12月は多くの企業が繁忙期を迎え、忙しさによるストレスからハラスメントが発生しやすいと言われています。厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、シンポジウムの開催やポスターの掲示など、ハラスメント対策の広報・啓発活動をしています。
そこで今回は、改めて見直したい「ハラスメント対策」のポイントについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
ハラスメントとは、相手に不快な思いをさせる言動や行為のことです。具体的には、いじめや嫌がらせ、人格や属性に対する差別発言や、大勢の前での叱責、性的な接触などが含まれます。
近年では、顧客からの過剰なクレームやSNSを通じた誹謗中傷などを指す「カスタマーハラスメント」も注目されています。2024年12月に厚生労働省が開催する「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」では、カスタマーハラスメントがテーマとして取り上げられます。
ハラスメントには50種類以上のタイプがあるとも言われています。職場でよく見られるハラスメントの事例については、こちらの記事をご参照ください。
ハラスメント防止策として、企業が実施すべき施策を整理してみましょう。
従業員にとって、トップのメッセージは仕事を進めるうえで重要な指針となります。トップメッセージとして、経営陣から「ハラスメント対策は全従業員が“自分ごと”として取り組むべき課題である」というメッセージを発信しましょう。
この際、ハラスメント対策の必要性や、自社で行う具体的な施策もあわせて伝えることで、「従業員が互いに尊重し合う文化」を意識づけることにつながります。メッセージの内容に迷う場合は、厚生労働省が参考となるメッセージのひな形を用意しているので、活用を検討してみてください。
参考:厚生労働省_あかるい職場応援団_パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)参考資料(一部改訂)
ハラスメントに関する相談を受け付ける窓口を整備している企業は多いことでしょう。しかし、その運用が十分でない場合も少なくありません。以下のポイントを参考にしながら、自社の窓口が相談しやすい環境整備に繋がっているかを見直してみましょう。
ハラスメント被害者の多くは、窓口への相談が知れ渡ることによって、「二次被害」を受けることを心配します。例として、対面、オンライン、匿名など複数のチャネルを設けて従業員が選べるようにしておき、相談員のプロフィールや顔写真も周知しておくと、相談しやすい雰囲気づくりが期待できます。また、相談から解決までの流れや期間の目安を明確にして示すことで、解決への未来が見え、1人で悩む被害者も安心して相談できるでしょう。
担当する相談員は、労働組合のメンバーやカウンセラーなど数名を選任し、状況に応じた適切な対応ができるよう体制を整備しましょう。必要に応じて弁護士やメンタルヘルスの専門家を招致しておくと、被害者の安心感も増します。
ハラスメントが発生した際は、迅速かつ公正な対応が求められます。そのためには、事前に3点の準備をしておくことが必要です。
従業員からハラスメントの被害相談を受けたとき、最初に行うのが事実確認です。専任の担当者を選び、傾聴スキルやプライバシーの保護について定期的にトレーニングしておく必要があります。そして当事者や関係者にヒアリングを行う際は、双方のプライバシーに配慮し、公平性を担保した上で対応することが大切です。
対応フローは、加害者への対応だけでなく、被害者のケアや再発防止策の実行まで含めた具体的な手順を盛り込んで作成しましょう。
ハラスメント対応では、プライバシー保護を徹底することが従業員の信頼を得る鍵となります。次のような施策を実施することで、誰もが安心して相談できる環境を整えましょう。
プライバシーに配慮すべきことは誰しもが認識しているものの、「誰に」「何を」話してよいかは、人によって、ケースによって異なります。そのため、マニュアルを作成し、ヒアリング時の確認事項など、話すべきことを明確化しておくことが大切です。プライバシー保護に関しては、すべてを文書化して書面で残しておくと、万が一トラブル対策にもなります。
ハラスメントの再発防止策は、相談内容が事実であるかどうかに関係なく検討する必要があります。相談者がハラスメントと感じた背景には、職場全体に何かしらの課題が潜んでいることも多いため、相談を受けたら個人の問題として片付けるのではなく、職場全体の課題ととらえ改善に向けて取り組むことが大切です。
研修プログラムなどハラスメント対策の見直しを定期的に行うとよいでしょう。再発防止策と予防策は表裏一体で、対策が実施できていれば、ハラスメントの再発防止にもなります。
過去の調査では、ハラスメント対策を講じている企業は多いものの、完全に撲滅できている企業は少ないようです。
職場のハラスメントについて、効果的な対策を講じている企業の事例をご紹介します。
国内外で事業を展開する粘着素材メーカーであるリンテック株式会社は、ハラスメント対策として専任の部署を設置し、次のような施策を実施しています。
限られた文字数で表現される「川柳」という方法を取ることで、ハラスメントについて自分では気づかない視点からも考えるきっかけができます。公開されている資料やツールは、空き時間を利用した自己学習やグループ学習に活用されています。
また研修では、指導する側もされる側もハラスメントの範囲を明確にしており、指導する側も臆することなく教育できるよう配慮されています。 こうした取り組みは、コミュニケーションの活性化などハラスメントを発生させない雰囲気作りにも貢献しているようです。
参考:厚生労働省_あかるい職場応援団_【第38回】企業価値向上の一環としてハラスメント対策に取組む― リンテック株式会社
飲食店やフードデリバリーサービスを展開するS社では、2つの施策を継続して実施しています。
繰り返し実施することで、従業員の意識改革を促し、企業文化として根付かせることにつなげています。飲食業という業種柄、特に厨房は料理人の世界で今でも徒弟制度の雰囲気が残っているようですが、パワハラ的な教育や指導はありません。
外部講師を招く研修では、社外の事例なども参照しながら「こうした行為はハラスメントになる」、「これは指導の範囲内だ」といったことを具体的な事例をもとに伝える教育を実施。
また、アンケート調査を通してハラスメントの悩みを把握。寄せられた相談の中でも、より深刻で緊急に対応が必要なものについては、前述コンプライアンス部と協議しながら対応しています。
参考:厚生労働省_あかるい職場応援団_【第37回】継続した取り組みで、ハラスメントを許さない社風を作る―ケータリングサービス、 弁当の宅配・フードデリバリー、飲食業を行うS社
スーパーマーケット事業や施設管理を展開するD社では、年齢や役職を問わず、お互いに教えあう協力関係を目指し、従業員が自ら課題を考える施策が充実しています。
プロジェクトチームは、若手から中堅を含めたメンバーを従業員から選出した上で、経営課題について討論し、話し合った課題を経営層へ提案することをゴールとしています。メンター制度は、入社から半年間、先輩社員がメンターとして業務知識や企業理念を教える仕組みです。
人事部がメンターをバックアップするため、コミュニケーションの活性化にも寄与しています。また、近年はメンター制度を育児休業などの休業から復帰した人に対しても、経験者がアドバイスをするようにしたらしく、これはマタハラ(マタニティハラスメント)対策にも効果が期待できそうです。ほかにも、ジョブカード制度や小冊子の配布など、対話する時間が限られるスーパーマーケットの特徴にあわせた対策により、効果をあげています。
参考:厚生労働省_あかるい職場応援団_【第34回】「コミュニケーションの活性化で働きやすい職場作り」 ―スーパーマーケットを初めとして食を中心に様々なサービスを提供するD社
OA機器や通信機器の部品を製造・販売を手掛ける千代田インテグレ株式会社では、外部機関のアンケートを活用して、従業員の声を収集しています。従業員からの率直な意見を参考に対策を講じると、効果的なハラスメント対策へとつながります。
アンケートの外部委託は、効果的な設問が設計できることや、第三者の視点で客観的に分析してもらえること、短期間で分析結果が得られることがメリットといえるでしょう。早く結果を知ることで、施策検討や意志決定もスムーズに進められます。
12月は職場のハラスメント撲滅月間として、厚生労働省でもシンポジウムの開催やポスター掲示など、ハラスメント撲滅に関する広報・啓発活動が実施されています。
企業が実施すべきハラスメント対策は、以下のポイントを軸に行うと効果的でしょう。
これらの施策を通じて、従業員一人ひとりに当事者意識を持たせることが重要です。
当事者意識を持たせるハラスメント対策として、アスマークの「CHeck」をおすすめします。「CHeck」は、調査・研修・相談窓口の運営など、コンプライアンスとハラスメント両方の対策ができるサービスで、課題に合わせて必要なサービスを選んで利用することができます。
特にアセスメントを用いた研修サービスでは、自身が持つハラスメントのリスクについて一人ひとり診断された結果を見ながら研修を受講できるため、ハラスメントを自分事化して考えるきっかけを作ることができるのでおすすめです。
年末年始の繁忙期を迎える前に、自社のハラスメント対策を見直してみてはいかがでしょうか。
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