この記事を読む方の中には
「パワハラ対策が形骸化している」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は、パワハラについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
パワハラとは「職場での優位性や立場を利用した、業務上の適正範囲を超えた叱責や嫌がらせ行為や言動」のことです。殴ったり、足で蹴ったりする等の暴行をともなうパワハラは刑法上で罰則が明確化されていますが、それ以外のパワハラ行為に対し、現時点では明確な罰則規定が設けられていません。しかし、企業は、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2第1項により、労働者をパワハラから守る義務が定められています。
厚生労働省では、以下の3要素すべてに該当する職場で行われる行為・言動を「パワハラ」と認定しています。
ここで言う「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所です。オフィスに限らず、出張先や職務で移動している車中、取引先との打ち合わせ場所が含まれます。ここで、混同しやすいのが飲み会の場所です。勤務時間外においても職務の延長と考えられる場合は職場に該当します。 「優越的な」関係は、役職や勤務年数だけでなく、集団や心理的圧力など反論できない関係性もパワハラにあたる可能性があります。「労働者」は、正社員だけでなくパートや派遣社員なども該当します。
パワハラの状況はさまざまなものの、言動や行為は大きく6パターンに分けられます。パワハラの6類型の定義と、認定・不認定となった過去の判例をご紹介します。
「身体的な攻撃」は、暴行や物を投げつける行為です。認定された判例は、協力会社の労働者が雇用先の教育担当者から集団暴行・強制謝罪させられた例があります。
過去に不認定だった裁判例として、物を投げつけられたと訴えたが、証拠不十分かつ被害者にも非があり不認定にされたケースがあります。
「精神的な攻撃」は、長時間に渡り叱責したり人格を否定したりすることです。過去には、長時間労働を繰り返したうえに、2時間以上に渡り立ったまま叱責されて脳梗塞を発症した事案があります。この脳梗塞に対して労災を請求し、一審では不支給となったものの、二審では認められた判例をご紹介します。
判例参考:あかるい職場応援団_亀戸労基署長事件
下記の不認定の判例では、不正経理が発覚し、改善を求めるものの1年近く是正されず叱責をしたところ、叱責を受けた従業員が自殺に至った例があります。不正経理の解消や工事日報の作成について、ある程度の厳しい改善指導をすることは社会通念上許容され、業務上の指導の範囲を超えるものと評価することはできないことから、不認定となりました。
判例参考:あかるい職場応援団_前田道路事件
「人間関係からの切り離し」は、職場で孤立させたり集団で無視したりすることです。過去の裁判では、コールセンターにおいて「人間関係からの切り離し」のハラスメントが行われた例があります。コールセンターに勤めていた正社員がセールストーク内容に疑問を抱き、上司に質問を行う等していたことにより不平分子とみなされ、従業員が無視・常時監視などのいじめを受け強制退職させられた事案で、パワハラが認定されました。
判例参考:あかるい職場応援団_美研事件
不認定の判例は、知的障害者の施設で勤務していた原告が、雇用主であった被告の従業員複数からパワハラを受けたとして、被告に対し慰謝料の支払等を求めて提訴した事案です。原告が上司の違法行為を内部告発したことから、逆恨みされて雇止めの通知を受けたと主張していましたが、雇止めは撤回されたうえに、内部告発の証拠や違法と評価されるべき言動が立証されず不認定とされました。
判例参考:あかるい職場応援団_社会福祉法人大阪府障害者福祉事業団事件
「過大な要求」は、私的な雑務や過剰に業務を押し付ける行為です。過去の裁判では、病気休暇明けにもかかわらず、過剰に業務を押し付けたことで精神疾患が増悪し自殺に至ってしまった例があります。
判例参考:あかるい職場応援団_損害賠償請求事件
不認定の判例は、異動を命じられた労働者が自殺した事案において、使用者の安全配慮義務について争われた例があります。出向先で精神疾患を患ったにもかかわらず異動を説得され心理的な不可がかかったことから自殺に至ってしまったケースです。異動の際に労働者の負荷が減ることや通勤時間の増加へも対策を講じると再三説明していたこと、労働者に不自然なしぐさ等なく自殺を予見できるような状況でなかったため、企業の責任は問われませんでした。
過小な要求は、合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことです。過去には、高校教諭が担任・授業などの業務から外され、仕事を与えられないまま4年以上に渡って別室へ隔離された判例がありました。
不認定の判例は、経営悪化のため早期退職および配置転換を実施した企業と、その経緯の中で退職に至った従業員が、不当な対応のため退職に至ったと訴えた判例があります。企業側は早期退職および配置転換にあたり説明会を実施し、新会社への移籍について従業員に意向確認をしていました。企業のおかれた経営環境を照らして考えると合理的な判断であり、関連会社に出向という形で就職できるよう、最大限の努力していた上、就業規則に「業務上必要な場合は転勤や長期出張を命じる。その場合は応じなければならない」と明記されており、同意のうえ入社していることから不認定となりました。
個の侵害は、私的なことへ過度に立ち入ることです。過去の裁判では、先輩の言うことは絶対という考え方のもと、肩もみや雑用を強いたり私用のために送迎させられたりといじめや嫌がらせをした例があります。
一度不認定とされ、一審と二審で判決が変わった事例は、豊前市役所に努める総務課長の言動が、豊前市役所福祉課に勤める原告に対する誹謗中傷、名誉毀損あるいは、私生活に対する不当な介入をしていたと認められた裁判です。原告と女性職員が交際している中での出来事の目撃情報が職場へ寄せられ、事情を聴くための総務課長との面談中に、交際に介入するような言動や誹謗中傷のような発言が見受けられました。総務課長の立場上、職場への悪影響が生じる場合は指導が必要とされるが、悪影響が生じているわけではなかったため、不当な介入であるとされました。一方、原告の主張の中には総務課が適切な対応をとらなかったとの発言もありましたが、市民から市に対する要望や苦情があった際、窓口となるのが総務課であったため、こちらは否定されました。
パワハラの認定・不認定には境界があります。どこからハラスメントに該当するのか把握しておくのが大切です。ハラスメントの線引きは、下記をご参照ください。
パワハラの加害者になる人物には、一定の特徴があります。次のような特徴です。
心身に余裕がなければ、発散するためにパワハラへ至るかもしれません。相手の意見を聞こうとしない自己中心的な人物、自らの能力を誇示しようとするタイプ、過剰な管理を強いる上司も自分の意見を押し付けようとしてパワハラをする可能性があります。 パワハラの可能性が高い「クラッシャー上司」になっていませんか?チェックしてみましょう。
パワハラの多くは、自覚がありません。誰しもが加害者になりうるため「自分がパワハラをするかもしれない」と意識することが大切です。当事者意識を持つためには、プロが実施する研修を受けるとよいでしょう。
アスマークの「CHeck」は、当事者意識を持たせる研修が魅力のパワハラ対策サービスです。 CHeckの「アセスメント研修」は、コンプライアンス7分野・ハラスメント3分野のリスク診断結果を受けて研修を実施します。研修は、自分のリスクについて受講できるため、当事者意識が自然と身につきます。 最後に、リスク対策と行動計画を立てるため、研修終了後から自分のリスクに対するハラスメント対策が実施可能です。
ハラスメント予防・
コンプライアンス対策なら
パワハラは、職場の優位性を利用した嫌がらせ行為です。暴行や精神的な追い込みのほか、私生活へ過度に立ち入る行為や誰もができる業務を強制するなどあらゆる行為があります。パワハラ上司は、ストレス過多や自己顕示欲など誰もがなりうる要素なものの、当事者意識が薄い点が特徴です。 パワハラ対策に当事者意識を持たせるためには、アセスメントテストを使った研修を活用してみてはいかがでしょうか。
株式会社アスマーク 営業部 Humap事業G