この記事をご覧の方の中には、「不妊治療への支援やハラスメント対策について知りたい」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
不妊の検査や治療を受けた経験のある夫婦は20%を超え、増加傾向にあります。その一方で、妊活や不妊治療に対する企業の支援が乏しく、仕事との両立を断念して離職するケースも少なくありません。
そこで今回は、「プレ・マタハラ」というハラスメントの概念に注目し、企業が取り組める支援策についてご紹介します。ぜひ参考にしてください。
プレ・マタハラとは、妊活や不妊治療といった、妊娠を希望する従業員に対して行われる、嫌がらせ行為のことを指します。
男女雇用機会均等法第9条では、婚姻、妊娠、出産などを理由とした解雇や退職の強要を禁止していますが、妊娠前の妊活や不妊治療に関する具体的な法的保護は整備されていません(2025年4月現在)。
不妊治療は通院回数が多く、費用面での負担も大きいため、仕事との両立に悩む方が多いのが実情です。加えて、広く認知されるようになった「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」に比べ、「プレ・マタハラ」はまだ社会的認知が進んでいない状況にあります。今後、増加が想定されることを踏まえると、企業においてもプレ・マタハラへの理解と対策が必要です。
プレ・マタハラの具体例としては、大きく3つの行為に分けられます。
これらの言動は、すべて不妊治療への理解不足から起きています。
不妊治療は、体調やホルモンバランスの影響を大きく受けるため、スケジュールを立ててその通りに進めるということが難しいものです。そのため、休暇を取得するタイミングや回数など、すべてを自分の意思でコントロールすることは困難です。また、治療の内容や取り組む期間もさまざまで、痛みをともなう検査や注射といった身体的負担も含めて個人差が非常に大きく、「不妊治療とはこういうもの」「休暇はこれぐらいの回数で十分」と一律に決め付けることはできません。
企業としては、当事者だけでなく周囲の従業員も含めて不妊治療への理解を深める機会を設けるとともに、コミュニケーションを密にして、妊活や不妊治療を続けながら安心して働き続けられる環境を作ることが、プレ・マタハラの予防対策として求められます。
厚生労働省が公表した「令和5年 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去5年間におけるプレ・マタハラを経験した割合は17.9%にのぼっています。さらに、同年に実施された「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」によると、73.5%もの企業が不妊治療に関する支援制度を設けていないという結果も明らかになりました。
約5人に1人が経験するハラスメントであるにもかかわらず、企業における不妊治療への支援やプレ・マタハラ対策が進んでいない現状が、数字からも浮き彫りになっています。
参考:厚生労働省【令和5年 職場のハラスメントに関する実態調査】
参考:厚生労働省【不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査】
こうした状況を踏まえると、企業としてもプレ・マタハラへの理解を深め、具体的な支援策に取り組む必要があるといえるでしょう。
企業が実施可能なプレ・マタハラ対策には、以下のような支援があります。従業員が長く働ける環境を整えるための取り組みとして、検討してみてください。
休暇制度には、次のような種類があります。
制度を設計する際は、選択のしやすさやプライバシーへの配慮が重要です。不妊治療を周囲へ知られたくない従業員のために、目的を定めない(申請時に明記しなくてもよい)休暇制度を設けている例もあります。
有給休暇の積み立て制度は、本来2年で失効する有給休暇を積み立てて、翌年以降の休暇に充てる制度です。体調に合わせて取得できる休暇として活用できるでしょう。
また、休暇制度については「ファミリー休暇」と名称を工夫して、不妊治療に限定せず、幅広く休暇の取得を推進する例もあります。
柔軟な働き方を実現する方法として、次のような制度があります。
柔軟な働き方を実現するには、希望に合わせて選択できるよう、複数の選択肢を用意しておくことがポイントです。例えば、フレックスタイムとテレワークを組み合わせて利用すれば、通院して治療を受けながら通常通り業務を行うことができるというケースも十分あり得ます。不妊治療は長期間にわたって続くことも少なくありません。その中で、時間単位や半日の有給を度々取得することに後ろめたさを感じたり、周囲の反応や仕事との両立に悩んで大きなストレスを抱えてしまっては、治療への影響が出ないとも限りません。
柔軟な働き方を整備することで、従業員にとっては治療が受けやすい環境となり、企業にとっては離職防止につながるというメリットがあります。
不妊治療には保険適用外の自費診療も多く、経済的な負担が大きくなりがちです。企業によっては、以下のような支援策を導入している例もあります。
提携医療機関のクーポン券
一部の企業では、特定の医療機関と連携し、受診時の割引クーポンを配布している事例もあります。
自費診療への補助
卵子凍結や関連サプリメントといった保険適用外の治療について、補助制度を設けている企業もあります。
治療費の一部補助
治療費のうち一定額または一定割合を企業が負担する制度。福利厚生の一環として導入されるケースがあります。
治療費の貸付
費用面での不安を軽減する目的で、治療費の貸付制度を設けている企業もあります。福利厚生制度や社内融資制度の一環として活用されるケースです。
こうした制度は、特にダイバーシティ推進に積極的な企業や、大企業の先進的な事例として見られます。すべての企業に導入が求められるものではありませんが、従業員のライフプランを尊重し、長く働ける環境を整える一つの方策として、検討する価値はあるでしょう。
尚、費用の貸付や補助については、助成の対象範囲や条件を明確に定めることがポイントです。
仕事と不妊治療の両立に関する相談や、不妊治療を理由とした不当な扱いやハラスメントを受けた際の相談を受け付けられる窓口を設置します。社内に相談窓口を設ける場合、実際に不妊治療を経験したことのある従業員が窓口担当を務める例もあり、より当事者に寄り添った支援が可能となります。相談内容によっては産業医や外部専門機関と連携する必要があるため、自社に合った窓口の設置方法を検討しましょう。プライバシーへの配慮として、外部相談窓口を利用する方法もあります。
不妊治療や支援制度に関する理解が不足していると、悪意がなくともハラスメントが発生するリスクがあります。そのため、社内研修を通じて以下のような内容を周知することが重要です。
まだ認知度の低い「プレ・マタハラ」ですが、れっきとしたハラスメントの一種です。不妊治療について基本的な知識を押さえ、ハラスメントにあたる言動や対応について全従業員が学んでおくと、現場で直面した際にも落ち着いて対処することができるでしょう。
プレ・マタハラ対策には、治療と仕事が両立できる職場作りが大きなポイントとなります。従業員一人ひとりが適切な行動・言動を取れるように、理解を深める研修機会を設けて、職場の健全化につなげましょう。
プレ・マタハラは、妊活や不妊治療に対する無理解や偏見から生じるハラスメントです。
厚生労働省の調査では、直近5年間で17.9%がプレ・マタハラの被害を経験しており、不妊治療の支援制度がない企業は全体の約7割にものぼります。
企業としては、制度の整備はもちろん、従業員一人ひとりの理解と意識改革も欠かせません。何気ない言動が意図せず加害行為となるリスクを減らすためには、ハラスメントに対する自覚を促す取り組みが必要です。
アスマークの「CHeck」では、個人のハラスメントリスクを可視化し、気づきと対策につなげる研修サービスを提供しています。あらかじめリスクを把握することで、不用意な発言によるハラスメントを防止します。プレ・マタハラをはじめとする多様なハラスメントへのリスク感度を高める手段としてご検討ください。
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