職場で起こるハラスメントの種類ー企業が取るべき対応と対策ー

この記事を読む方の中には「職場でハラスメント被害の通報を受けたが、判断が難しい」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。

そこで今回は、ハラスメントの境界ラインと通報を受けたあとの対応についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

ラスメントとは?

ハラスメントとは「いじめ」「嫌がらせ」と訳され、広い意味で「人権侵害」とも言われます。人が嫌がる行為・言動をして、不快な思いをさせることです。

企業においては、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)によりハラスメント防止措置が義務化されました。

場で起こるハラスメントの種類と一覧

職場で起こる主なハラスメントを10種類、順にご紹介します。

  • パワーハラスメント(パワハラ)…役職・スキルなど上下関係による嫌がらせ
  • セクシャルハラスメント(セクハラ)…性的発言・接触などのこと
  • マタニティハラスメント(マタハラ)…妊娠・出産を理由に不利益を与えること
  • アルコールハラスメント(アルハラ)…飲酒にまつわる嫌がらせ
  • スモークハラスメント(スモハラ)…喫煙者が非喫煙者に対してする嫌がらせ
  • セカンドハラスメント(セカハラ)…ハラスメント行為を相談したあとの嫌がらせ
  • テクノロジーハラスメント(テクハラ)…IT機器が苦手な人への嫌がらせ
  • リストラハラスメント(リスハラ)…退職へ追い込む嫌がらせ
  • ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)…性別に対する固定観念を理由にした嫌がらせ
  • エイジハラスメント(エイハラ)…就業年齢の違いを理由にした嫌がらせ

セクハラは男女雇用機会均等法、マタハラは育児・介護休業法など、一部のハラスメントは、パワハラ防止法だけでなく、それぞれに合った法律も適用されます。

ラスメントが起こる理由

ハラスメント行為が起きる理由は、個人を要因としたものと、組織風土を要因としたものに分かれます。

個人を要因としたもの

個人を要因としたハラスメント行為は、ハラスメントに対する知識や認識不足に起因することが多いです。

例えば、仕事内容に関して注意するとき「お前はダメだ」と人格を否定するような発言をしてしまうと、パワハラの中の「精神的な攻撃」にあたる可能性があります。注意する際は「書類のこの部分の書き方が良くない」など、『仕事のやり方・内容』にクローズアップした言い方に変えるだけで、ハラスメントは防げます。これは注意方法を知らないために発生するハラスメントです。

もう一例ご紹介すると、ベテランの部下から若手上司への暴言等もパワハラにあたる可能性があります。パワハラの定義の一部に「優越的な関係を背景とした言動」とありますが、これは役職ばかりではなく、仕事の知識・スキルや人数的優位も「優越的な関係」に含まれます。
こういったことを知らず、部下から上司にやることはパワハラにはあたらないと勘違いしているとハラスメントを起こしてしまう危険があります。

このように、知識・認識不足がハラスメントを招く個人要因です。

組織を要因としたもの

組織を要因としたハラスメント行為は、企業風土や運営方法など、組織の問題に起因します。例えば、閉鎖的な人間関係の職場へ中途採用者が入ってきて、意見をしたら、次の日から嫌がらせを受けるようになった場合は、組織風土に原因があります。

また、個人主義の会社がコミュニケーションを取り出したとき、個の違いを人格否定と捉えてしまい、ハラスメントを起こすケースがあります。

このように、組織風土を要因もハラスメントの要因となります。

ラスメントの境界ラインは?

同じ行為をしても、相手との関係性や受け取り方によってハラスメントになるか否かは変わってきます。

 

しかしながら、代表的なハラスメントについては、その定義や行動類型が定められているものもあります。

今回は例として、パワハラについてご説明します。

パワハラとは、3つの要素を満たした上で行われる言動で、主に6種の行動に分類されます。パワハラの要件・行動は以下の通りです。

パワハラの3要件

パワハラの要件は、被害者との関係性や目的などを指します。

  • 優越的な関係を背景とした行為
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた行為
  • 従業員の就業環境が害される行為

上記の要件を全て満たした「業務上」の行為がパワハラです。

 

主なパワハラの種類

厚生労働省が主なパワハラの種類として示した6類型は以下のとおりです。

  • 身体的な攻撃…殴る、蹴る、ものを投げつける
  • 精神的な攻撃…脅迫、名誉棄損、侮辱
  • 人間関係からの切り離し…1人だけ別室で隔離、無視
  • 過大な要求…仕事の妨害、過度な業務量を押し付ける
  • 過小な要求…能力とかけ離れた過小な業務の指示、何もさせない
  • 個の侵害…私的なことに過度に立ち入る

 

先に述べた通り、同じ行動をしたとしてもハラスメントには当てはまるケースもあるので、慎重な判断が必要です。具体的な事例はこちらをご参照ください。

コンプライアンス強化の指標については以下をご参照ください。
ハラスメントのグレーゾーン、パワハラの境界線を事例から解説

ラスメントに対して企業が取るべき対応

ハラスメント行為の通報を受けたら、企業がとるべき対応は以下の流れになります。

  1. 1.事実確認…被害者・加害者・関係者へヒアリング
  2. 2.調査報告書の作成…ヒアリング内容をまとめた報告書を作成
  3. 3.ハラスメント有無の判断…ヒアリング内容を元にハラスメントの有無を判断
  4. 4.被害者への対応…被害者への賠償、配置転換、謝罪など
  5. 5.加害者への処分…被害者への謝罪、配置転換、懲戒などの処分
  6. 6.再発防止策の策定…ハラスメントの原因分析、再発防止策を策定
  7. 7.従業員周知・教育…今回のハラスメント対応を踏まえて教育研修や周知対策を実施

 

中でも、事実確認と被害者への対応は、慎重に行いましょう。不備があれば、後々訴訟トラブルなどに発展する可能性があるためです。また、ヒアリング対象者全員に対し、プライバシーに配慮する旨を伝える必要があります。

ラスメント防止のための対策

ハラスメント行為は、何もしなければなくなることはありません。そこで、企業が取るべき対応は6つあります。

  • 社内規定の改定
  • 定期的な教育・研修
  • 相談窓口の設置
  • 通報後の迅速な事実関係確認
  • 再発防止策検討
  • 定期的なハラスメントチェック

 

ハラスメントに対する姿勢を見せるには「事業主自ら研修を実施する」「ハラスメントチェックによる監視体制を作る」などが大切です。通報後の事実関係確認は「被害者・加害者を別室でヒアリングする」「セクハラ事案は同性がヒアリングする」などプライバシーに配慮しなければなりません。

また、相談窓口を内部に設ける場合、担当者への教育や制度作りをしっかりと行わないと、セカンドハラスメント(勇気を出して相談したにも関わらず、逆にバッシングを受けたり、嫌がらせを受けたりするなどの二次的被害)がおこる可能性もあります。「CHeck」などのサービスを活用し、相談窓口を外部委託すると、プロの相談対応によりセカンドハラスメントを防ぎつつ、ハラスメント行為の早期検知率があがるためおすすめです。

とめ

職場では、さまざまなハラスメントが起こり得ます。中でも、パワハラ・セクハラ・マタハラは身近な存在です。

ハラスメントが発生する原因は、個人を要因とした認識不足、組織を要因とした組織風土の双方にあります。そのため、どちらか一方ではなく、双方の原因を踏まえたハラスメント対策をとる必要があります。具体的には以下の6項目です。

  • 社内規定の改定
  • 定期的な教育・研修
  • 相談窓口の設置
  • 通報後の迅速な事実関係確認
  • 再発防止策検討
  • 定期的なハラスメントチェック

ハラスメント防止策を定期的に行い、気持ちのよい職場環境を目指しましょう。

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G

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