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職場で起こるハラスメントについて、「その場には目撃した人がいるはずなのに、なぜ誰も止めなかったのだろう」と疑問を抱く人事担当者は少なくありません。
また、「相談件数が少ないからといって、自社では問題が起きていないと判断してよいのか」と迷うこともあるでしょう。
ハラスメントは、行為者と被害者だけの問題ではありません。周囲の従業員が違和感を抱きながらも沈黙することで、問題が長期化し、組織全体に深刻な影響を及ぼすことがあります。
見て見ぬふりが起きる背景には、個人の性格や勇気だけでは説明できない心理があります。発言しにくい組織風土、相談制度への不信感、評価や人間関係への不安なども複雑に関係しています。
人事に求められるのは、ハラスメントが発生した後に対応することだけではありません。従業員が安心して声を上げられる環境を整え、問題を見過ごさない組織文化へと改善していくことも、人事が取り組むべき重要な課題です。
本記事では、ハラスメントが見て見ぬふりされる理由や心理、組織への影響、人事が実践すべき対策について解説します。
見て見ぬふりは、必ずしもハラスメントを問題だと認識していないために起きるわけではありません。不適切な言動に気づいても、自分の立場や職場の人間関係を考え、行動を控える従業員もいます。 一見すると誰も問題視していないように見える職場でも、実際にはさまざまな不安から口をつぐんでいる可能性があります。 ここでは、ハラスメントを目撃した従業員が声を上げられない背景を見ていきます。
ハラスメントは、会議中や執務スペース、オンライン会議など、周囲に人がいる状況でも発生することがあります。しかし、目撃した従業員は、「本人同士で解決すべき問題ではないか」「自分が口を出すことで、かえって状況を悪化させるかもしれない」などと考え、行動を控えることがあります。
特に、行為者が管理職や社内で影響力を持つ人物である場合、注意や相談に踏み切るハードルはさらに高くなります。その結果、職場全体が沈黙し、問題が表面化しない状態が続いてしまうのです。
2025年1月に当社が実施した『ハラスメント』調査(有効回答数10,000件)によると、 ハラスメントを見聞きした人のうち、窓口等に相談をせず「何も行動を起こさない」の割合は約4割でした。
下記の資料では、ハラスメントを見聞きしても行動を起こさない理由について、調査データから解説しています。
ハラスメントが放置される背景には、被害者だけではなく、目撃した従業員の心理も大きく影響しています。
このような不安が重なると、違和感を覚えても行動に移せなくなります。周囲が沈黙し続ければ、行為者は自らの言動が問題視されていると認識できず、同じ行動を繰り返す可能性があります。やがて「関わらない方がよい」「余計なことは言わない方がよい」という認識が職場に広がり、見て見ぬふりが組織の常態となるおそれがあります。
従業員に対して「勇気を出して相談しましょう」と呼びかけるだけでは、ハラスメント防止や早期発見にはつながりません。 相談窓口が設置されていても、「相談内容が周囲に知られるのではないか」「相談したことで不利益を受けるのではないか」「会社が適切に対応してくれないのではないか」という不安があれば、多くの人は沈黙を選びます。
そのため、人事は相談窓口を設けるだけでなく、その制度が従業員から信頼されているかまで確認しなければなりません。管理職のマネジメント、職場内のコミュニケーション、相談後の対応、経営層からのメッセージなどを含め、組織全体の仕組みを見直す必要があります。
ハラスメントを見過ごしてしまう背景には、人が置かれた状況によって生じるさまざまな心理が関係しています。これは一部の人だけに見られる特殊な反応ではなく、誰しもが経験し得るものです。 だからこそ、人事は「見て見ぬふり」を個人の意識不足や無関心として捉えるのではなく、人が行動をためらう心理を理解したうえで、制度や教育を設計することが重要です。
複数の人が問題を目撃している状況では、一人ひとりが「誰かが対応するだろう」と考え、自分が行動を起こしにくくなることがあります。心理学ではこのような、自分以外の他者がいる状況において、緊急事態であっても率先して援助行動を起こしにくくなる現象を「傍観者効果」と呼びます。 職場でも、複数の従業員がハラスメントを目撃しているにもかかわらず、互いにほかの誰かが対応することを期待し、結果として誰も止めない状況が生じます。
また、周囲が反応していない様子を見ることで、「この程度では問題ではないのかもしれない」と判断してしまう場合もあります。
人事には、この心理を理解したうえで、「誰かが相談するだろう」ではなく、「自分が相談してもよいのだ」と考えられる環境づくりが求められます。
職場では、周囲の反応が一人ひとりの行動や判断に大きな影響を与えます。 誰も問題視していないように見える状況では、「自分だけが騒ぎ立てる人と思われたくない」「空気を乱したくない」という心理が働きます。
さらに、行為者が上司や評価権限を持つ人物であれば、人事評価や昇進への影響を懸念する気持ちが加わることで、従業員は違和感を抱いていても、発言や相談を控えるようになります。
相談窓口が設置されていても、それだけで従業員が安心して利用できるとは限りません。 相談後に配置転換を命じられるのではないか、評価を下げられるのではないか、行為者や周囲との人間関係が悪化するのではないかと不安を感じる従業員もいます。
人事は、相談者や事実確認への協力者に対する不利益な取り扱いを禁止するとともに、相談内容や関係者のプライバシーを適切に保護する方針を明確に示すことが大切です。 制度を整備するだけではなく、相談者の情報をどのように扱うのか、相談後にどのようなフォローを行うのかまで周知し、制度への信頼を積み重ねていく必要があります。
ハラスメントが放置されやすい職場には、共通する組織風土が見られます。
従業員一人ひとりに問題意識があっても、組織の文化やマネジメントに課題があると、発言や相談などの行動につながりません。人事には、個人への啓発だけではなく、ハラスメントを見過ごしやすい環境そのものを改善する視点を持つことが求められます。
職場風土を把握して課題を可視化し、継続的な改善につなげることが、ハラスメントの予防と再発防止を支えます。
| 組織風土の特徴 | 起こりやすい状況 |
|---|---|
| 強い上下関係 | 上司へ意見や相談をしにくい |
| 成果至上主義 | 高い成果を上げる従業員の問題行動が見逃されやすい |
| 相談制度への不信 | 問題が表面化せず、ハラスメントが潜在化する |
| コミュニケーション不足 | 違和感や問題意識を周囲と共有できない |
上下関係が強い職場では、部下が上司に対して意見や問題意識を伝えにくくなります。 特に、行為者が管理職や影響力のある社員である場合、「指摘しても受け入れてもらえない」「評価に影響するかもしれない」と考え、問題を指摘できないケースが少なくありません。
また、管理職の言動に疑問を感じても、「昔からこの職場では当たり前だった」「これまで誰も問題にしてきていない」という雰囲気があると、不適切な行為が正当化されやすくなります。
人事は役職や所属部門に関係なく相談できる経路を整えるとともに、管理職が自らの権限や言動の影響を理解し、適切なマネジメントを実践できるよう、継続的に支援する必要があります。
売上や利益などの成果ばかりが評価される職場では、高い実績を上げる社員の問題行動が見逃されることがあります。
「成果を出しているのだから、多少厳しくても仕方がない」「業績への貢献が大きいから、強く注意しにくい」といった考え方が浸透すると、ハラスメントを事実上容認する空気が生まれます。
このような組織では、従業員は「会社は働く人の尊厳よりも成果を優先し、人間関係の問題には向き合わない」「相談しても、業績を理由に取り合ってもらえない」と受け止める可能性があります。 その結果、相談件数が減少する一方で、表面化していないハラスメントが拡大するおそれがあります。
過去に、相談しても十分な対応が行われなかった経験が職場内で共有されると、「相談しても意味がない」という認識が職場全体に広がります。
相談制度が整備されていても、対応が遅い、相談後の説明がない、結果が共有されない、相談者への配慮が不足しているなどの問題があると、制度への信頼は失われます。一度失われた信頼を回復するには、相談を受けたあとの適切な対応を積み重ね、その姿勢を従業員に示していかなければなりません。
人事は相談件数の増減だけを見るのではなく、「従業員が相談しようと思える環境になっているか」「相談した場合に適切な対応が期待できるか」という観点から、制度の運用状況を定期的に点検することが重要です。
ハラスメントを放置した場合、その影響は当事者間にとどまりません。不適切な言動を見聞きした従業員も会社への信頼を失い、職場全体の心理的安全性や働く意欲が損なわれます。
さらに、離職や採用活動への悪影響、企業イメージの低下など、経営にも影響が及びかねません。人事は個別の人間関係の問題として処理するのではなく、組織全体に関わるリスクとしてハラスメント対策を進める必要があります。
ハラスメントが放置される職場では、「問題を指摘しても無駄だ」「余計なことは言わないほうがよい」という意識が広がります。 従業員が発言を控えるようになると、ハラスメントに関する相談だけではなく、業務改善の提案や新しいアイデア、業務上のミスやリスクの報告まで減少する可能性があります。
このように、対人関係の不安から率直な意見や懸念を伝えにくい状態では、職場の心理的安全性が低下します。従業員が本来持っている能力を十分に発揮できず、組織全体の活力が失われるおそれもあります。
ハラスメントは、被害者本人だけではなく、目撃した従業員にも心理的な負担を与えます。 不適切な言動が繰り返されても会社が対応しない状況を見れば、「この会社では安心して働けない」「次は自分が対象になるかもしれない」と感じた従業員が、転職を検討したり、仕事への意欲を失ったりする可能性があります。また、ストレスが蓄積することで、心身の不調や休職につながるケースもあります。 離職・休職が増えれば、採用や人材育成にかかるコストが増加するなど、企業経営にも影響を及ぼします。
下記の調査データでは、ハラスメント被害者だけでなく、ハラスメントを見聞きする周囲の従業員への影響についても解説しています。
相談件数が少ないことは、ハラスメントが少ないことを意味するわけではありません。相談しにくい環境では、被害者だけでなく目撃した従業員も沈黙し、管理職や人事が実態を把握できないまま、問題が水面下で深刻化していきます。
問題が表面化した時点で、すでに複数の被害者が存在していたり、長期間にわたって問題が放置されていたりする場合もあります。 そのため、相談窓口に寄せられた情報だけに頼らず、表面化していない問題も含めて組織全体の実態を把握する仕組みを整えることが重要です。
効果的なハラスメント対策を実施するためには、まず組織の現状を正確に把握することが欠かせません。
相談件数だけでは実態を把握できないため、被害者だけではなく、目撃者や管理職を含め、立場の異なる人から多面的に情報を収集することが大切です。 定量的なデータと現場の声を組み合わせることで、組織が抱える課題を明確にし、優先順位を付けた改善施策につなげやすくなります。
ハラスメントに対する認識は、立場によって大きく異なります。被害者は深刻な問題と受け止めていても、目撃者は「指導の範囲」と考え、管理職は問題そのものを認識していないケースもあります。
また、経営層や人事が「相談窓口を整備しているから、従業員は安心して相談できている」と考えていても、現場では窓口の存在や利用方法が十分に認知されていない場合もあります。
こうした認識の違いを把握するには、被害経験、目撃経験、職場環境、相談制度への認知や信頼など、複数の観点から調査することが有効です。部署や役職、階層ごとの結果を分析すれば、どこに認識のずれやリスクがあるのかを捉えやすくなります。
相談窓口には寄せられない小さな違和感を把握する方法の一つが、無記名アンケートです。 回答者が特定されない方法で調査を実施し、匿名性に配慮することで、従業員は安心して現状や不安を回答しやすくなります。
調査は一度で終わらせるのではなく、定期的に実施して組織風土の変化を確認することが重要です。また、調査結果や今後の対応方針を従業員へ適切にフィードバックすることで、「回答しても何も変わらない」という諦めを防ぎ、「会社は職場改善に取り組んでいる」という信頼の醸成にもつなげることができます。
ハラスメントを見て見ぬふりしない職場を実現するためには、相談制度を整備するだけでは十分ではありません。
経営層や管理職が率先して適切な姿勢を示し、従業員一人ひとりが安心して意見を伝えられる環境を継続的に整備することが重要です。心理的安全性は短期間で高まるものではないため、人事は制度・教育・対話を組み合わせながら組織文化を育てていく必要があります。
組織風土は、経営層や管理職が日頃どのような言動を取り、問題にどう対応するかによって大きく左右されます。
ハラスメントを許容しないという方針を、就業規則や行動指針に明記するだけでは十分ではありません。社内メッセージや会議、研修などを通じて継続的に発信し、具体的にどのような言動を問題と捉えるのか、目撃した場合にどのような行動が期待されるのかまで伝えることが大切です。
また、問題が発生した際には、役職や業績にかかわらず適切に調査と対応を行う姿勢も欠かせません。会社が実際の行動で方針を示すことで、従業員は「声を上げれば、会社は真剣に取り組んでいる」と認識しやすくなります。
相談窓口は、設置するだけでは十分に機能しません。従業員が安心して利用できる運用体制を整える必要があります。
このような仕組みを整備することで、相談への心理的なハードルを下げることが期待できます。また、社内の相談窓口だけでは利用しにくいケースもあるため、複数の相談経路を用意することも有効です。必要に応じて、外部相談窓口の利用も検討するとよいでしょう。
ハラスメント防止は、一度の研修だけで定着するものではありません。
管理職研修では、ハラスメントに該当する言動を学ぶだけでなく、適切な指導方法、部下から相談を受けた際の対応、職場で起きている変化の捉え方など、日常のマネジメントに結び付く内容を学べるようにするとよいでしょう。
定期的な1on1や職場での対話も、従業員が抱える違和感を早い段階で把握する機会になるため、日常的にコミュニケーションを改善していくことが大切です。
人事は、研修実施の有無や1on1の実施回数だけを評価するのではなく、管理職の行動や職場の認識、相談制度への信頼がどのように変化したかまで確認しながら、施策を見直していくことが求められます。
ハラスメント対策は、問題が発生した後の対応だけでは十分ではありません。日頃から組織の状態を把握し、改善を繰り返すことで、従業員が安心して働ける環境づくりにつながります。人事には、実態を可視化し、その結果を具体的な施策へ結び付ける役割が求められます。
ハラスメントは被害者だけではなく、問題を目撃した周囲の従業員も沈黙することで深刻化する傾向があります。 そのため、人事は相談件数だけではなく、無記名アンケートや職場ヒアリングなどを通じて、現場の実態を幅広く把握することが重要です。
アスマークが提供する「CHeck」は、ハラスメントやコンプライアンスに関する組織の実態を調査し、組織に潜むハラスメント被害やリスクを把握することが可能です。自身のハラスメント傾向を把握するアセスメント研修等、ハラスメントの自分事化・予防につなげる研修サービスも提供しています。
社内だけで調査を行う場合、従業員が「回答者を特定されるのではないか」「率直に答えると不利益があるのではないか」と不安を感じることがあります。第三者機関を利用することで、匿名性が担保され、調査の客観性や運用への信頼を高めやすくなります。
無記名のハラスメント実態調査を実施すれば、相談件数だけでは見えない被害や目撃経験、組織風土の歪みを把握できます。部署や階層ごとの傾向を分析することで、優先的に改善すべき領域も検討しやすくなるでしょう。 また、アセスメント研修では、受講者自身がハラスメントリスクを振り返り、当事者意識を持って学ぶきっかけになります。
実態把握と研修を組み合わせることで、組織の課題に即した対策を進め、誰も被害者や加害者にしない組織風土の形成につなげられます。
ハラスメントが見て見ぬふりされる背景には、傍観者効果や同調圧力、報復への不安といった心理的要因だけではなく、相談しにくい組織風土や管理職の姿勢、制度への不信感など、組織全体に関わる課題があります。
人事には、相談窓口に寄せられた声だけで判断せず、従業員の認識や職場の状態を幅広く捉える視点が求められます。実態把握の結果を制度や研修、管理職のマネジメント改善に反映させることが、見て見ぬふりを生まない職場づくりにつながります。
従業員が安心して働き続けられる職場を実現するためにも、自社のハラスメント対策や組織風土を定期的に見直し、継続的な改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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大学等の教育機関へ1万人規模の実証データを提供し、PBL(課題解決型学習)教育の支援も行っています。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000018991.html
監修:竹中 重雄(Shigeo Takenaka)
株式会社アスマーク マーケティング管轄 マネージャー
リサーチ業界およびマーケティング領域で10年以上のキャリアを持つスペシャリスト。従業員満足度調査「ASQ」のサービス立ち上げに参画し、業界比較分析も起案。人材コンサル会社と協力し「やりっぱなしで終わらせず、改善できるES調査」の開発を主導。
本記事の監修にあたって: 自身の豊富な実務経験に基づき、公開情報の正確性と、読者の皆様のビジネスに即した実用性を厳格に審査しています。