企業にとって最善なことは、パワハラやセクハラといったハラスメントを発生させず未然に防ぐことでしょう。
しかし、どんなに万全な対策を講じていたとしてもハラスメントが発生してしまうことはあります。ハラスメントやハラスメントと疑われる行為が発覚した場合、企業(特に人事部門)は何をすべきでしょうか?
今回は、ハラスメントやハラスメントと疑わしき行為が発覚した際に、どのような対応をすべきなのかについて考えてみたいと思います。
多くの企業では、ハラスメント被害者あるいはハラスメントと疑われる行為を目撃・関係する第三者からの相談を受け付ける「相談窓口」を設けているでしょう。このような相談窓口あるいは直接、人事部門などに相談があった場合、「会社として誠実に対応する」「相談窓口(あるいは人事部門)で相談者が話した内容について秘密が守られる」「(相談したことによって)不利益な扱いを受けることは無い」といったことを相談してきた方に明確に伝えましょう。その後、相談時間について説明した上で相談を受けましょう。時間は1時間程度が適切です。
ここで最も重要なことは、相談者の話をじっくりと聞くこと(傾聴の姿勢)を心がけることです。最初の対応内容によっては、相談者が不信感をおぼえる可能性があるからです。
時系列を意識しながら、以下の内容についてできるだけ詳細な内容をヒアリングしつつ、後に使用することが想定されるため書面に残しておきましょう。
相談者の了解を得た上で、事実関係の精査に着手します。当事者(相談者・被害者・加害者)からのヒアリングだけではなく、第三者に事実確認を行います。第三者に事実確認する時は、相談者に「誰に聞くのか」あるいは「誰に確認してほしいのか」を事前に確認するようにしましょう。
第三者に事実確認を行うことによって、ハラスメント事案に関して調査していることが関係者以外の外部に漏れる可能性が高まります。そのため、守秘義務の徹底をはかりましょう。
また、これと並行して、相談者や被害者が記録していたメモ、メールなどの客観的資料を収集することも検討すべきです。これは、当事者からのヒアリング内容との矛盾点や相違点の有無を確認のために使用するためです。さらに、就業規則や過去の事例などを参考に何らかの懲戒処分が必要となる場合や、裁判事案に展開する可能性もあるため、早い段階から弁護士に依頼することをお勧めします。
事実関係を確認した上で、人事担当者だけでなく経営陣や法律に知見を持つ専門家などを含めて、ハラスメント行為があったかどうかの判断と処分の検討を行いましょう。就業規則に「懲罰委員会」の規定がある場合は、懲罰委員会を設けます。相談者・被害者の要望や加害者の振る舞いなどに応じて、処分を検討することとなります。
その際、就業規則や過去事例を参考にして、バランスの取れない処分とならないよう留意する必要があります。具体的には、加害者の注意・指導、加害者から被害者への謝罪、(加害者あるいは被害者の)異動、加害者への懲戒処分などがあります。
ただし、懲戒処分については、就業規則に懲戒処分に関する規定が記載されており、それに則って対応することが必要であることに留意しましょう。懲罰委員会で判断する場合、懲罰に値するのが相談を受けた内容のうち、どの行為が相当するのか、そしてそれに対してどう判断したのかを文章にまとめておきましょう。
懲罰委員会によってどのような判断を経て処分内容が決定されたのかを、関係者(相談者・被害者・加害者)に対して説明を行います。関係者に事前説明が無い段階で、社内告示や通達などで広く知らせるのは避けましょう。順番としては、関係者への説明が先です。
また、ハラスメントに関しては、業務上の適切な指導をハラスメントとして捉えているケースもあります。そういった場合、なぜハラスメントに該当しないのかといったことを丁寧に説明します。
ハラスメントは被害者だけではなくそれに関係した社員や、場合によっては職場全体にとってダメージを負うものです。そのため、関係者全員のメンタルケアなどのフォローを行うようにしましょう。
関係者の希望や、発生したハラスメント事案に応じて検討することになりますが、具体的には以下のような施策があげられます。これらは複数の施策を組み合わせるとさらに効果的です。CHeckのようなコンプライアンス&ハラスメント対応パッケージを適用することも可能です。
ハラスメントと判断できる事象がおこってしまった場合に、適切な手順にて問題が複雑化しないうちに解決できるように対策を考えておくことで、職場環境悪化によるモチベーション低下防止や有能な人材の流出防止につながります。
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