マタハラとは?職場で起こるマタハラの事例と予防策を解説

この記事を読む方の中には

「マタハラとは?どんなことが法律に抵触するの?」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。

そこで今回は、マタハラの事例と予防策についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

タハラ・パタハラとは?

マタハラはマタニティハラスメント、パタハラはパタニティハラスメントの略です。

妊娠出産や育児に関連するハラスメントのことをいい、女性に対するものをマタハラ、男性に対するものをパタハラと呼びます。

パタハラは男性の育児参加が増えてきた近年出てきた言葉で、「maternity=妊娠中の、母性」に対応し「paternity=父性」の単語が使われています。

嫌がらせの種類は大きく分類して、「産休・育休を取得することに対する嫌がらせ」「つわり・妊娠中などの状態に対する嫌がらせ」に分けられます。

 

 

タハラの定義と境界線

マタハラの定義

厚生労働省が公表したハラスメント関連資料「ハラスメント対策パンフレット・リーフレット」によれば、職場におけるマタハラの定義は、職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産、育児休業等の利用に関する言動)により、

  • 妊娠、出産した女性労働者
  • 妊娠・ 出産に伴う休業、育児休業等を申出・取得した男女労働者

の就業環境が害されることとしています。

※育休取得に起因する男性労働者へのハラスメントは、「パタハラ」

就業環境が害されるとは、悪口・左遷・降格・解雇・退職を強いられる、産前産後休業・育児休業制度の利用を拒まれる、などの嫌がらせを受けることです。

 

法律上の禁止事項

法律でも2019年の法改正以降、以下のように定められています。

  • 産前6週以内の産休取得を拒んではならない(労働基準法65条1項)
  • 「本人の意志にかかわらず」産後6週以内の女性を働かせてはならない(労働基準法65条2項)
  • 産後6週間~8週間の女性がまだ職場復帰を希望していない場合は、就業させてはならない(労働基準法65条2項・同条同項ただし書)
  • 事業主がマタハラ防止策を講じなければならない(男女雇用機会均等法11条の3第1項、育児・介護休業法25条第1項)
  • 妊娠・出産・育児 休業について相談したこと等を理由とする不利益な取扱いをしてはならない(男女雇用機会均等法11条の3第2項、育児・介護休業法25条第2項)。

上記に違反する行為は、明確にマタハラにあたるのみでなく、法律違反ということになります。

 

マタハラの境界線

とはいえ、妊婦やおなかの子の安全や健康への配慮の観点から、仕事量や業務内容等を調整した方がいいのでは?と思うこともあるでしょう。

業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。 

この点、「業務上の必要性」とは、どこまでが必要といえるのか、問題となるでしょう。

例えば、産前後休業の時期を調整するような行為について、調整が可能かどうか女性労働者の意向を確認することはマタハラには該当しません。しかし、一方的な通告はハラスメントとなる可能性がありますので注意する必要があります。マタハラに該当しないようにするためには、女性労働者の意向をチェックすることがポイントです。

場で起こるマタハラの事例

職場で発生するマタハラの例をご紹介します。

いやみや悪口を言う

マタハラで最も多いケースが「いやみ・悪口」です。「周りが迷惑している」というフレーズを言われたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。他にも「使い物にならない」「まだ新人なのに産休をとるのか」など、いやみや悪口を言い、産休・育休制度を使いにくくするケースがあります。

また「妊婦は座ってばかりはダメ」「子育てはこうしないと」といった、妊婦・育児ママに対する注意もマタハラにあたる可能性があります。妊娠中や育児中の事情はそれぞれ違います。また、時代によって正しいとされる育児方法なども変わってきています。自らの考え方を押し付けるような発言は、ハラスメントと認識される可能性があるため注意しましょう。

降格・解雇・配置転換

妊娠や産休・育休等の取得を理由とする降格や不利益な待遇変更は、違法です。妊娠・出産を理由にした配置転換・待遇変更などはよく聞く話です。ですが、ここで違法と判断されるのは、一方的な場合に限ります。本人と相談し納得のうえ、育児と仕事のバランスを取るために、降格・退職・配置転換をする等は違法ではありません。

ここでありがちなのが「〇〇さん、大変そうだから別の部署へ異動したら?」という発言です。善意のつもりでも、本人が希望していないにもかかわらず、異動を強要するのはマタハラに該当します。双方合意があるかどうかがハラスメントの境界線なので、認識しておきましょう。

タハラが起こる理由

マタハラは、なぜ起こるのでしょうか?その理由は主に2つです。

仕事への影響を懸念するから

妊娠・出産などを理由に会社を休むと、仕事への支障が出ることは否めません。中小企業など、従業員が少ない職場であればあるほど、他のメンバーへの負担が増えます。負担が増えることに対する不満がマタハラの原因です。

妊娠・出産に対する理解がないから

高度経済成長期の考え方は「長時間労働は美徳」「結婚したら女性が仕事を辞める」といったものでした。このような考え方のまま働いている上司・経営者などがいる職場は、マタハラが起きやすくなります。

業がとるべきマタハラの予防策

明確な境界線があいまいなマタハラに、予防策はあるのでしょうか?企業がとるべき予防策について、厚生労働省が定めた対策をご紹介します。

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主は、就業規則・規定文書へ以下のことを記載する義務があります。

  • 妊娠・出産・育児休業、介護休業等に関するハラスメント行為の内容
  • 妊娠・出産等に関する否定的な言動が、マタハラの発生原因・背景になり得ること
  • 「ハラスメントを行ってはならない」の事業主方針
  • 妊娠・出産に関する制度、育児休業・介護休業等の制度が利用できること

就業規則に記載した内容は、ハラスメント研修・社内サイトなど、目に入る場所へ提示し、従業員への周知活動をしましょう。浸透状況を計測するためには「CHeck」などのハラスメント対応パッケージを利用すると、スムーズに計測できます。

相談体制の整備

マタハラ被害を受けた・目撃した、また発生の恐れがある場合や、マタハラかどうか判断に迷うような場合でも、気軽に通報・相談できる相談窓口を整備する義務があります。

また、窓口を設置してある旨を従業員へ周知するのも義務の一環とされています。

相談窓口は、社内に設ける場合と、社外へ委託するケースがあり、また、マタハラ専用ではなく、パワハラ・セクハラなどと1本の相談窓口を設けるのが望ましいとされています。

 

ハラスメントへの迅速かつ適切な対応

  •  事実関係を迅速かつ正確に確認する
  •  事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行う
  •  事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行う
  •  再発防止に向けた措置を講ずる

ハラスメント発生・発覚後の対応は、極力早く行うことが義務付けられています。時間が経過すると、問題が形骸化するうえに、次に同じトラブルが発生する可能性があるためです。ハラスメント対応の中で、被害者へのケアを最優先とし、加害者への処分や、再発防止策を全体に周知します。

原因や背景となる要因を解消するための措置

前述のように、マタハラは仕事への影響懸念や、妊娠・出産への理解不足が原因で発生します。事業主は、こういった原因や背景要因を解消するための措置を行う必要があります。

具体的には、1人お休みしても作業を止めなくてよい運用フローの作成、担当業務の配分などを事前にシミュレーションする、妊娠・出産への理解を深めるための研修や周知を行うなどがあります。

当事者等のプライバシーの保護のための措置の実施と周知

事業主は、ハラスメント通報後の調査・対策措置を講じる段階で、当事者のプライバシー保護に必要な措置をとらなければなりません。

具体的には、相談者や相談内容は限られた相談担当者以外には漏らさないようにするのはもちろんのこと、ヒアリングする部屋は個室にする、相談を受ける際やヒアリングのときはプライバシーを配慮している旨を社内報・公式サイトなどで広く周知するなどがあります。

相談・協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発

事業主は、ハラスメント相談・協力等を理由に不利益な取扱いをしてはなりません。不利益な取扱いとは、相談を理由とした降格・プロジェクトから外す等の措置です。そして、不利益な取扱いをしない旨を社内報・公式サイトなどで広く周知しなければなりません。

とめ

マタハラについてご紹介しました。妊娠・出産・育児を理由に不快な扱いを受けるマタニティハラスメント対策として、企業は主に6項目の対策が必要です。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • 原因や背景となる要因を解消するための措置
  • 当事者等のプライバシーの保護のための措置の実施と周知
  • 相談・協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発

日頃からマタハラ対策を行い、気持ちのよい職場を目指しましょう。

 

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G

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