この記事をご覧の方の中には、「今からでも固定席をやめて、フリーアドレスに移行した方がいいのか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
今回は、フリーアドレスのメリット・デメリットについてご紹介します。固定席かフリーアドレスか、全体で導入するか部分的に運用するかなど、座席制度の見直しを検討する際の参考になれば幸いです。
全国の会社員を対象に当社が実施した調査(*1)によると、フリーアドレスの導入率は全体で3割弱。業種別では、IT・情報通信において5割が導入しており、メーカーでも3割を超える結果となりました。テレワークの運用が可能な業務が多い企業ほど導入率が高く、加えて従業員数が多い企業でも導入が進んでいる傾向が見られます。
*1…2023年4月実施。全国の会社員(正社員)1,200名の回答による。(株式会社アスマーク調べ)
調査結果の詳細は、以下より無料でダウンロードしていただけます。フリーアドレス経験者の“本音”として、業種別・従業員規模別にまとめたグラフも掲載しておりますので、併せてご活用ください。
座席の自由化に際しては、「固定席と比べて業務やコミュニケーションに支障が出るのでは」といった懸念から、導入に踏み切れない企業もあるかもしれません。とはいえ、フリーアドレスには一定の合理性と多くの利点もあります。まずは「席は固定でなければならない」と決めつけず、業務特性に即した上でメリット・デメリットの両面を踏まえた検討を行ってみてはいかがでしょうか。
フリーアドレスの導入により得られる代表的な効果として、オフィスの省スペース化とコミュニケーションの活性化が挙げられます。詳しく見ていきましょう。
営業職やコンサルタントなど、外出機会の多い職種では、執務時間の大半を社外で過ごすこともめずらしくありません。固定席を設ける場合、不在時であっても1席分のスペースを常に確保する必要があります。
一方、座席を自由にすることで、稼働実態に合わせた最小限のデスク数で対応することができ、省スペース化とコスト削減が実現できます。
また、空いたスペースを活用してカフェエリアや休憩室を設けることにより、従業員満足度の向上にも寄与するでしょう。さらに、組織改編や人員増減に伴いレイアウト変更が必要となった際にも、柔軟に対応できる点は大きなメリットといえます。
フリーアドレスでは一般的に、毎日異なる席を使用することになるため、自然と普段接点のない社員との会話のきっかけが生まれます。結果として、部門や役職を超えたコミュニケーションの促進が期待できます。
多様なメンバーと日々接することで、自分にはない新しい視点やアイデアに触れやすくなり、イノベーションの創出につながる可能性もあるでしょう。
前述の調査結果では、フリーアドレスの導入を歓迎する意見と、そうでない意見が拮抗しており、評価が分かれる結果となっています。
この背景には、業務内容や企業文化との相性、そして導入にあたって適切な対策を講じているかどうかといった要素が影響していると考えられます。
フリーアドレスの導入には、いくつかの懸念点も存在します。代表的なデメリットは以下の3点です。
座席が自由になることで、「毎日どこに座るか考えるのが面倒」と感じる社員も少なくありません。考える手間を省くため、結果として毎日同じ席に座るようになり、フリーアドレスの効果が発揮されないというケースがあります。こうした事態は、フリーアドレスの導入目的や運用ルールが社内に浸透していない場合に起こりがちです。
固定席では、備品や書類を自席に保管することが可能でしたが、フリーアドレスでは毎日異なる席を使うため、その都度持ち運びが必要になります。これにより、荷物の管理が煩雑になりやすく、業務効率に影響を及ぼす可能性もあるため、事前のルール整備が不可欠です。
固定席であれば、座席表などを通じて「誰が」「どこに」座っているのかを容易に把握できましたが、フリーアドレスではそれが困難になります。
メンバーの居場所が分からないと、以下のような場面で支障をきたすことが想定されます。
こうした小さなコミュニケーションロスが積み重なることで、結果としてミスの増加や生産性の低下につながる恐れもあります。「そのうち慣れるだろう」と軽視するのではなく、フリーアドレスで生じやすい課題をふまえて、適切な対応策を講じることが重要です。
下記調査レポートでは、フリーアドレスで仕事をしている現場のリアルな反応が確認できます。導入時の対策を検討する際の参考として、ぜひご覧ください。
フリーアドレスに伴うデメリットを最小化するためには、制度設計と運用の工夫が欠かせません。具体的な対策とポイントを解説します。
社員がフリーアドレス導入の目的を理解できていない場合、形骸化や形だけの運用に陥る可能性があります。「なぜフリーアドレスを導入するのか」「どのような組織的効果を目指すのか」といった意図を明確にし、共有することが成功への鍵となります。フリーアドレス自体は目的ではなく、その導入によって解消したい課題や、こうありたいという姿が企業ごとにあるはずです。それらを明確にし、制度の背景や目指すゴールを社員に理解してもらうことで、個々人の行動も目的に即したものとなるでしょう。
同じ席を使い続けることで起こる“固定席化”を防ぐには、「毎日異なる席に座る」といったルールを設ける方法が有効です。
ただし、「毎回席を選ぶのが面倒」と感じる社員も想定されるため、くじ引きやルーレット形式など、選択を自動化する仕組みを採用する方法もあります。ルールは現場の声を反映しながら柔軟に見直し、継続的に浸透させていきましょう。
メンバーの居場所が分かりにくいというデメリットを解消するためには、位置を可視化できる座席管理ツールの導入がおすすめです。いつでも居場所がわかることで声をかけやすくなり、対話のハードルを下げることができます。小さな声かけや相談がしやすくなることで、新たなコミュニケーションの創出につながります。
テレワークでも出社でも、
在席管理ツールなら
持ち運びが必要な紙書類が多いと、席の移動が物理的にも心理的にも負担となります。また、書面で上司や担当者にサインやハンコを貰うために、社内を探し回るといったことも起こりやすくなります。可能な範囲で業務のシステム化・電子化を進め、紙の使用を減らすことがスムーズな運用につながります。どうしても紙での管理が必要な場合には、保存場所や共有ルールを明確にしておきましょう。
所有物の管理が課題となる場合は、業務内容に応じた収納アイテムを準備することが有効です。業務によって必要な備品や書類を精査し、それに見合った収納方法を設計するとよいでしょう。デスクに置くべきもの、必要な時のみ持ち運んで使用するのが適しているものなどを整理してから、収納方法や場所を決めます。また、バッグなどを掛けられるフックをデスク周辺に設置しておくと、利便性が向上します。
部署やチーム単位で管理されていた備品(封筒、筆記用具、テープなどの文具類)を全社で一括管理することで、社員個人の持ち物を減らし、座席移動のしやすさを高めることができます。加えて、オフィス内の収納効率向上やクリアデスク(机上を常に整えておくこと)の実現にもつながるでしょう。
フリーアドレスは、組織に柔軟性をもたらし、省スペースや部門間の交流促進など多くのメリットを期待できる施策です。一方で、運用次第では、かえって業務効率やコミュニケーションに支障を来す可能性も否定できません。
こうしたリスクを避けるためには、制度の「目的」と「運用ルール」を明確にしたうえで、実情に即した仕組みを整備することが不可欠です。たとえば、座席管理ツール「せきなび」を活用すれば、社員の所在が可視化され、日々のコミュニケーションを支えるインフラとして機能します。
制度の形にとらわれるのではなく、自社の業務や文化に合った運用を模索することが、働きやすい職場づくりの第一歩となるはずです。
株式会社アスマーク 営業部 Humap事業G