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この記事を読む方の中には、「派遣社員を長期間受け入れたいが、どうしたらよいのか?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
今回は、派遣法の3年ルールについて解説します。ぜひ参考にしてください。
3年ルールとは、派遣スタッフを同じ事業所や部署で受け入れられる期間が最大3年であることを定めた制度です。これは労働者派遣法第40条で規定されています。このルールには、「事業所単位」と「個人単位」の2つの適用範囲があります。
事業所単位の制限とは、ひとつの事業所で派遣スタッフを受け入れられる期間が最大3年と定められた制度です(派遣法第40条の2)。
「事業所」とは、事務所や工場、店舗などの独立した拠点を指します。企業に複数の支店がある場合は、東京支店と福岡支店は別の事業所とみなされます。
例えば、2年間勤務している派遣スタッフがいる事業所で、新しい派遣スタッフを追加したい場合、新たな派遣スタッフとの契約期間は1年となります。
個人単位の制限とは、3年ルールの満了日を超えて、1人の派遣スタッフを同じ事業所・同じ部署で受け入れることを禁止する制度です(派遣法第40条の3)。このルールは、派遣スタッフと部署を単位とする点がポイントです。
このルールは、期間の定めがある雇用契約を締結している派遣スタッフを対象にしています。一方で、無期雇用契約のスタッフは本ルールの適用外です。有期雇用契約のスタッフを受け入れる場合は、通常3ヵ月などの一定期間ごとに契約を更新します。
抵触日とは、3年ルールの適用期間が満了した翌日のことを指します。
例えば、2024年10月1日から1人の派遣スタッフを受け入れた場合、2027年9月30日に満了日を迎え、翌日の2027年10月1日が抵触日となります。
抵触日は、事業所単位と個人単位の2種類があり、先に訪れる方を優先します。派遣先企業が抵触日を通知する際は、派遣会社へメールまたは書面で行うことが義務づけられています。また、派遣会社は、派遣スタッフと契約を結ぶ際に抵触日を通知する必要があります。
3年ルールに違反した場合、派遣元企業は派遣法第61条第3号に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、行政指導を受ける恐れもあります。
さらに、派遣先企業も行政指導の対象となり、指示に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。
ただし、3年を超えて派遣スタッフを雇用し続けた場合でも、「労働契約申し込みみなし制度」が適用され、派遣先企業が直接雇用を申し込んだとみなされるケースでは、罰則が適用されない場合もあります。
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期間の定めがある派遣スタッフでも、次のいずれかに該当する場合、3年ルールは適用されません。
・無期雇用契約の派遣スタッフ
期間がない契約のスタッフを受け入れた場合は、個人単位だけでなく事業所単位の制限も適用外となります。
・派遣可能期間の満了日時点で60歳以上
「60歳以上」は、契約の開始時ではなく、3年経過時点の年齢で判断されます。
・有期プロジェクトに従事
有期プロジェクトとは、事業の開始・転換・拡大・縮小または廃止など、終了予定が明確に定められている業務のことを指します。
・日数限定業務
1ヵ月の勤務日数が10日以下、かつ通常労働日数の半分以下を満たす場合に該当します。
・出産、育児、介護休業の代替
出産・育児・介護休業の代替で派遣されたスタッフは、該当社員の休業が終了する(復帰する)日まで延長が可能です。
・部署異動
部署異動をすると個人単位の制限がリセットされるため、3年ルールの適用外となります。ただし、抵触日までに事業所単位の制限を延長する手続きを完了しておく必要があります。
3年ルールと5年ルールには、対象者と適用内容の違いがあります。
5年ルールとは、次の条件を満たせば、労働者の申し込みによって有期雇用から無期雇用に転換できる制度です。これは労働契約法によって定められています。
5年ルールは、パートや契約社員などの有期雇用の労働者が対象です。一方、3年ルールは派遣スタッフに適用される制度です。5年ルールを適用するには、スタッフから派遣元企業への申し出が必要になります。
3年ルールの目的は、派遣スタッフの雇用を安定させることです。
以前の派遣法では、専門性の高い26業種とそれ以外の業種で雇用可能期間に違いがありました。しかし、派遣スタッフは契約終了によって仕事を失うことが多いため、立場が弱く、雇用の不安定さが問題視されていました。そこで、3年ルールを設けることで、派遣スタッフの雇用を安定させ、キャリアアップを促進するとともに、派遣労働者の不当な待遇を防ぐことを目的としています。
また、派遣スタッフを多用して、企業が正社員の人数を減らし過ぎた結果、人材不足に陥ることを防ぐという側面もあります。
派遣社員を採用した経験のある人事担当者を対象とした当社の調査では、派遣を一時的な人員の補充としてのみ捉えるのではなく、さまざまなメリットを感じて利用している企業が多く見られました。
3年ルールには、企業と派遣社員の双方にとってメリットとデメリットがあります。
<メリット>
・経験のある優秀な人材の確保
派遣スタッフの中には即戦力となるスキルを持つ人が多く、採用活動を行わずに優秀な人材を確保できるメリットがあります。
・担当者の変更による属人化防止
派遣スタッフの入れ替わりがあることで、特定の人にしかできない業務が減り、業務の標準化が進むというメリットがあります。
<デメリット>
・スキルを身に付けた人材の継続雇用ができない
派遣スタッフが3年を超えて同じ部署で働くことはできないため、スキルや経験を積んだ人材が離れてしまう可能性があります。
・新規採用や引継ぎが手間
派遣スタッフの入れ替わりが発生するたびに、新規採用や業務の引継ぎが必要になり、その負担を感じる企業もあります。
人材の確保と引継ぎが手間と感じる場合はあるものの、即戦力の確保、業務の属人化防止といった特徴は大きなメリットと言えるでしょう。
<メリット>
・キャリア計画を立てやすい
派遣は事前に契約期間が決まっているため、計画的にキャリアを積むことが可能です。
・直接雇用のチャンスがある
派遣スタッフは3年間勤務することで、その企業の仕事や文化に適応できるため、直接雇用のチャンスが得られる可能性があります。
<デメリット>
・次の仕事が見つからなければ収入がなくなる
契約期間が決まっているため、次の仕事が見つからない場合、収入が途絶えてしまうリスクがあります。
・専門知識が習得しにくい
派遣先の企業によっては、専門的な業務や責任のある仕事を任せてもらいにくいため、スキルアップの機会が少なくなることもあります。
派遣スタッフに優秀な人材がいる場合、企業としては「3年ルールを超えて長期にわたり勤務して欲しい」と考えるケースもあります。3年を超えて派遣スタッフを雇用したい場合、どのような方法があるのでしょうか。
派遣スタッフを別の部署へ異動させることで、個人単位の制限を回避し、3年を超える受け入れが可能になります。部署とは、契約によって、部・課・グループなどがあり、指揮命令権を持つ組織を指します。ただし、この場合も事業所単位の制限があるため、期間延長手続きが必要となります。
派遣スタッフが派遣元企業と無期雇用契約を締結すれば、3年ルールの対象外となり、受け入れが可能になります。企業にとっては、派遣スタッフと長期間にわたって契約できる反面、正社員登用の機会を失う可能性もあるため、慎重に検討しましょう。
派遣スタッフを直接雇用することで、3年ルールの制限を受けることなく雇用を継続できます。ただし、派遣会社によっては直接雇用への切り替えに関するルールを設けている場合があるため、事前に派遣元企業へ相談しておくとよいでしょう。
事業所単位の制限に抵触する場合は、労働者への意見聴取を行うことによって期間の延長が可能です。抵触日の1ヵ月前までに、労働組合または過半数の労働者代表へ意見聴取を行う必要があります。もし反対意見が出た場合は、企業側が改めて説明を行い、労働者の理解を得る努力をすることが求められます。その上で、意見聴取した記録を労働者と派遣会社へ周知し、必要に応じて対応を検討することになります。
同じ部署で3年を超えて派遣スタッフを受け入れたい場合は、新しい派遣スタッフと交代する方法もあります。ただし、この方法を取る場合でも、事業所単位の延長手続きを事前に済ませておく必要があります。
3年ルールとは、有期雇用契約の派遣スタッフを受け入れられる期間を最大3年と定めたルールです。企業はこのルールを正しく理解し、適切な運用を行うことで、安定した人材確保と業務の効率化を実現できます。
派遣スタッフの適切な活用は、企業の成長を促進する重要な要素といえます。
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3年ルールを正しく理解し、自社のニーズに合った派遣戦略を進めていきましょう。
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