アウティングとは?意味や組織が取るべき防止策を分かりやすく解説

 

2023年にLGBT法案が施行されるなど、日本でもLGBTQ+への理解を深める取り組みが推進されています。

 

そこで今回は、LGBTQ+関連のハラスメントの中でも悪意なく行ってしまう可能性のある「アウティング」について、組織に与える影響や、組織が取るべき対策についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

アウティングとは?

アウティングとは、本人が公表していない性的指向や性自認などの個人情報を、本人の許可なく第三者へ言いふらしたり、SNSへ書き込んだりする行為のことです。アウティングを直訳すると「暴露する」という意味を持っています。

 

アウティングとカミングアウトの違い

アウティングと似て非なる言葉として、カミングアウトがあります。カミングアウトとは、今まで話したことがない性的指向や性自認などの個人情報を、本人の意志で打ち明けることです。

本人がカミングアウトしたからといって、その内容を本人の許可なく第三者へ伝える行為はアウティングとみなされます。

 

カミングアウトの多くは、センシティブな情報を含んでいますし、この人になら話しても大丈夫だろうと覚悟と信頼をして話してくれる場合も多くあります。これらを勝手に他者に公開することは、カミングアウトしてくれた人の信頼を裏切ることにもなります。

情報をどの人にどれだけ公開したいかは、本人が決めることです。そのため、聞いた内容を第三者へ伝える必要がある場合は、事前に本人の許可を得ることが重要です。

アウティングが与える影響

アウティングが発生したとき、組織・個人から見た影響をご紹介します。

組織に与える影響

アウティングが組織に与える影響は主に3点です。

法的なリスクを負う可能性がある

アウティングをした人は、プライバシー侵害で損害賠償の支払いが発生する恐れがあります。加えて、組織は2つの損害賠償責任を負わなければなりません。

 

  • アウティングした従業員を管理する「使用者責任」
  • 従業員にとって働きやすい環境に配慮する「職場環境配慮義務」

 

組織は、従業員の性的指向や性自認などの個人情報を取得した場合、その情報を適切に管理し、アウティングの対策を取る必要があります。

組織の評価やブランドイメージの低下

アウティングによる損害賠償が発生した情報が世間に広まると、当然ながら組織の評判は悪くなるでしょう。今まではよいイメージだったとしても「あの組織に個人情報を知られると、広めてしまう」というイメージが定着し、顧客離れを招く恐れがあります。

人材の採用が難しくなる可能性がある

アウティングにより組織のイメージが低下すると、採用にも悪影響です。「この組織は個人情報を言いふらされる」と思っている会社に入りたいと思う人はいないでしょう。優秀な人材の応募がなく、人材採用が難しくなる可能性があります。

個人に与える影響

アウティングは、損害賠償など組織に大きな影響を及ぼします。さらに、個人へも多大な影響を及ぼします。主に3点です。

心理的安全性の低下

組織内でアウティングが発覚したら、当事者は加害者への信頼を失います。「周囲はどこまで知っているのか?」と疑心暗鬼になり、仕事に集中できません。加えて、周囲の従業員は「秘密を話したら言いふらされる」と不安になり、正直な意見を伝えられなくなる恐れがあります。心理的安全性が低下すると、新しいアイデアが生まれず、生産性にも悪影響です。

健康問題の原因になる

アウティングの被害者は、自分の情報が誰にどのように伝わっているのか不安で仕方ありません。日々不安を抱えながら仕事を続けることで、心身疲労が重なり、健康に害を及ぼす可能性があります。

退職の原因になる

アウティングにより、被害者の健康問題が発生したら、仕事を続けることはできません。退職する原因の1つとして、アウティングがあがる可能性があります。さらに、組織の対応次第では「個人情報を守ってくれない組織」という不信感から、被害者以外にも退職者が相次ぐかもしれません。

アウティング防止のための具体的な対策

2020年、厚生労働省は「アウティングもパワハラ行為に該当する」と正式に認定しました。アウティング防止には、パワハラ防止法と同様の対策が必要です。

参考:厚生労働省パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です! ~~2022年4月からパワーハラスメント防止措置が全企業に義務化されました~~」

社内ルールの整備

アウティングに対する社内ルールがない場合は、整備から始めましょう。社内ルールには、以下の内容を記載します。

 

  • アウティングにあたる行為の例
  • 行為に対する罰則
  • ハラスメントに対する組織の対応

 

アウティングに関するルールを記載のうえ、従業員へ周知しておきます。

 

外部相談窓口の設置

パワハラに関する外部相談窓口は既に設置している組織も多いでしょう。既存のハラスメント相談窓口で、アウティングに関する相談も受け付けられる体制整備が必要です。相談窓口を個別に分けるよりは、何でも相談できる窓口をひとつ設ける方が相談者からすると相談しやすいでしょう。

また、体制とは、調査・解決に至るまでのケアができるチームを指します。社内で体制を整えるのが難しい場合には、外部の相談窓口サービスを利用するのも手です。

教育や研修の実施

ハラスメント研修は、既に定期実施している組織も多いでしょう。しかし、アウティングをはじめとするLGBTQ+関連の研修を実施している組織は少ないのではないでしょうか。研修では、アウティングはハラスメントになるということだけでなく、ケーススタディを加えるとイメージしやすくなります。

社内アンケートの実施

社内アンケートで、現状を知ると、組織に起きていることが判明します。そのため、定期的なアンケートの実施は不可欠です。通報に躊躇しているアウティングを知る機会や、従業員のLGBTQ+やアウティングに対する理解度を知る機会になります。

アウティング防止には当事者意識が重要

アウティングは、当事者からすると耐え難いハラスメントではあるものの、加害者からすると嫌がらせのつもりはないケースがあります。アウティングについて、正しい知識がなければ、加害意識を持たずして悪気なくハラスメント行為を犯している可能性があります。アウティングを防止するためには、「自分も意図せず加害者になるかもしれない」という当事者意識を持って接することが重要です。

アウティングに対応したハラスメントサービス「CHeck」

アスマークの「CHeck」は、当事者意識を持たせるハラスメント対策パッケージです。新たに、LGBTQ+・SOGIなどの多様性に対応するパッケージがスタートします。

「CHeck」を活用すれば、アウティングのように、気づかないうちに行ってしまいがちなハラスメントの啓発を行うことも可能です。

アウティングに対応するパッケージには、3つのサービスがあります。

  • 社内アンケート
    パワハラ・セクハラ・マタハラに加え、LGBTQ+に対する理解度や発生状況を調査(※)
  • 研修
    当事者講師による実体験を踏まえた研修

アウティング対策だけでなく、当事者の体験に基づいた研修など、組織にすぐ反映できるサービスとなっています。

※2023年10月リリース予定

 

アウティングは、加害者側に悪意が無いケースも多く見られるハラスメントです。しかし、被害者はとてもつらい思いをします。アウティング対策・多様性を意識して、すべての従業員が働きやすい職場づくりを目指してみてはいかがでしょうか。

 

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G

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