ハラスメント研修の失敗例4選

相手の意に反する行為によって不快にさせたり、相手を傷つけたり脅したりすることを「ハラスメント」とよび、職場環境にもネガティブな影響を及ぼします。

ハラスメントにはパワハラやセクハラ、マタハラなど、いくつかの種類がありますが、その中でも「組織などでの地位や人間関係などの優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて他者に嫌がらせや苦痛を与えたりする」パワハラに関しては、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が2019年5月に成立したことによって、事業主(企業)は職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務となりました。
※これは大企業においては2020年6月に施行されており、中小企業に対しても2022年4月から適用されます。

「必要な措置」の中にはパワハラ防止の啓発が含まれていることから、ハラスメントをテーマにした研修を企画・実施する企業も増えているでしょう。ただ、こういった研修は実施さえすればよいというものではありません。
今回は、ハラスメント研修における失敗に陥りやすいケースとそれを回避するにはどうすればよいのかを考えてみたいと思います。

失敗例1:研修の目的がはっきりしていない・伝わっていない

ハラスメント研修に限ったことではありませんが、研修を実施する目的が明確ではない、あるいは、その目的を受講者などの関係者に周知していないと、なぜこの研修に参加するのかがわからず当事者意識が持てないため、直前のキャンセルや他業務を優先して途中で退席する傾向が高くなります。

研修は通常の業務では身につくにくい内容や体系的に理解した方がよい内容などを、一定の業務時間をさいて実施するものです。そのため、「なぜ実施するのか」「受講した結果、どういうことができるようになる/理解してほしいのか」といったことを明確に伝えましょう。
また、研修の目的が「社内でハラスメントが起こらないようにする」といった曖昧なものではなく、より具体的な内容にする必要があります。
例えば、スタッフに対しては「ハラスメントとはどのようなもので、もし自分や周囲がハラスメントを受けていると感じた場合どうすればよいのか、周囲にハラスメントを行っている人がいた場合にどうすればよいのかを知ること」といった受講者にとって明確な目的をあげることになります。

ハラスメント研修に関しては、経営層から「とにかく実施すべき」といった指示によって実施されるケースもありますが、研修担当者はそのまま伝えるのではなく、社員にとって有益な形になるように落とし込む工夫が求められます。

失敗例2:内容の関連性が低い

研修の内容がハラスメントに関する法律に関する解説や、実際にあった判例などばかりを実施されても、法律に日常的にかかわっていない人にとっては難しく解りづらいものとしてとらえるでしょう。

もちろん、そういった内容も研修のコンテンツとして盛り込むべきではあるものの、「それだけ」だと「では、自分たちの会社ではどうすればよいのか」といったことはわからないと思います。そのため、社外の方に講師を依頼する場合は、自社の状況や認識している問題点などを事前の打ち合わせの段階などで詳細に伝えた上で、それにあった内容に研修を構成してもらうことが肝要です。研修内容が固定しており、会社にあわせたアレンジができないといった場合は、効果も期待できないため、依頼する社外講師や研修提供ベンダーの変更を真っ先に検討すべきでしょう。

失敗例3:受講後のフォローがない

研修は実施すればよいというものではなく、その後のフォローアップがとても重要です。
参加した方の行動変容について確認・サポートをする必要があるからです。具体的な対応事項としては、研修が終了してから一定期間(3ヶ月程度)経過後に、「研修で習得した内容をどうやって職場に活かしているのか」といったことをテーマにした数問程度のアンケートや、場合によってはヒアリングなどを行うことになります。研修実施以外のことを全くやらないならば、研修目的が達成できたのかどうかもわからないので、社員にとって有益な研修を提供することはほぼできないでしょう。

失敗例4:スピーカーが専門家ではない

内容が適切なものであったとしても、それをメインで伝える講師の知識が伴っていなければ、受講者からの質問に対する回答内容も不十分になることが推察されます。

特にハラスメントをテーマにする場合は、内容に熟知しているだけではなく豊富な事例を掌握しており、ハラスメント関連のトラブルへの対処を実際に行ったことがある専門家に依頼すべきでしょう。研修提供ベンダーの講師がハラスメントに関する専門家であるとは限らず、実際にハラスメント問題が起こったときに対応した経験が無いということは十分にあり得ることです。
また、顧問契約をされている社労士や弁護士も専門分野はさまざまなため、場合によっては適任ではないことも考えられます。

 

 

最後に

研修を行う前に、どういった場合に失敗するのかといったことを理解し、それを避けることで効果の高いハラスメント研修が実現できるでしょう。また、現状把握から研修実施までがすべてまとまっているCHeck(当事者意識を持たせたハラスメント防止サービス)のようなサービス活用も検討してみる余地もあるかと思います。

執筆者

アルドーニ株式会社

代表取締役 永見 昌彦

外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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