合理的配慮の義務化とは?改正障害者差別解消法を解説

この記事を読む方の中には
「4月に始まった合理的配慮の義務化について知りたい」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。

そこで今回は、合理的配慮の義務化についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

合理的配慮の提供とは

合理的配慮の提供とは、障害のある人から社会で直面する困難を取り除くための調整や変更のことです。合理的配慮は、次の3点を満たすものでなければなりません。

  • 必要とされる範囲で本来の業務に付随すること
  • 障害者でない人と同等な機会の提供が受けられること
  • 事務または事業の目的・内容・機能の本質的な変更に及ばないこと

2024年4月から障害者差別解消法が改正され、事業者にも義務付けられました。

 

合理的配慮が義務化された背景

合理的配慮の義務化は、障害者の権利を守り、多様性の尊重と社会参加の促進が背景にあります。 障害者の権利に関する議論は、2006年12月に国連で採択された「障害者権利条約」から始まりました。日本は、国連の条約を受けて2007年9月に署名、2014年1月に批准し、国内法と国際基準に整合性が図られています。

日本国内では、障害者の権利を守るため、2016年4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。2024年4月には「改正障害者差別解消法」が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務化されています。

合理的配慮に関する法令

合理的配慮に関する法令は、国連・国・自治体ごとに制定されています。自治体の条例は、多くの自治体で制定されているため、最寄りの自治体で定めた条例を把握しておきましょう。ここでは条例の一部をご紹介します。

  • 国連:障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)
  • 国:障害者基本法(障害者の社会参加に関する基本理念)
  • 国:障害者差別解消法(障害を理由とした差別を解消を推進する法)
  • 国:障害者雇用促進法(障害者の雇用を促進するための法)
  • 山形県障がいのある人もない人も共に生きる社会づくり条例
  • 東京都障害者差別解消条例
  • 大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例
  • 滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例

 

合理的配慮に関する法律のほかに、自治体で定めたルールにのっとっているかの確認が必要です。

障害者差別解消法とは

障害者差別解消法とは、障害を理由とした差別を解消するための法律です。2013年6月に制定され、2016年4月に施行されました。

法律では、障害を理由とした差別の禁止と過度でない範囲の合理的配慮について定められています。対象の障害者は、障害に関する手帳を持っている人だけではありません。障害や社会のしくみによって日常や社会生活に制限を受けている人も対象です。

条文にある「事業者」は、企業・団体・店舗など、目的や個人・法人の区別を問わず同じサービスを継続して行っている者を指します。目的や個人・法人を問わないため、個人事業主やボランティアも事業者の対象です。

合理的配慮の具体例

障害の内容により、配慮することが変わります。

  • 物理的環境への配慮(肢体不自由)
  • 意思疎通への配慮(弱視難聴)
  • ルール・慣行の柔軟な変更(学習障害)

 

障害の内容に合わせた配慮の具体例は、次のとおりです。

引用:内閣府_リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」

 

上記のほか、障害の種類や場面による合理的配慮の具体例を取りまとめた事例集があります。判断に迷ったときは、事例集を参照するとよいでしょう。

参考:内閣府_合理的配慮等具体例データ集

 

合理的配慮の判断基準

合理的配慮の判断基準は、
『合理的配慮の要件を満たしていること』と、『過重な負担にならないこと』です。詳しくご説明します。

合理的配慮の要件

「合理的配慮」は、先ほどもご紹介しましたが、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つを満たすものであることに留意する必要があります。

  • 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
  • 障害者でない人と比較して同等の機会の提供を受けるためのものであること
  • 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと

 

過重な負担の基準

過重な負担になっていないかは、次の5点を目安に判断します。

  • 事業の目的・機能・内容への影響
  • 物理的・技術的・体制面など実現可能性の程度
  • 費用や負担の程度
  • 事務・事業規模
  • 財政状況

 

合理的配慮の提供義務違反にあたらない事例

次のような場合は、合理的配慮の提供義務違反にあたりません。

  • 飲食の介助を事業の一環としていない飲食店で、食事介助を求められ断る
  • 小売店で買い物の付き添いを依頼され、混雑時だったため付き添いを断り、買い物リストを書き留めて用意する商品を提供

 

本事例は考え方の一例です。合理的配慮の提供は、事業の状況や障害の度合いなど、個々の事案により判断しましょう。

合理的配慮の流れ

合理的配慮の提供には、双方の合意が不可欠です。合意のためには、次の流れで実施するのが望ましいです。

  • 事前準備:合理的配慮の必要性や内容を社内で周知する
  • 申出の受付:受付時間の設定など言いやすい環境を整備する
  • 対話:実現可能性の有無や関係部署と連携をとり、申出者本人と対話する
  • 事例の蓄積と共有:合理的配慮の内容を社内へ周知
  • 検討と改善:配慮の内容が適切か否か、多い要望は職場環境の改善に活用する

 

合理的配慮をスムーズに提供するためには、社内の体制整備が大切です。配慮の事例を蓄積し、まれな事例にも応用できるよう体制を整備します。

合理的配慮に欠かせない対話のポイント

合理的配慮は、障害のある人にとって社会的なバリアを取り除くことが最も大切です。障害者の申出たことが実施できない場合は、バリアを取り除くための案を提案する「建設的対話」をします。 建設的な対話のために、避けるべき表現があります。

  • 前例がないため対応できません
  • 何かあったらいけないので対応できません
  • 障害のある人だけを特別扱いできません
  • 〇〇障害がある人には対応できません

 

合理的配慮は、個々の申出により柔軟な対応が必要です。前例がない場合やリスクの可能性だけでは、断る理由になりません。また、配慮は障害のない人と同等の機会を提供するために実施するため、特別扱いではありません。 障害の内容や度合いによって申出内容が異なるため「〇〇障害」とひとくくりにせず、その都度検討する必要があります。

 

建設的な対話には、相手への思いやりが大切です。セルフコンパッションを活用して思いやりをチェックしてみましょう。

 

合理的配慮を提供して共生社会の実現を目指そう

合理的配慮とは、障害のある人から社会で直面する困難を取り除くための調整や変更のことです。本来の業務に付随かつ過重な負担にならない範囲で、障害者でない人と同等の機会を提供します。合理的配慮は、障害者の権利を守り、多様性の尊重と社会参加の促進を促すために義務化されました。 合理的配慮は、事前に社内へ周知したうえで、障害者の申出を受け入れる体制を整備することが大切です。継続して配慮できるよう、事例を蓄積し、必要に応じて社内の体制を改善します。スムーズな配慮には、申出に対して建設的な対話が重要です。

 

合理的配慮の体制整備に役立つチェックリスト付きの資料を配布しています。資料を活用してスムーズに配慮できるよう社内の体制を整えましょう。

 

 

執筆者

Humap編集局

株式会社アスマーク 営業部 Humap事業G

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