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この記事を読む方の中には
「パワハラ防止法で何が義務化されたのか分からない」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は、パワハラ防止法上の必要な措置と、違反による企業のリスクについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
パワハラ防止法とは、2019年5月に成立した「改正労働施策総合推進法」の通称です。改正の際に「職場におけるパワーハラスメント防止措置義務」についての規定が新たに設けられたため通称「パワハラ防止法」と呼ばれています。
パワハラ防止法は、2020年6月1日より大企業を対象として施行されました。中小企業においては、努力義務期間としていましたが、2022年4月1日より義務化されました。
規制対象となる「パワハラ」は、3つの要件を全て満たす「職場」での行為・言動を指します。
職場での行為・言動とは、無視・隔離・暴言・暴力や、過度または過小な業務など精神的・肉体的に攻撃を与えることです。
詳しいパワハラの定義はこちらのコラムもご参照ください。
パワハラ防止法が制定され、多くの企業が相談窓口や対策室の設置など、必要な対策をしています。では、実際にハラスメント行為は減少しているのでしょうか?
2022年1月の有職者1万人を対象とした調査では、直近6か月以内にパワハラ被害を受けた件数は12%、見聞きした件数は33%でした。大企業のパワハラ防止法が施行されて1年以上が経過したにもかかわらず、まだまだパワハラはなくならない状況です。
パワハラが発覚すると、厚生労働省へ報告され、事実確認のために調査が入ります。
調査結果から適切な対策がとられていなかったと判断された場合には、勧告や社名の公表等がされる可能性はありますが、それ以外の具体的な罰則はありません。
パワハラ防止法の違反には、取引先の減少や、退職者の増加など、事業存続に関わる大きなリスクがあります。
リスクは大きいものの、中々無くならないパワハラ。具体的な対策は何をすればよいのでしょうか。パワハラ防止法により義務化された対策措置についてご紹介します。
社内方針の明確化とは、就業規則の改定と従業員への周知、教育等のことです。就業規則には、罰則の対象となるハラスメント行為と、対応する罰則を記載することで、ハラスメント発生後の事実確認時の指針にできます。
また、改定後は、規則改定の旨を従業員へ周知します。一方的に周知するだけでなく、理解度をはかるハラスメント研修等も行うと良いでしょう。
適切な相談体制構築とは、相談窓口の設置、受付要員選定や相談受付時のルール策定のことです。相談窓口は、ハラスメント被害の早期検知、解決を目的として設置します。
相談受付時のルールには、誰もが安心して相談できるよう、個人情報保護や相談者に不利益がない旨を明記し、従業員にも周知します。
また、相談者の不安を取り除き、第三者視点での適切な相談対応を行うために、外部の相談窓口サービスを契約するのも有効です。
最後に、パワハラ発生後の対応・再発防止についての措置です。具体的には、調査担当者の選定・再発防止策検討委員の設置などです。
相談を受けたあと、迅速に対応するために、担当者をあらかじめ選定しておく必要があります。パワハラ発覚後は、担当者を中心に関係者への聞き取り、事実認定、処分の検討を行います。そして、ハラスメント行為を繰り返さないために、委員会を設け再発防止策の検討を行うこともとても重要です。
パワハラは、企業へ多大なるリスクをもたらします。法律があるから対策するのではなく、自社と従業員を守るためにも対策をしなければいけません。前述の義務措置以外にもパワハラ防止のために企業が取り組むべき事項を5つご紹介します。
ハラスメント行為は日々多様化しています。パワハラに限らず、セクハラ・マタハラ・ワクチンハラスメントなどさまざまなハラスメントがあります。
最新のハラスメントにも即時に対応できるよう、規則は常に見直しましょう。規則の見直しには、従業員へハラスメント調査を実施し、現状にあった規則を盛り込むのもよいでしょう。
ハラスメント教育を実施している企業は多いでしょう。しかし、講師から一方的に説明するだけの講義では、内容は理解できるものの、「自分には関係ない」と他人事に思う社員が殆どです。
そこで、実際に自社や同業界で発生したハラスメントの具体例や、グループワークを導入し、自分で考える研修をおすすめします。「ハラスメントは他人事ではない」ことが浸透すれば、ハラスメント行為は減少していくでしょう。
研修をより自分事化させるには、ハラスメント対策サービス「CHeck」の研修も有効です。CHeckでは、社員各自の隠れたハラスメントリスクを見える化し、自分事になる研修を行うことができます。
ハラスメント相談窓口を設けても「何処に相談すればいいか分からない」「相談したことが知られるとさらにいじめられる」と相談しないケースも多く見受けられます。アスマークの自主調査では、パワハラ被害者の90%が「相談窓口には相談しなかった」と回答しています。(ハラスメント実態調査)
少しでも相談しやすい環境を作るため、外部の相談窓口サービスへ委託したり、相談員のプライバシー違反に対する罰則規定を設けたり、プライバシーに配慮した相談窓口を設置し、周知しましょう。
ハラスメント相談を受けたあとに事実確認・調査・再発防止策を検討する組織は複数の状況を想定し、準備しておきましょう。具体的には以下のような例です。
セクハラの被害者が女性の場合、調査担当者を半数以上を女性とする
調査担当者と当事者が同じ部署であれば、接点の少ない部署が調査する
迅速な調査開始のためには、あらかじめパターンを想定して取り決めておきましょう。
ハラスメント行為があっても「通報したら自分が嫌がらせを受ける」など、直接は通報しない方も多いかもしれません。そこで、定期的なハラスメント調査で早期発見をはかりましょう。
ハラスメント調査には「CHeck」などハラスメント対策サービスを利用すれば、分かりやすいレポートなどにより、リスク把握に役立ちます。
ハラスメント予防・
コンプライアンス対策なら
パワハラ防止法には、2つの問題点があります。
厚生労働省の指針により言い訳ができてしまう
パワハラ対策措置をとらない企業に対する罰則がない
厚生労働省は、ハラスメント行為の線引きとして指針を発表しました。ですが、この指針に具体的な発言を盛り込んだため、言い訳に利用できるという声があがっています。
また、ハラスメントが何も起きていない企業は、対策を取らず法律違反の状態であっても、問題なく業務を遂行しています。これにより、不公平感を抱く企業もあるようです。
ハラスメント行為は、賠償責任・イメージ低下など、企業に大きなリスクをもたらします。そこで、パワハラ防止策として、社内規定の改定・相談受付体制の構築・相談受付後の迅速な調査と再発防止策の検討が必要です。