男性育休取得率の公表義務化。制度の概要や具体的な対応方法を説明

この記事を読む方の中には 「男性育休取得率の公表義務化で何をすればよいか分からない」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。

そこで今回は、男性育休取得率の公表についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

育休取得率公表義務化の背景と目的

2023年4月から、従業員数が1,000人超の企業は、男性の育休取得率を公表する義務づけられました。義務化の背景と目的からご紹介します。

政策導入の背景

2022年現在、育休を希望しながら取得できなかった男性正社員の割合は、29.8%でした。一方、男性の育休取得率は17.13%と、希望が十分にかなっていない状況です。 育休取得率の低さは、女性の就業継続や子どもを持つことに悪影響を及ぼしています。そこで政府は、2025年までに男性の育休取得率30%を目標とした「イクメンプロジェクト」を立ち上げました。

参考:厚生労働省_仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 令和4年度厚生労働省委託事業

参考:厚生労働省_令和4年度雇用均等基本調査

目的と期待される社会的影響

育休取得率の公表は、男性の育児参加に対する取り組みを浸透させるために義務化されました。男性の育休取得を促進するのは、次のような理由からです。

  • 男性の育児参加
  • 育児休業の取得促進
  • 家庭と仕事の両立

政府は、男女問わずワークライフバランスを実現させることで、社会全体の成長を目指しています。
そこで、育休取得状況の公表を義務化することで、男性の育児参加に対する取り組みの浸透・促進を目指しています。

 

男性育休取得率の現状と推移

日本の男性育休取得率は、諸外国に比べて低い結果です。日本の取得率が上がらない理由と、なかでも高い取得率の事例をご紹介します。

国内外の取得率比較

ユニセフの専門研究センターによると、スペイン・スロベニアなど同等のデータがある11ヵ国における男性の育休取得率は、平均で55%でした。これに対して日本の男性育休取得率は、2022年現在17.13%です。 フランスでは、2021年に男女問わず育児に参加することを目的として、男性の育休取得を義務化しました。国内外問わず、男性が育休制度を取得するのは当たり前の社会に変化しつつあります。

参考:東京都 TOKYOを世界一の育業都市へ

 

日本の取得率が上がらない理由

以前の日本では、男性は仕事・女性は家庭に入るのが一般的でした。女性は出産を機に退職する風習が残り、出産や育児に対する制度が整備されず、休むと迷惑をかけると考えられています。 そのため、育児休業を取得しにくい雰囲気を感じたり、キャリアに影響が出ると感じたりするようです。

 

成功事例と取得率向上の要因

男性育休取得率100%(※)を誇る企業の例をご紹介します。数ある取り組みのなかから一部をご紹介します。

事例:株式会社技研製作所の取り組み

  • 男性育休取得促進のプロジェクトチームを発足
  • 社内アンケートで課題を分析
  • 社内Webサイトに育休専用ページを設置
  • 育児休業支援金の創設
  • 社内通達で男性の育休取得を後押し

株式会社技研製作所では経済支援・働き方支援どちらの制度も充実しています。
取得率向上のポイントは、課題分析・制度・周知をすべて実施していることです。
仕事と家庭の両方を充実させる企業風土を作り上げているようです。

※:2022年度実績

参考:技研製作所 仕事と育児の両立支援

 

公表義務化の具体的内容

男性育休取得に関するデータの公表義務化にあたり、制度の概要・対象企業・企業の対応についてご紹介します。

厚生労働省の政策概要

2023年4月から、男性の育休取得に関するデータを年に1回公表することが義務化されました。公表が必要なデータは、次の2つのいずれかです。

  • 育休取得率
  • 育休取得率+育児を目的とした休暇取得率

データは、事業年度ごとに算出し、インターネットの利用など一般の方が閲覧できる状態での公表が必要です。公表しない場合、明確な罰則はないものの、育児・介護休業法違反として厚生労働省から勧告を受けます。 勧告に従わなければ、育児・介護休業法第56条の2により、企業名などの基本情報と公表義務違反の旨が開示される場合があります。

公表義務の対象となる企業

公表義務の対象は、常時雇用する労働者が1,000人以上の企業です。
「常時雇用する」とは、次のような従業員を対象とします。

  • 雇用期間の定めがない者
  • 過去1年以上継続雇用されている者
  • 雇い入れから1年以上の継続雇用が見込まれる者

公表にあたっては、雇用形態に関係なく、条件にあてはまる従業員を計算します。

企業における対応

企業においては、次の対応が必要です。

  • 育休取得率と育児を目的とした休暇取得率の算出
  • 事業年度終了後おおむね3ヵ月以内にインターネットの利用など一般の方が閲覧できる状態で公表

公開方法は、自社サイトでの公開もしくは厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」がおすすめです。「両立支援のひろば」では、10万社以上の男性育休取得率のほか、女性の育休取得率や育児休業の平均日数などが公表できるため、自社の取り組み実績としてPRすることも可能です。

また事業年度終了後3ヵ月以内とは、例えば3月決算の企業は、6月末までを指します。

参考:厚生労働省 両立支援のひろば

 

取得率の計算方法と公表の重要性

取得率の公表は、ワークライフバランスが確立された企業としてアピールできるため、非常に重要です。

育休取得率の計算方法

育休取得率は、次の式にもとづいて計算します。

  • 取得率=育休を取得した男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数
  • 取得率+育児目的の休暇取得率=(育休を取得した男性労働者の数+未就学児の育児目的で休暇を利用した男性労働者の数)÷配偶者が出産した男性労働者の数

育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合、当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数えます。

また、年度をまたいで取得している場合は、育児休業を開始した年度の取得として計算が必要です。分割して取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象となります。

企業にとってのメリット

男性育休取得率を公表することで、社内外への透明性と信頼性が増します。具体的なメリットをご紹介します。

公表がもたらす透明性と信頼性の向上

男性育休取得率を公表することで、次のような効果があります。

  • 男性育休の取得促進
  • 採用時の応募者数増加

取得率の公表は、従業員満足度やワークエンゲージメントの向上に効果的です。従業員満足度向上にともない、人材確保にも良い影響をもたらします。 

 

育休取得を促進するための具体策

育休取得を促進するためには、次のような施策がおすすめです。

  • パパ育休に関する研修
  • 自社でパパ育休を取得した事例を公開
  • パパ育休の相談窓口を設置
  • トップメッセージとして発信

育休の事例が少ない場合は、制度説明や意向確認に迷うことでしょう。そこで、男性の育休取得の制度説明・意向確認シートをご用意しました。ぜひご活用ください。

 

男女問わず育休を取得しやすい組織づくりが大切

育休の取得促進は、従業員の就労環境整備のために深刻な課題です。

取得を促進していくためには、従業員が育休を取得しやすい状況であるのか、制度や体制への要望や不満がないのかアンケートで実態を把握することや、パタハラをはじめとしたハラスメントによって従業員が安心して制度を利用できないといった状況にならないため、従業員へ制度の周知やハラスメント知識を身に着けてもらう必要があります。

育休の制度を理解し、当然の権利として取得しやすい状況を作ることが、取得率の向上につながります。
しかし、一から施策を計画・実施するのは、大変でしょう。

そこで実態を把握するためのアンケートや制度の理解・ハラスメントを防止する研修などは、専門家へ相談するのがおすすめです。

男性育休の推進には「CHeck」

アスマークの「CHeck」は、男性の育休取得促進に役立つコンプライアンス&ハラスメント対策サービスです。 社内アンケートでは、実態の把握や課題の分析に活用でき、育休を取得しやすい状況であるか、現状の制度に不満はないかなど従業員の本音を聞き出すことが可能です。

また、豊富な研修メニューを用意しているので、男性育休の理解度向上やマタハラ・パワハラ対策にも対応します。
研修は、身に着けてほしいハラスメント知識の実例を取り入れ、当事者意識を持たせるカリキュラムにしたりなどカスタマイズが可能です。

男性の育休取得に対する考え方を浸透させるために適しています。

男性の育休取得率は、年々向上しているものの、諸外国の取得率に比べるとまだまだ低い結果です。育休を取得しやすい環境作りが取得率向上へつながります。育休を取得しやすい環境作りのために、社内アンケートや研修を活用してみてはいかがでしょうか。

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G

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