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ハラスメント対策に取り組んでいるにもかかわらず、「現場の実態が変わらない」と感じている企業は少なくありません。相談窓口の設置や研修の実施、社内ルールの整備など、必要な施策は一通り揃っているはずなのに、同じような問題が繰り返される背景には、制度と現場の間に見えにくいギャップが生まれている可能性があります。
こうしたズレが積み重なることで、対策そのものが本来の役割を果たさなくなる状態、いわゆる「形骸化」が起きてしまいます。制度としては整っていても、現場の認識や行動と噛み合っていなければ、期待された効果は発揮されません。
本記事では、ハラスメント対策の形骸化がなぜ起きるのかを紐解きながら、実効性を高めるための考え方を整理していきます。
ハラスメント対策の形骸化とは、制度や施策が存在しているにもかかわらず、実際の現場では十分に機能していない状態を指します。表面的には対策が整っているように見えても、従業員の行動や意識に変化が生まれていない場合、それは実効性のある取り組みとは言えません。
ここで重要なのは、「制度が使われていない」という結果だけを見るのではなく、その手前のプロセスに目を向けることです。なぜ制度が活用されないのか。その背景には、現場における認識や理解のズレが存在しているケースが少なくありません。
つまり形骸化とは、単なる運用上の問題ではなく、「制度と現場の認識が噛み合っていない状態」が原因だと考えられます。
では実際に、現場の理解度・認識はどの程度揃っているのでしょうか。
当社では、有職者1万人規模のアンケートモニターを対象に、コンプライアンス・ハラスメント調査パッケージ「CHeck」を用いた自主調査を実施しています。そのベンチマークデータからは、ハラスメントに対する理解が十分に浸透していない実態が見えてきます。

この数値が示しているのは、「約3〜4割はハラスメントを十分に理解していない」という現実です。特にマタハラは6割未満にとどまり、理解度のばらつきが大きい領域です。
ここで問題になるのは、理解不足そのものではありません。より本質的なのは、「判断できない状態が生まれている」という点です。
ハラスメント被害が起きたとき、誰かが「これは問題だ」と認識し、相談行動を起こしてもらうことで初めて、解決に向けた対応をすることができます。しかし、そもそもそれがハラスメントに該当するのか判断できなければ、誰にも報告・相談されない状態が続き、組織が把握することすらできず、被害者がただ泣き寝入りしてしまう恐れがあります。
結果として、
という状態が生まれます。この場合は、行為者自身も悪気がないケースも多いです。
相談窓口などの制度は存在していても、行為者・周囲の人も「ハラスメントだ」と認識できず、相談に至る前の段階で止まってしまう。この“見えにくい停滞”こそが、「あるだけ」の状態を生み、形骸化の入り口となります。
では、なぜこのような「判断できない状態」が生まれるのでしょうか。 その背景には、単一の原因ではなく、「いくつかのズレ」が重なっている構造があります。
多くの企業では、ハラスメントに関する研修や周知はすでに実施されています。しかし、その内容は定義やルールの説明にとどまりやすく、日常業務と結びついた具体的な判断基準まで落とし込まれていないケースが少なくありません。
その結果、「知識としては知っているが、実際の場面では判断できない」という状態が生まれます。
さらに、「昔は問題なかった」「この程度は指導の範囲」といった価値観の違いも、理解のばらつきを助長します。特にグレーゾーンの扱いが曖昧なままだと、判断は個人の感覚に委ねられ、組織としての基準が形成されません。
こうした状況では、ハラスメントに該当する可能性のある言動があっても、それが問題として扱われないまま蓄積されていきます。結果として、「対策はしているはずなのに、現場は変わらない」という状態が続き、制度の形骸化へとつながっていきます。
形骸化を防ぐために必要なのは、新たな制度を増やすことではありません。重要なのは、「理解の質」を高め、現場で判断と行動ができる状態をつくることです。
そのカギとなるのが、「自分ごと化」です。
ハラスメントを自分とは無関係なものとして捉えている限り、知識を得ても行動にはつながりません。一方で、「自分の言動はどうか」「この場面でどう判断すべきか」と考えられる状態になれば、認識と行動は大きく変わります。
そのためには、単なる知識のインプットではなく、具体的な場面を想定しながら考える機会が必要です。判断に迷いやすいグレーゾーンも扱うことで、現場での解像度は高まります。
また、理解は一度の施策で定着するものではありません。実態を把握し、課題に応じた教育を行い、その結果を検証する。この一連の流れを継続的に回していくことが、理解を行動へとつなげる土台になります。
では、この「自分ごと化」を現場で実現していくためには、どのような設計が求められるのでしょうか。 重要なのは、ハラスメント対策を単発の施策としてではなく、「理解→判断→行動」までを一体として捉えることです。 これは前章で述べた「ズレ」を解消していくプロセスとも言えます。 そのうえで、具体的には以下の3つのステップで設計していくことが重要です。
従業員へのアンケートやヒアリングなどを通じて、どこに認識のズレがあるのか、どの領域にリスクが潜んでいるのかを把握することで、初めて具体的な課題が見えてきます。
一般論ではなく、自社の実態に即したケースや状況を扱うことで、参加者は自分の業務と結びつけて理解できるようになります。これにより、単なる知識習得にとどまらず、「自分ならどう判断するか」という思考へとつながっていきます。
実施後の効果を検証し、必要に応じて内容を見直していくことが重要です。このサイクルを継続的に回していくことで、対策は徐々に現場へと浸透していきます。
こうした取り組みを通じて、ハラスメント対策は次第に「知っているだけのもの」から「現場で使える理解」へと変わっていきます。
制度を“存在させる”だけでなく、“機能させる”。そのためには、現場の実態に即した設計と、継続的な運用という視点が不可欠です。
こうした課題に対して有効なのが、「当事者意識」を軸にしたアプローチです。
アスマークが提供する「CHeck」は、ハラスメントおよびコンプライアンス対策において、“自分ごと化”を促すことに特化したサービスです。
「CHeck」は、ハラスメントやコンプライアンスリスクを可視化する調査と、当事者意識を醸成する研修を組み合わせることで、形骸化しがちな対策を実効性のある施策へと転換します。
調査機能であるCHeckリサーチでは、単なる現状把握にとどまらず、回答プロセス自体が理解促進につながる設計となっており、潜在的なリスクの可視化と意識啓発を同時に実現します。さらに、ベンチマークデータとの比較により、自社の立ち位置を客観的に把握することも可能です。
また、CHeck研修では、専門家による講義に加え、グループワークなどの参加型設計を取り入れることで、受講者が自ら考え、自身の行動を振り返る機会を提供します。これにより、「知っている」から「判断できる」への転換を促します。
また、事前アセスメントを活用し、個人ごとのリスクや傾向を可視化・フィードバックする研修メニューも用意されています。これにより、受講者は「一般論」ではなく「自分自身の課題」として内容を捉えることができ、流し聞きや他人事化を防ぎます。
調査と研修をを組み合わせることで、調査で明らかになった課題を起点に施策を設計し、その効果を検証しながら改善していく循環を構築できます。さらに、相談窓口の整備を含めた包括的な支援により、問題の早期発見と未然防止にもつながります。
ハラスメント対策を“やらされるもの”から“自分の問題として向き合うもの”へ。 その転換こそが、形骸化を防ぎ、実効性を高めるための本質的なアプローチです。
ハラスメント予防・
コンプライアンス対策なら
ハラスメント対策が形骸化する背景には、「制度があるのに機能しない」という問題だけでなく、「そもそも現場で認識されない」「判断されない」という、より根本的な課題が存在しています。
理解不足や価値観のばらつき、そして無自覚といった要因が重なることで、問題は表面化せず、結果として対策も機能しないまま停滞してしまいます。
だからこそ重要なのは、制度の有無や施策の数ではなく、現場で一人ひとりが“判断できる状態”にあるかどうかです。
そのためには、知識を伝えるだけでなく、自身の言動として捉え直す機会をつくり、「自分には関係ない」という認識を変えていく必要があります。
ハラスメント対策を“やらされるもの”から“自分の問題として向き合うもの”へ。 そして、“知っている状態”から“判断し、行動できる状態”へ。
この転換こそが、形骸化を防ぎ、実効性のある対策へとつなげるための本質的な一歩となります。

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