前回、人事部門の役割についてご紹介しました。今回は、経営層や他部門が人事部門に対して期待することとしてどんなことがあげられるのか、ということについてふれたいと思います。
代表取締役 永見 昌彦
近年、「事業戦略から鑑みて、競合他社との差別化・優位性を人事面から構築する」こと、すなわち「戦略人事」を意識する企業が増えています。そういった状況において人事部門に対して期待することとは何でしょうか?
最初にあげられることは、企業の「ヒト、モノ、カネ・情報」という経営資源のうち、「ヒト」に大きく関与してビジネスの成功を支えることです。
例えば、企業は社員に対して、なぜ研修プログラムを提供するのでしょうか?それは、社員が業務を遂行するスキルを身につけて、それを使って適切に業務ができるようにするためです。もちろん研修プログラムを受講するだけで完結するものではないので、実際に使ってみるための機会(いわゆるOJTや実務そのもの)や、その結果どうだったのかを評価することで個人・組織の成長をサポートしつつ給与・賞与に反映させています。
また、既存社員の育成だけではなく、外部からその会社にとって適切な人材を採用するため、どんな人材が必要なのかを分析した上で実際に社外から調達することが人事部門に求められています。
さらに、優秀な人材がいたとしても、同業他社・同職種と比較して報酬面が弱い(低い)と、他社に人材が流出するおそれがあります。そのために給与サーベイを行い、マーケットの中で優位を保てる報酬を維持することも人事部門が行っていることです。
社員がビジネスで成功する、すなわち成果を出すために、様々な人事制度を用意している企業は多いです。それぞれの企業にあった制度を導入することは重要なことですが、それ以上に重要なことは、時代・環境・社員のニーズなどの変化に応じてその制度を見直し、修正・変更・廃止・拡張することです。これがなされないと、企業の状況や社員のニーズからずれたものとなります。
企業に導入されている制度の見直しや、これから導入を検討している制度については他社でどのようなものなのかを掌握しておくことも人事部門に期待されていることです。他社の制度をそのまま適用することは難しいかもしれませんが、より自社に合った形にカスタマイズするならば、とても参考になります。
人事部門に期待されていることは、「採用」「人材育成」「労務」「人事企画」「HRビジネスパートナー」といった人事部門における各担当の中だけでは完結しないことが多いと思います。人事部門に複数のメンバーがいるならば、チームとして連携して対応することで、ヒトの側面からビジネスの成功に貢献していくことが重視されています。