この記事をご覧の方の中には、「育児・介護休業法の改正にどう対応すればよいか分からない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
今回は、改正された育児・介護休業法に対して、組織としてどのような対応が求められるのかをご紹介します。
育児・介護休業法は、育児や介護を理由にやむを得ず退職する状況を改善し、仕事と家庭の両立を可能にすることを目的として、1991年に制定されました。本法では、休業制度や就業環境の整備に関する項目が規定されています。
この法律の対象は男女を問わず、育児や介護に関わるすべての従業員です。一般に、育児休業は「育休」、介護休業は「介休」と呼ばれています。
女性活躍推進法と、女性がより活躍できる社会の実現を目的として、2015年に制定された時限立法です。労働条件や賃金における男女間の格差解消、そして各企業における状況の公表などが義務付けられています。
しかしながら、諸外国と比べて日本は女性の社会進出が進んでおらず、その遅れを受けて本法の有効期限は2035年度末まで延長されました。
育児や介護との両立を支援する制度は、女性の活躍を推進するうえで欠かせません。人事部門としても、両立支援の充実を通じて、女性の活躍を後押ししていく必要があります。
女性の活躍推進が重要視されている背景には、深刻な労働力不足という社会課題があります。
日本では、かつては結婚や出産を機に女性が退職することが一般的とされていました。こうした慣習や社会構造により、「育児や介護を担うのは女性」という前提で、就業継続は難しく、結果として職場から離れる選択を迫られるケースが少なくありませんでした。
しかし現在は、少子高齢化の進行にともなう労働力不足が深刻化し、あらゆる働き手の力が必要とされていることから、これまで十分に活かされてこなかった女性の労働力や能力にあらためて注目が集まっています。こうした流れを一時的な対応にとどめるのではなく、誰もが力を発揮できる職場環境を当たり前のものとして根づかせていくことが、今後の企業に求められる視点だといえるでしょう。
また、日本は諸外国と比べて、男女間の格差が依然として大きい状況にあります。過去の調査によると、アメリカやシンガポールにおける女性管理職の割合が4割を超えていたのに対し、日本では12.9%にとどまっていました。女性管理職のロールモデルが少ないことから、仕事と家庭を両立しながらキャリアを築く姿をイメージしづらく、それが男性中心の社会構造の継続につながっているという側面もあります。
さらに、グローバル化が進展するなかで国際的な競争力を高めるためにも、多様な人材が能力を発揮できる環境の整備は欠かせません。女性の活躍推進は、その一翼を担う重要なテーマといえるでしょう。
参考:労働政策研究・研修機構_データブック国際労働比較2024
2025年から施行される育児・介護休業法の改正点については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
子どもの急な発熱や学校行事など、家庭の事情にも対応しやすい働き方を実現させるため、柔軟な働き方を推進する制度の導入が義務化されました。
主なポイントは以下のとおりです。
事業所は、保育所の運営や始業時刻の変更など、子育てと両立しやすい施策を少なくとも2つ以上導入しなければなりません。あわせて、従業員が自分に合った制度を選べるよう、選択可能な制度を整備することも求められます。
残業免除制度では、対象となる子どもの年齢や取得の条件、利用できる従業員の要件について見直しが行われました。
看護休暇については、対象年齢が「小学校入学前」から「小学3年生修了まで」へと拡大され、より長期間のサポートが可能になります。
意向確認とは、事業所が実施中の支援施策について従業員に説明を行い、制度を利用する意向があるかどうかを確認するものです。実施のタイミングは、妊娠・出産の時期と、子どもが3歳になる1ヵ月前までの間に、それぞれ1回ずつ行うことが求められています。
従業員数が300人以上の事業所には、育児休業の取得状況を年に1回公表することが義務付けられました。この「従業員数」には、期間の定めがない雇用契約の従業員が含まれます。正社員やパートなどの雇用形態を問わず対象となります。
公表する内容は、次のいずれか一方から選択します。
いずれの項目を選ぶ場合でも、事業年度の終了後3カ月以内に、公式ウェブサイトなどを通じて公表する必要があります。情報開示を適切に行うことは、社内外への信頼構築や採用活動においても重要なポイントとなるでしょう。
仕事と介護の両立を支援するため、企業には以下の5つの取り組みが求められています。
介護は、突然始まるケースが多く、従業員自身が備えを意識しづらいという課題があります。そこで、介護に直面する可能性が高まるとされる40歳前後のタイミングで、支援制度の内容や申し込み方法、給付金に関する情報を事前に伝えておくことが重要です。
実際に介護が必要となった際には、従業員に対して支援策を活用する意思があるかを聴取します。
また、環境整備の具体策としては、社内研修の実施、相談体制の整備、介護休業取得例の紹介、支援方針の明確化と周知といった取り組みが挙げられます。研修では、制度の概要説明だけでなく、給付金の申請方法など、急な場面にも対応できるように知識を身につけます。本改正では、これらの取り組みのうち1つ以上を実施することが義務ですが、可能であれば複数を併用することが望ましいとされています。
なお、これまでの介護休業の対象者は、「週3日以上勤務かつ6ヵ月以上の継続雇用がある従業員」とされていましたが、2025年4月からは、「週3日以上勤務」の要件のみで取得可能となり、対象が広がりました。
育児・介護休業法の改正にともない、組織として講じるべき対応は多岐に渡ります。ここでは、施策の整備や就業規則の見直しなど、実務的に求められる主な対応について整理します。
従業員が必要とする支援策を的確に導入することで、制度の活用率が高まり、仕事と家庭の両立支援をより効果的に推進できます。そのためには、まず自社の現状をさまざまな角度から確認し、どのような施策が必要とされているかを把握することが重要です。
現状把握の方法としては、定量的アプローチと定性的アプローチの両方があります。たとえば、従業員アンケートは定量的な手法として有効で、全体傾向の把握に役立ちます。また、個別インタビューや座談会などの定性的手法を組み合わせると、具体的な悩みや要望を深堀することができます。
従業員の声を丁寧に拾い上げ、制度設計や運用に反映することが、効果的な両立支援につながります。
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育児や介護に関連する制度を整備・変更するにあたっては、就業規則の見直しが必要です。具体的には、以下のような項目について、内容の再確認および必要に応じた改訂を行います。
たとえば、就業時間については、始業・終業時刻や休憩時間の設定、対象者の範囲などを明確にしておくことが求められます。時短勤務制度や残業免除、看護等休暇に関しても、制度の対象となる従業員や取得条件を見直し、実態に即したルールに整える必要があります。
また、新たに導入された制度(例:テレワーク制度や特別休暇制度など)については、その趣旨や利用条件、対象者を明文化し、従業員にわかりやすく伝える工夫も重要です。
就業規則の改訂後は、内容に応じて労使協定の再締結が必要となる場合があります。必要な手続きが生じた際は、所轄の労働基準監督署への届け出も忘れずに行いましょう。
育児や介護との両立を実現するためには、従業員が気軽に相談できる環境の整備が欠かせません。制度の内容や申請方法に関する質問だけでなく、給付金の手続き、ハラスメントや人間関係の悩みといったセンシティブな内容にまで対応できる体制が望ましいでしょう。
相談窓口の運営については、既存のハラスメント対策の相談窓口と共通にしても問題ありません。ただし、プライバシーへの配慮を考慮すると、窓口の担当者は社内の従業員ではなく、外部の専門機関や第三者が担う形が望ましい場合もあります。特に、相談の内容が個人のキャリアや家庭状況に関わる場合は、相談後に不利益を感じることなく働き続けられる環境を整えることが大切です。
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従業員が育児や介護で長期休業に入った場合でも、組織としての業務が滞りなく継続できる体制づくりが求められます。そのためには、業務の棚卸を通じて属人化を解消し、誰が抜けても対応できる仕組みを構築することが重要です。
業務の洗い出しを行ったうえで、マニュアルの整備やオペレーションの見直しを進めることで、業務効率の向上にもつながります。また、長期の休業によって一時的に人員が不足する場合には、外部リソースの活用も選択肢の一つです。たとえば、派遣社員の受け入れによって、必要な業務を一定期間カバーすることができます。
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テレワークは、通勤時間の削減や柔軟なスケジュール管理が可能となる点が大きなメリットです。育児や介護など家庭の事情と両立しやすい働き方として、多くの企業で導入が進められています。今回の法改正でも、柔軟な働き方を支援する施策の一つとして、テレワークの導入が努力義務として明記されています。
一方で、テレワークの導入には設備面やシステム構築にかかる費用が発生するため、実施にあたっては自治体が提供する助成金や補助制度の活用も検討しましょう。地域によっては、テレワーク導入を支援する制度が用意されている場合があります。
また、テレワーク特有の課題として、業務の進捗管理やコミュニケーションの難しさが挙げられます。こうしたデメリットを解消するためには、コミュニケーションツールの活用や、業務を可視化する仕組みの整備が有効です。
育児・介護休業法の改正では、柔軟な働き方の推進が重視され、テレワークの導入が努力義務として明記されました。子育てや介護と仕事を両立できる環境整備が求められるなかで、テレワークは有効な手段の一つとして位置づけられています。
一方で、テレワーク下では「お互いの状況が見えにくい」「気軽に声をかけられない」といったコミュニケーション面の課題も指摘されています。
こうした問題に対して有効なのが、アスマーク「せきなび」です。「せきなび」は、離れた場所でのコミュニケーションを円滑にする座席管理ツールです。誰がどこで働いているのか、在席や離席(外出・休憩・会議中など)がひと目でわかる機能に加え、顔と名前を一致させやすいプロフィール表示、カレンダーとの連携機能も備えています。出社とテレワークが混在するオフィスにおいても、気軽にコミュニケーションを取りやすくなるツールとして多くの企業様にご活用いただいています。
スムーズな連携と対話を促し、育児や介護と両立しながら働ける職場づくりを支える手段として、「せきなび」の導入をご検討ください。
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