると、クロックボッチングは“改善”ではなく“隠蔽”へ向かいます。だからこそ、人事は、管理職に「気合い」ではなく「型」を渡す必要があります。
クロックボッチングを早期に察知するために重要なのは、「成果が落ちてから気づく」のでは遅い、という点です。成果は遅行指標であり、先に変化するのは、意思決定の速度、対話の量、仕事の選び方です。
次のような兆候が複数見られる場合は、意欲低下が始まっている可能性を疑います。
ここで重要なのは、これを「本人の甘え」と断定しないことです。こうした兆候は、燃え尽きや不信のサインであることが多く、手当てが早いほど回復しやすくなります。
人事が現場に実装しやすい察知の仕組みは、次の3点セットです。
この3点を回すことで、個別事象に見えていた問題が、「職場構造の問題」として可視化されていきます。
クロックボッチングは、「人のやる気」の問題として片づけるほど、長期化します。燃え尽き、不信、評価への納得感低下、裁量不足、関係性の摩耗が重なると、社員は“前に進む行動”ではなく、“無難に時間を埋める行動”を選ぶようになります。 だからこそ組織としては、仕事の摩擦を減らし、期待と評価を揃え、対話を途切れさせないことが重要になります。
▼ES調査「ASQ」の活用
意欲低下は、成果指標だけでは見えにくく、本人も言語化できないまま進むことがあります。そのため、サーベイを用いて「状態」を継続的に把握し、対話と改善につなげることが有効です。アスマークの「ASQ」は、従業員満足度や組織の課題を可視化し、さらに施策の提案までがセットになった調査サービスでます。
社内の部署別・属性別の分析だけでなく、ベンチマークを用いた同業平均との比較なども踏まえ、自社の傾向や優先すべき課題を客観的に可視化します。
成果が落ちてから対応するのではなく、「兆候が出た段階で、原因を探り、手当てをする」仕組みへ切り替える。「ASQ」のような可視化の仕組みを取り入れることで、現場の感覚だけに頼らない、再現性のあるマネジメントが可能になります。
もし今、「忙しそうに働いているのに成果が伸びない」「チームの空気が重い」「優秀な人ほど疲れている」といった違和感があるなら、まずは、“意欲低下の兆候”を見える形にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
施策提言まで込みの
真に役立つES調査パッケージ

株式会社アスマーク マーケティング・CSチーム運営
【活動の実績】
ハラスメント・エンゲージメント・働き方改革に関する知見発信において、自社登壇セミナー開催数は累計320回、申込者数は23,000人を突破。関連資料の利用者は17,000人以上。(※2026年現在)
【受賞歴・社会活動】
・SUCCESS STORY AWARD 2025 アワード受賞(座席管理ツール「せきなび」) 受賞詳細:https://digi-mado.jp/success-story-award-2025/sekinavi/
【学術・教育支援】
大学等の教育機関へ1万人規模の実証データを提供し、PBL(課題解決型学習)教育の支援も行っています。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000018991.html
監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)
株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー
リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。従業員満足度調査「ASQ」のサービス立ち上げに参画し、業界比較分析も起案。人材コンサル会社と協力し「やりっぱなしで終わらせず、改善できるES調査」の開発を主導。
本記事の監修にあたって: 自身の豊富な実務経験に基づき、公開情報の正確性と、読者の皆様のビジネスに即した実用性を厳格に審査しています。

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