この記事を読む方の中には
「逆パワハラの訴えが発生している」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は、逆パワハラの原因と対策についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
逆パワハラとは、部下が上司に行うパワーハラスメントのことです。厚生労働省が定義するパワーハラスメントは、以下の3点を満たしたものとされています。
逆パワハラは、以下のように解釈するハラスメント行為です。
近年、部下からの逆パワハラに悩んだ上司が、精神疾患を患い休職、退職へ至るケースも見られます。
逆パワハラが発生する原因は主に3つです。
パワハラは「上司」から「部下」に行うもので、「部下」から「上司」はパワハラにはあたらない、という誤った認識が原因となる場合もあります。
「上司に対してなら、強く言っても大丈夫だろう」「上司に厳しくされたら『それパワハラですよ』と訴えればいい」「上司なんだから厳しくされて当たり前」等の誤った認識に基づく甘い考えが逆パワハラを生み出します。
また、「本人が苦痛に感じれば何でもパワハラだ」というのもよくある誤認識です。
前述の通り、パワハラにも定義があります。気に食わないことがあれば何でもかんでも「パワハラだ」と訴えるのも、認識不足による逆パワハラと言えます。
経験豊富なベテランの部下と、若手管理職などの組み合わせで起きやすいパターンです。
正社員の新卒店長の下にベテランのパートやアルバイトが複数いる店舗などを想像すると分かりやすいですが、ベテラン部下の方が職場での人間関係ができあがっており(人数の優位性)、また経験が浅いが故の上司の手際の悪さに部下がイライラしてしまうこともあるかと思います。
そのようなパターンで、部下から上司への指摘や批判が強くなってしまったり、人数の優位性を使って無視やボイコットをしたりすると、逆パワハラとなってしまいます。
前述のように、ベテラン部下と経験の浅い上司の組み合わせは特に逆パワハラが起きやすい関係ですが、そのような組み合わせでもマネジメントがうまくいっていれば逆パワハラは発生しません。
マネジメント力不足により、部下が「上司の指示が分かりにくい」「現場の意見を全然聞いてくれない」などの不満を溜めていってしまうと、逆パワハラに発展してしまう可能性があります。
冒頭で述べたように、次の3要件に該当するものがパワハラに該当します。
逆パワハラは、パワハラの一種です。
そのため、通常のパワハラの場合は、上司から部下への言動がこの3点に該当するか、逆パワハラの場合は、部下から上司への言動が上の3点に該当するかを考えて、境界線を見極めるとよいでしょう。
部下から執拗にパワハラを指摘され、「これは逆パワハラでは?」と悩む上司の方もいるかもしれません。
そんなときは、上司側の言動がパワハラに該当していないか、今一度冷静に考えてみましょう。
適切な業務範囲内での指導にもかかわらず、部下からパワハラだと糾弾されているようであれば、それは逆パワハラにあたります。しかし、上司と部下の考える「適切な業務範囲」に食い違いがあるせいで、上司は「適切な指導だ」と思っているのに、部下から「ハラスメント」と認識されている可能性もあります。
「適切な業務範囲」について正しい知識を身に付けて実践することと、指導する際の態度や言葉遣いに気を付けることで、部下から「パワハラだ!」と言われても、きちんと説明することができ、自信をもってマネジメントすることができるでしょう。
逆パワハラは、以下のような行為です。
具体的な例をいくつか挙げてみます。
大阪地裁平22.6.23判決(労判1019号75頁)
ある会社に勤務していたX(上司の立場にある者)が、職場の同僚や部下らの集団から嫌がらせを受け、精神疾患を患ったことについて、京都下労働基準監督署長がした療養補償給付不支給処分の取消しを求めた事案。
などが繰り返して行われており、集団でなされたものであって、しかも、かなりの長期間、継続してなされたものであり、その態様もはなはだ陰湿であったことから、労災不支給決定が取り消された。
東京地判 平成21.5.20(労判990-119)
あるレストランで料理長兼店長を務めていた者(上司)に対して、部下が「店長は店の売上金を着服している、金庫からお金を盗んでいる、女性従業員にセクハラをしている」などを記載した中傷ビラを親会社等に配布し、店長がうつ病になり自殺したという事案。
裁判所は、部下とのトラブルやそれによる親会社との関係悪化により心理的負荷が強度となり、うつ病を発症して自殺に至ったものと認められるとして、業務起因性を認めました。
他にも、業務指示とハラスメントの区別をせずにハラスメント行為を訴えるケースが増えています。過去には、ハラスメント行為として裁判をおこし、パワハラと認定されなかった例もあります。
逆パワハラと認定される前に企業が予防策をとっておきましょう。主な予防策は5つです。
マネジメント力の不足が原因で逆パワハラを訴えられるケースがあります。そのような場合に対する効果的な予防策は、マネジメント研修です。マネジメント研修では、部下への接し方や、仕事の進め方について研修します。主な注意点は以下です。
人格を否定する発言や人権を侵害する行為は、パワハラに認定されます。グレーゾーンにあたるものでも、パワハラをイメージさせる発言・行動は控えておくべきです。
全従業員へ実施するハラスメント研修の中に「逆パワハラ」に関する項目を盛り込むことで、予防ができます。注意点は以下です。
「パワハラを訴えたら上司から厳しく注意されることはない」と考えて業務に取り組んでいるようであれば、その姿勢は正さなければなりません。そこで、パワハラと認定されるケースを今一度見直す必要があります。
逆パワハラを訴えられるときは、上司の注意方法に問題があるのか、部下の態度に問題があるのかいずれかが原因でしょう。そこで、日常的に従業員の業務態度をチェックしておくことで、逆パワハラを含めたハラスメント行為の早期検知ができます。
従業員の日常の様子をチェックするには、従業員アンケートが効果的です。アンケートは、CHeckなどのハラスメント対策パッケージを活用するのが便利です。CHeckでは、パワハラ防止法に対応した実態把握アンケートを質問に盛り込んでいるので、ハラスメント行為に対する課題が迅速に検知できます。
ハラスメント予防・
コンプライアンス対策なら
「パワハラを受けている」と訴えがあがったら、公平な事実調査が必要です。従業員に「公正な調査」と周知するため、以下の点に注意しましょう。
ハラスメント調査委員は、公平な調査をしなければなりません。上記のような体制を取っていることを日頃から周知しておくことは、従業員が安心してハラスメントの相談ができる環境づくりにも繋がります。
コミュニケーション活性化は、従業員間の「誤解」を防止する最も効果的な方法です。従業員同士の信頼関係があれば、少し強めに注意しても「自分のことを思って言ってくれている」と受け取ることができたり、問題が深刻になる前に当事者同士で解決したりできるでしょう。
企業では、定期的なランチ会・チャットツールの活用など、コミュニケーション活性化の施策を取り入れることで「逆パワハラ」の予防につながります。
逆パワハラについてご紹介しました。逆パワハラが発生する原因は、主に3つです。
逆パワハラは、ハラスメント行為の一種です。日常的に研修・コミュニケーションを活性化することで、逆パワハラ対策をしましょう。
株式会社アスマーク 経営企画部 Humap事業G
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