この記事をご覧の方の中には、「多様性を推進するには、具体的にどのような社員教育を行えばよいのか分からない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
今回は、多様性とインクルージョン(D&I)を育むダイバーシティ研修について解説します。人事施策や社内制度の見直しに役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
ダイバーシティ研修とは、異なる背景や価値観を持つ社員が協力しながら協働できる組織を作るために、必要な知識や姿勢を身に付けるための社員教育です。多様性を受け入れ、他者の立場を尊重しながら、社員一人ひとりが力を最大限に発揮できる環境(D&I=ダイバーシティ&インクルージョン)の実現を目指します。
ダイバーシティ研修が必要とされる背景には、主に以下の3つの社会的変化が挙げられます。
すべての人が尊重され、力を発揮できる職場環境を整えることは、持続可能な組織づくりの基盤となります。特に、少子高齢化が進む社会においては、多様な人材の持つ能力や経験を生かせる体制づくりが不可欠です。
また、ビジネスのグローバル化が進行する中で、多様な文化や価値観が共存することを前提とした組織運営は、企業に新たな視点と柔軟性をもたらします。
さらに、変化の激しい市場環境においては、多様な視点から革新的なアイデアを創出し続けることが求められます。D&Iの取り組みは、そうした創造力を高め、企業の成長を支える重要な要素です。
D&Iの取り組みの中でも、組織としてのメッセージ発信や多様な人材の雇用に並び、社員研修は特に重要な取り組みの一つです。
研修を行わず個人の良識に任せるままにしていると、知識不足による無意識の思い込みや偏見から、良かれと思って他の社員を傷つけてしまうことも起こりえます。
無意識の思い込みや偏見が職場環境にどのような影響を及ぼすのかを把握するために、セルフチェックツールを活用するのも一つの方法です。こちらの資料も合わせてご参照ください。
ダイバーシティ研修は、対象となる社員の立場や役割に応じて内容を調整することが重要です。ここでは、具体的なカリキュラム例をご紹介します。
まず全社員が共通して学ぶべき基礎として、ダイバーシティそのものへの理解が挙げられます。具体的には、以下のような内容を含めるとよいでしょう。
これらの前提知識を踏まえた上で、各属性への具体的な対応や、誰もが働きやすい職場環境づくりについて考えることが可能になります。
女性の活躍を推進するには、女性本人だけでなく、管理職や周囲の社員に対しても、適切な理解と支援の仕組みが求められます。対象別にカリキュラムを設計することで、より実効性の高い研修となります。
以下はその一例です。
女性社員に対しては、育児や介護との両立を踏まえたキャリア形成支援が不可欠です。キャリアに対する不安を軽減し、ワークライフバランスを取りながらキャリアアップを実現するために、先輩ママ社員との交流機会を設けると、未来のキャリア像を描きやすくなるでしょう。
一方、管理職には、ハラスメント対策や心理的安全性の確保といった視点から、対話のあり方や評価制度の見直しに取り組む姿勢が求められます。また、キャリア形成とワークライフバランスを両立しながら活躍できる仕組みづくりについても理解を深めることで、女性の活躍を一層推進することが可能となります。
国籍や文化の異なる社員が、対等な立場で協働しながら力を発揮できる職場づくりには、双方の理解と歩み寄りが欠かせません。例として、以下のように、対象者ごとに焦点をあてた研修設計をすると効果的です。
外国人社員にとっては、日本特有のビジネス慣習や言語の使い方など、暗黙の了解が障壁になりやすい場面があります。そうした前提や文化の違いを理解することで、相互の行き違いを減らすことができます。ここでいう文化とは、国籍や宗教だけでなく、ビジネススタイルや意思決定プロセスの違いも含まれます。
一方、日本人にとっても、「異なること」そのものを当然の前提とし、多様な価値観に開かれた姿勢で関わることが求められます。加えて、国籍や文化を理由とする無意識の偏見や言動―いわゆるレイシャルハラスメント―に対する理解を深めることも重要です。
どちらかが一方的に歩み寄るのではなく、対話や実践を通じて「ともに働く関係性」を育むこと。それが、文化の違いを力に変える土台となります。
高齢者雇用安定法の改正が進む中で、今後ますますシニア世代の活躍が期待されています。世代や立場に応じた視点で学べるよう、研修は年代別・シニア向け・全社員それぞれに内容を分けて構成すると効果的です。
シニア世代にとっては、定年後の働き方や役割の変化に対する戸惑いを乗り越えるために、自身のキャリアや貢献のあり方を再考する機会を持つことが大切です。
役職の経験や変化にかかわらず、定年後も組織内で活躍できる場があることで、多くのシニア世代が活躍できる組織となり、自信を持って業務に臨むことができるでしょう。
また、ITスキルや効率的な業務の進め方の習得をサポートすることで、年齢に関係なく活躍し続けられる環境づくりが進みます。 全社員に対しては、シニア世代に関する理解を深めるとともに、エイジハラスメントの防止や、世代間の壁を越えた協働のあり方について考えることが求められます。
定年後は、体力の衰えなど身体面への影響、キャリア観など、誰もがさまざまな変化を経験します。シニア社員が自然体で力を発揮できる職場づくりは、組織全体の多様性の成熟にもつながるでしょう。
誰もが能力を発揮できる職場づくりには、障がいに対する正しい理解と、個々のニーズに応じた柔軟な対応が欠かせません。全社員と採用担当者それぞれに求められる視点から、以下のような研修を設計するとよいでしょう。
障がいと一口に言っても、その種類や程度は人それぞれで、必要な支援も異なります。職場で適切に配慮するためには、「支援する側」「される側」という構図ではなく、ともに働く仲間として必要な条件や工夫を理解する姿勢が重要です。
たとえば、視覚・聴覚・身体・精神・発達など、障がいの種類ごとの特徴を学ぶことで、現場で戸惑うことなく、自然な関わりが可能になります。また、ハラスメントに該当する言動の事例も共有することで、無意識のうちに生じる不適切な対応を防ぐことができます。
また、障害者雇用促進法により、一定数以上の社員がいる企業は、一定割合の障がい者を雇用する義務があります。採用担当者は、単に法令を守るだけでなく、候補者が不安なく応募し、採用後も職場で力を発揮できるような体制の構築を目指しましょう。
LGBTQ+とは、性的マイノリティを指す総称で、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クィア/クエスチョニング(Q)など、さまざまな性のあり方を含み、「+」にはそれ以外の多様な性的指向や性自認が含まれます。
研修では、全社員と管理職それぞれに向けたカリキュラムを用意すると効果的です。
LGBTQ+に関する研修のポイントは、性の多様性について基礎的な知識を正しく理解したうえで、日常の配慮法を身に付け、誰もが安心して働ける環境をともに築いていくことにあります。
研修では、カミングアウトを受けたときの対応や、相談を受けた際の姿勢など、実際に起こりうる場面を想定して、具体的にイメージできるカリキュラムを取り入れると理解が深まります。
管理職向けには、評価や登用の場面における無意識のバイアスに気づき、性的指向や性自認にかかわらず、多様性を尊重して公平な判断ができる仕組みづくりが求められます。
性的マイノリティに対する職場での差別や偏見は、いまだ根強く残る現実があります。SOGIハラスメント(性自認や性的指向に関する嫌がらせ)やアウティング(本人の同意なく性の情報を暴露する行為)を防ぐためにも、知識と感度の両面からのアプローチが必要です。こちらの資料も参考にご覧ください。
ダイバーシティ研修の効果を高め、実際の行動変容につなげるためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
研修の導入にあたっては、まず管理職がダイバーシティの重要性を理解し、共通認識を持つことが欠かせません。管理職が古い価値観にとらわれず、あらゆる多様性を率先して理解することで、現場での研修内容の実践や定着が格段に進みやすくなります。
また、座学だけでは知識の定着や意識の変化が生まれにくいため、ゲームやロールプレイ、ディスカッションなど体験型の学習を取り入れてアウトプットを行うと効果的です。こうした手法は、研修対象者の主体性を引き出し、気づきや学びを深めるのに役立ちます。
講師には、異文化理解に長けた外部の専門家や、LGBTQ+当事者や障がいのある当事者など、実際に多様な立場で働いてきた経験を持つ方を迎えることで、実体験を踏まえた講義が受けられ、リアリティのある学びが期待できます。
さらに、研修後の行動変容を促すには、定期的な振り返りや実践の場を設けるなど、フォローアップの体制づくりが不可欠です。学んだことを現場で活用できる仕組みが整ってはじめて、研修は本当の意味で機能するといえるでしょう。
ダイバーシティ研修は、あらゆる立場の社員が働きやすい組織をつくるために必要な知識を学ぶ重要な機会です。労働力の多様化やグローバル化が進む中で、今後ますますその必要性は高まっていくでしょう。
研修は、まず基礎的な知識からスタートし、女性・外国人・シニア・障害のある方・LGBTQ+など、属性ごとの視点を取り入れながら進めると効果的です。成功の鍵となるのは、管理職の理解、体験的な学びの設計、そして研修後の継続的なフォローアップです。また、当事者の視点を持つ講師を起用することで、より深い理解と実践に結びつけることができます。
アスマークが提供する「CHeck研修」は、多彩な講師陣と豊富な研修メニューをベースに、各企業の課題や目的に合わせてカスタマイズが可能なサービスです。弁護士やカウンセラー、LGBTQ+の当事者など、専門知識と実践経験を持つ講師が多数在籍しており、eラーニングと対面研修のどちらも柔軟に対応できます。
多様性を活かす組織づくりの第一歩として、信頼できる研修サービスを活用することも一つの選択肢です。D&Iの実現に向けた取り組みとして、「CHeck研修」を検討してみてはいかがでしょうか。
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