組織を強くする!心理的安全性と従業員エンゲージメント

心理的安全性とは

「生産性が高い組織は心理的安全性が高い」という社内調査結果*Google社が発表したことをきっかけとして、「心理的安全性」に関して多くの企業でも注目を集めるようになりました。

*「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれたGoogle社内にて行われた調査は、成功し続けるチームに必要な条件として何があるのかを特定することを目的としていました。生産性が高い働き方をするチームの特徴を4年かけて分析した結果、個々の能力が高い人材で構成されているといったメンバー構成よりも、チームの協力体制がどのような状況であるのかが重要であることがわかりました。「他メンバーが提案した多様なアイデアの活用がうまい」「ミスを理由に非難されることはない」といった心理的安全性の高さが、効果的なチームをつくる要因の一つであることが明示されたことによって、チームや組織の成長に欠かせないものとして「心理的安全性」が注目を集めるようになりました。

ビジネスにおける「心理的安全性」は、「相手の視線や思惑などを気にせずに、いつでも安心して自分の意見や希望を発言できる状態」のことを指します。

理的安全性が高いことによるメリット

心理的安全性が高いことは、組織にメリットをもたらします。具体的にはエンゲージメントが向上し、離職率の低下につながります。また、社員が遠慮せずに意見が言える環境のため、多種多様な意見やアイデアが生まれやすいです。社員間で良好なコミュニケーションをとることができるため有益な情報が共有されやすくなり、結果として、組織の生産性が向上します。

 

エンゲージメント向上への取り組みや測定方法については以下をご参照ください。
エンゲージメントを高めるために何をすべきか?具体的な対策を知る

理的安全性が低いことによるデメリット

反対に心理的安全性が低い場合、組織においてどのようなネガティブな影響があるでしょうか?ハーバードビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授によると、心理的安全性が低いことによって引き起こす不安や行動特徴として以下の4つを紹介しています。

  • 無知だと思われる不安
    メンバーに知らないことを質問したとき、「こんなことも知らないの?」と言われるのではないかと考えてしまうことです。気軽に質問や相談ができない環境においては、コミュニケーション量は減少していきます。
  • 無能だと思われる不安
    「こんなこともできないのか」と周囲に思われることに対して不安を覚えることです。些細な間違いなどを報告せずに隠し、自身の間違いを認めることができなくなります。
  • 邪魔をしていると思われる不安
    ミーティングなどの場において「この話題を出すべきなのか」と必要以上に気にしすぎることが不安の要因になり、本音で話す場が設けられず、チームワークが生まれにくくなります。
  • ネガティブだと思われる不安
    反対意見を述べることを、他者からネガティブに捉えられてしまうことに不安を感じることです。疑問や懸念を感じても発言を控えるようになり、建設的な議論ができなくなります。

    理的安全性を高める方法

    心理的安全性を高めるために具体的にできることは何でしょうか?3つあげたいと思います。

    心理的安全性が重要であることを周知する

    自社の事業や担当している業務が顧客や世間にとってなぜ重要なのか、そしてその事業を組織で推進する上で心理的安全性を高めるメリット・心理的安全性が低いことによるデメリットについて社内で共有しましょう。失敗や間違いは当たり前に発生することであって遠慮する必要が無いものであることや、そういった失敗や間違いから学べる点が多くあるため、失敗や間違いをおかすことをおそれなくてもよいことを、上層部からのメッセージとして何度も社員に伝えましょう。

    発言機会を設ける

    発言することそのものに慣れていないと、職場環境に関係なく自由に発言することは難しいです。そのため、チームメンバー同士や上司と1on1ミーティングを行い、業務のことから開示できる範囲でのプライベートまで、気軽に会話をすることから信頼関係を築くことも一つの方法です。あるいは、部門をまたがったメンバーが集まってディスカッションを行うワークショップなどを企画して、対話ができる機会をつくるのも良いでしょう。

    アサーティブなコミュニケーションを心掛ける

    相手を尊重しながら自分の要望や感情を伝えつつ、相手の発言に対して熱心に耳を傾けるようにしましょう。また、相手からの発言に対して質問することは、「私はあなたの言いたいことに関心があります」というメッセージを伝えるとともに、他の方がさらに発言しやすい雰囲気をつくることにもつながります。

    理的安全性の測定方法

    組織における心理的安全性に関しては、上述のエイミー・エドモンドソン教授が提唱する以下の7つの質問で測定することができます。

      1. 1.チームの中でミスをすると、たいてい非難される
      2. 2.チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
      3. 3.チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある
      4. 4.チームに対してリスクのある行動をしても安全であ
      5. 5.チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
      6. 6.チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
      7. 7.チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

    回答は5段階程度の選択肢を設けるとよいでしょう。ポジティブな回答が多いほどチームの心理的安全性が高い組織であると考えられます。

    測定・集計について不安な点がある場合や、他の項目もあわせて聴取したい場合には、専門知識のある企業に相談するのもおすすめです。

    とめ

    個人が自立し、組織・チーム内で安心して行動できる状態をつくることで事業や業務に集中できるようになり、結果として社員のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。

     

    執筆者

    アルドーニ株式会社

    代表取締役 永見 昌彦

    外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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